第24話 超級特異能力vs超級特異能力

 超級特異能力(エキスパートスキル)、黒い会社Rulerof支配者blackを使用した、ライト・エル・ブリアントが黒い光の中から姿を現す。


「ああ、これだよこれ。この全能感、たまんないなぁ」


 転生する前の世界のブラック企業の幹部の人間全ての、闇の部分が集約された様なオーラを放つライト。

 着用している鎧も勇者が着用するとは思えない、攻撃的で暴力的な鎧へと変化していた。


「なによアレは……」

「まるで世界から闇を集めた様なオーラですね……」

「さすがにこれは、人間ではとても太刀打ちできない……」


 後方で動向を見ているエポナ達でさえ、ライトが放つ黒いオーラに恐怖している。


「せっかく悦に浸っているのにさぁ。俺の許可なしで喋るな、虫けら」


 ライトがエポナ達を睨むとエポナ達の呼吸が止まる。

 急に酸素がこの世から無くなったかの様に三人は苦しみ始めた。


「なにを! 2S! 安全Safeエリアarea


 絶対防御シールドを展開するも、シールド内で三人は悶えながら苦しんでいる。


「既に何かの特異能力スキルが? なら、特異能力スキル! 原点復帰!」


 一度シールドを解除した原点復帰によって、三人は呼吸を取り戻すが帝国魔装騎士団長は、なにが起こったのか分からず呆然としている。


「お前たちそいつを連れて下がれ! すぐに片づける」

「分かったわ!」

「ジン様……ご武運を!」


 まだ余裕のあるエポナが帝国魔装騎士団長を抱きかかえ、三人は決戦が始まるであろう場所から遠く離れた。


「今の俺は間違いなく、この世界で最強さ。降伏するのなら聖帝七騎士に加えてあげるよ。降伏しろ、化け物」


 ライトから手を差しのべられると、無意識の内に差しのべられた手を取りそうになるが、状態異常を打ち消すパッシブスキルの品質管理が発動して、伸ばそうとしていた手を止める。


「そのパッシブスキル、言霊のたぐいか。例え一瞬でも俺を状態異常にさせるとはな」

「へぇー、俺のパッシブスキル、抗えないパワー指令ハラスメントも効かないのかぁ。さすが化け物、手を伸ばした瞬間に斬ろうと思ったのに残念だよ」


 ライトは黒色の鞘に変化している聖剣を抜く。


「この剣はさぁ、もちろん聖剣の時の特殊能力もあるけど、もう一つとびっきりの特殊能力が追加されてるんだよねぇ」

「また剣頼みで俺を倒そうって言うのか?」

「この剣を持つ者には、特異能力スキル上級特異能力ハイスキルは効かない」


 はっきりとライトの言葉は聞こえたが、俺はもう一度聞きなおした。


特異能力スキルが効かない……?」


 俺の言葉にライトの狂気が帰ってくる。


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! 化け物は耳も悪いんだね! 特異能力は効かないって言ってんじゃん! アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 狂った様に笑い転げるライト。


「魔法も使えない、剣の才もない、優れた武器もない。どうやって僕に勝つのかなぁ? ん? 悔しいの? ねぇねぇ、化け物のくせに悔しいの? アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 なにもない空間に5Sと指でなぞる。


「5S! 社畜Spiritslave!」


  上級特異能力ハイスキルの一つ、強制的に自分の為に働く社畜化にさせる特異能力を発動した。


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! だから無駄だって、化け物はここで死んで、俺は神になるんだ! アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 5Sが効かない以上、分解点検修理など他の特異能力もライトには通用しない。

 そう考えた俺は、久しぶりに声をかけてみる事にした。


「作業基準書、もしかして上級特異能力ハイスキル以上の特異能力スキルも、俺は使えたりするのか? さっきライトが使ってたと思うんだが」


 脳内に、鈴を転がした様な女性の声が聞こえる。


「担当者様、お久しぶりです。ご質問の内容ですが、上級特異能力ハイスキルの上の特異能力スキル超級特異能力エキスパートスキルが使用可能となっております。超級特異能力エキスパートスキルの確認を行いますか?」

「頼む」


 作業基準書から超級特異能力エキスパートスキルの説明を受ける。

 現在のレベルで使用可能な超級特異能力は《エキスパートスキル》たった一つだった。


 業者ゴッド対応メンテナンス能力値ステータスを自分が望む数値へ変更させる事ができる、これぞチート! な特異能力スキルだった。


「業者対応か、社長や総務部は金がかかるからって、全然業者を呼んでくれなかったな。業者と電話で会話しながらトラブル対応なんて日常茶飯事だったしな」


 業者を呼べばすぐに解決する内容も、金がかかるという理由で呼ばない上司たちのせいで、きっと今も装置が潰れているのを知りながらも、黙って裏班に引継ぎしたりしている工場もあるんだろうなと考える。


「補正値をいじる様なものだな、試してみるか! 超級特異能力エキスパートスキル業者ゴッド対応メンテナンス!」


 業者ゴッド対応メンテナンスを受けたライトの、能力値ステータスは全て1となる。


「この世界では超級特異能力エキスパートスキルを使えるのは俺だけのはず……」


 手に持っている魔剣を地面へ落とすライト。

 魔剣を持つレベルに達していないから、魔剣を持つ事ができないのだ。


「その剣を持たないお前など話にもならん」


 能力値ステータスが全て1となったライトの顔は、今までよりも酷く狂気に歪む。


「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! さっすが化け物!」


 まだ何かを隠している様なライトの笑い声には、余裕が感じられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る