30話、聖女視点2
ノーマルスライム七十匹を受け取った。
これで、レッサースライムが二百十匹、ノーマルスライムが百十匹。戦闘力はほとんど無いが、情報収集の幅はとても広がった。
それに……
「やっぱり。新しい七十匹のほうが、今までのより頭がいい」
全てのスライムに個別に指示を出すのだが、今日受け取った七十匹は今までのスライムに比べて受け答えがしっかりしている。
レッサースライムとノーマルスライムには知能の差は無かったが…… なにか、特別なスライムなのだろうか。しかし七十匹もいるのだから、特別ではないか。
「そういえば……」
昨日はドラゴンの影響で雨が降り、そのせいでスライムが現れなかったと言っていた。
強い魔力を含んだ水をスライムが吸収し、その影響で知能が増大した、と考えるか。大量のスライムが全て同じように変化しているのだから、間違ってはいないだろう。
それなら。この七十匹は、まとめ役として配置しよう。
この七十匹のうち、六十匹を班長に。それぞれの下に、数匹のスライムを配置。今のところ、班長一匹につき班員四匹くらいか。
私への報告は、この七十匹の中から厳選した十匹に、班長からの報告のまとめ役、隊長を務めさせ、それに任せる。
これで、日々の諜報が楽になるだろう。
今のところ、王城だけではなく、大貴族の邸、教会、各ギルドにもスライムを放っている。
隠密優先で行動させているので、今のところは欠員がない。ありがたい限りだ。
私が王城と貴族邸で集めているのは、各貴族の派閥、影響力、そして弱みなど。
各ギルドで集めているのは、市場の情報、世界の動向、それと、魔物の動きなど。
貴族をコントロールするには、やはり情報が必要だし、私の、というより女神様の目的のためには、大きな魔物の動きには注意しておかなければならない。
「当分は猶予があるのだろうけど。ほんと、アマツカさんが居なきゃ絶対に無理じゃない」
籠の中の鳥である聖女には、碌な情報が得られない。自由に使える諜報員なんていない。
本当に、テイマーを手元に置いておけてよかった。それも、情報収集に便利で、増員も容易なスライムのテイマー。
「感謝しないとね。……敵にならないように、守れるようにしてあげないと」
彼女のギフトを思い、気持ちを新たにする。
絶対に、止めないといけない。世界のためにも、彼女のためにも。
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