短文「駅」
エィケイ
駅・夢・岐路
「い....起きてください」
男性の声で私は目覚めた
「ん...」
目を開けると、そこは電車の中だった。電車に乗ってて眠ってしまったのだろうか....
「いびきをかいて眠ってましたよ」
そう私にはなしかけるのは顔がない...まるで透明人間のような人だった。
「えっと...」
「大丈夫ですよ、起きてくださったので...」
そういうと彼は優しくいった、心なしかどこか安心したような声が聞こえた。
「あなたは」
「透屋と申します」
「あの...」
「ここはどこか、なぜここにいるのかは降りてからにしましょう。」
「は、はい...」
透屋と名乗る彼のいわれるまま、私は次の駅に着くのを待つことにした。
少し暇だったので、辺りを見回すと、着飾った人に普通の人、家族連れ、寝ているサラリーマンなど色々な人がいた。どうやら普通の電車と変わらない。
でもなんだか違和感があった、みんなどこか怖がっているような...辛いような...諦めたような?
そんな風に周りを気にしてたら...
『次は「起手(おきて)」です』
とアナウンスが聞こえた
「ほら、着きますよ」
「は、はい」
透屋さんに促されるまま、私は駅を降りた...。
私が普段使う駅と似た感じだったが、それにしては人がまったくいない。
降りたのは私と透屋さんだけだったらしい。
「あのまずは駅を出ましょう」
「は、はい」
確かにその通りだと思い、私と透屋さんは階段を登り外にでた。
....気のせいだろうか後ろから機械で何かが削られる音や刻まれ音。
....人の悲鳴や断末魔が聞こえたような気がしたが怖かったので幻聴と思うことにした。
ーーーーーーーーーーーーーー
(暗転)
ーーーーーーーーーーーーーー
「はっ!?」
目が覚めると私は、ベンチに座っていた。
どうやら酔い潰れて眠ってしまってたらしい。
「夢...?」
だとしたら、無人の駅もあの透明な人がいたのも納得いくかもしれない。
そう思っていたら...
「夢じゃないですよ」
「うわっ!?」
...透屋さんが私の前に現れた、その姿は電車であった時と変わらない
「さっきのは...」
「あなたは偶然ここで眠ってしまい、あちらに迷い込んだみたいですね、たまたま私が気づいて運がよく戻ってこれました」
「もしかして死後の世界??」
「死後の世界であり、魂の削り場ための工場でもあります」
「削り....?」
「生まれ変わるためには肉体・記憶・経歴など色々削るんです、新しい旅たちのための魂になるために」
「じゃあ、あのままのってたら...」
「はい、他の死者と同じく魂も肉体も削れて真っ白になりましたね」
「?!」
透屋さんの話を聞いて、私は(ゾッ...)としてしまった...
あの機械音が本当ならもしそのまま眠ったままなら電車ごと...
「大丈夫ですよ。あなたはこうして戻ってこれましたから」
「あの...、透屋さんはどうして...」
「私はこれが仕事なので...」
「仕事...」
どういうことかと聞こうとしたら、それを遮るように透屋さんが時計を見ていった
「あと15分で12時になりますが、お時間は大丈夫でしょうか」
「え...あ!?終電が...」
最寄りの駅からしてもギリギリかもしれない...、私は話を切り上げて駅に行くことにした。
「すいません、私はもういきますので...その...
「お礼はけっこうです、どうぞお気をつけてくださいお帰りください」
「は、はい」
透屋さんに別れを告げると、私は急いで駅に向かうことにした。
今回のようなことにならないように、はしご酒はやめることにしよう、と私は思った。
ーーーーーーーーーーーーーー
「さてと...」
(プルプルプルプル)
「おや、また別の方が迷い込むとは」
「さて、急いで戻らないと....」
ーーーーーーーーーーーーーー
(終)
短文「駅」 エィケイ @akei-ak
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