第65話 覚醒者

俺は暫くぶりに自衛隊の避難所の一つに来ている。


以前見た時は、一部の男性が限界に近付いていたが、どうなっているだろうか?


観察してみても大した変化はないかな。

少し人数が減っているか?


正確に数えた訳ではないから、確かではないが男性部屋はもっと人数が多かったような?


離脱者でも出たのか?他の避難所に移動した?危険を侵してまで移動は無いよな。


隠れて盗み聞きするしかないかな。

ふむふむ、なるほど、そうなったか。


あちこちで聞き耳をたて、盗み聞きで得た情報だが、一部の男達が暴動を起こしたらしい。


集団で女性を襲おうとしたので、隊員によって射殺、もしくは捕らえられた後に処刑されたそうだ。


元の日本では考えられない事だが、働かず次もいつ暴動を起こすか分からない人間を、保護しきれないと判断されたそうだ。


今の現状を考えれば、正しい判断な気がするな。

物資に限りがあるなか、不穏分子に貴重な食料を分け与える必要は無いよな。


基地内で作物を育てているようだが、今後はどうしていく予定なのかな?


自衛隊は誰かの指示で動いているのか、それとも基地毎のトップが判断して行動しているのか、どっちだろう?政府は何処かで機能を回復させられているのだろうか?


お偉いさんの部屋で盗み聞きしてみよう。

通信室とかあったら、何処かと連絡していたりするのかな?


先ずは建物内を探索して、何処に何があるのかを把握してみよう。


探索していると会議室を発見!

都合の良いことにちょうど何かを話し合っているようだ。


「物資の在庫が減ってきています。

近い内に大規模な回収作戦を行わないといけないと思います」


「もうそんな状況か。

次は少し離れた場所まで行かないと回収出来ないのだよな?」


「はい、この近辺は回収しつくしてますので北に向かうしか無いかと」


「北か、雪で支援が出来なくなるからと早々に住民を避難させたからな。

残っている物資もあるだろうな。

ただ、あちらの原発の稼働は停止させたとはいえ、放射能が完全に無くなる訳ではないからな。

そこまで近付かないにしろ、測定は怠るなよ?」


「はい、設備が大きく破壊されない限りは大丈夫との事でしたが、警戒はしておきます。

今回はメインの部隊を大勢出しますので、彼らを失う訳にはいきませんからね」


「そうか、だが大規模作戦の前に不穏分子を排除出来たのは、せめてもの救いだな。」


「はい、彼らを残したまま隊員が大勢離れていたら、内部が崩壊していたかもしれません。

それを考えると、避難民の中で反抗的な男性覚醒者を減らせたのは、良かったと言えます」


「こんな状況で自分の欲望ばかりを優先されては、纏まるものも纏まらなくなってしまうから仕方ないな」


「一部、今回の対応を非難している者もいますが、殆どの者は納得しているようです」


「わかった、非難している者で、度が過ぎる者は牢に入れておけ。

それで作戦の方は進めて問題ないだろう」


「承知致しました。

作戦を進めさせて頂きます」


知りたい事がかなり知れたな。

俺はついてるな。

放射能は魔力さんが何とかしてくれてましたよ。


それにしても覚醒者か。

カッコ良くない?俺もこれから、そう呼ぶ事にしよう。


会議も終わってしまったので、他の基地にも行ってみよう。


次の基地でもちょうど会議中の様だ。

俺ってついてるね。


「向こうの駐屯地からの連絡で、近い内に北部への物資回収作戦を行うそうです」


「そうか、うちはまだ余裕があるんだよな?」


「はい、初期に多くの物資を回収しておりますし、作物も順調に育っていますので、数年は困らないと思います」


「わかった。

政府は何か言ってきてるか?」


「彼らは海上の護衛艦に籠ったまま、何も言ってきてません」


「当初の早く安全を確保しろ!だけですね」


「自分達だけ安全な場所に逃げておいて、よく言えるな」


「確かに沖合いに行かなければ、今のところ一番安全な場所ですね」


ほうほう、またしても知りたい情報が聞けてしまった。

政府のお偉いさんは生きてはいるそうだ。

何もしないで安全な場所に逃げたそうだが。


「あとは、隊員の覚醒者を増やすのは進みそうか?」


「それなのですが、殆ど増えていないのが現状です。

モンスターが強くなっていて未覚醒者が銃器を使用しても、今ではダメージを与えるのすら困難な状況です」


「そうか、現在うちだけで100名いないくらいだったよな?

レベル上げは進んでいるのか?」


「現在96名の隊員が覚醒してます。

レベル上げは20後半が1名、前半が3名、10後半が12名、前半が8名で残りは一桁となっております」


「かなり上がっているな。

この調子で続けてくれ」


「承知致しました」


結構強いな。

うちの女性陣より高いのが多くいる。

敵対する事はないと思うが、女性陣のレベル上げ手伝った方が良いのかな?

もう少し様子を見て考えようかな。


今日は知りたい情報が、何故か簡単に集まってしまったので、家に帰るとしよう。


次は少し接触してみるのも有りかもな。

そう考えながら家に転移で戻ってきた。

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