第19話 老人ホーム

愛しのホームセンターを出発してから30分、今は気になっていた老人ホームに、スキル飛行を使って向かっている。

スキルの浮遊と飛行の違いは、その場で浮かんでいられるのが浮遊、飛んで移動するのが飛行だ。

空を飛んでいると、鳥型のモンスターが襲ってくる。

カラスや雀のモンスターだ。

時間が勿体ないので、全部魔法で対応する。

倒したモンスターはアイテムボックスに収納し、アイテムボックスの機能である、解体を使って魔石を回収する。

今まで存在を忘れていた。

落ちていく死体から、魔石を回収するのが面倒だな、と思った時に思い出した。

それからはシューティングゲームみたいで楽しい。

遊びながら進んでいると、老人ホームが見えてきた。

ん?老人ホームの中にモンスターの反応がある。

少し急いで向かうと、老人ホーム内に人の反応は一つもない。

入口のバリケードを破られ、侵入されたようだ。

大型のモンスターに襲撃されてしまったのか?

リーダーの女性のステータスは、そこそこ強かった筈だ。

モンスターに簡単には負けないと思うが。

拠点を移動したのだろうか?

でも動けない老人もいたのだ、簡単には移動できないと思う。

失敗した、こんな事ならあの時に、お近づきになっておけば良かった。

無いとは思うが、ラブホグループに連れ去られていないか見に行こう。

ラブホテルに到着して中に忍び込む。

全フロアー見て廻ったが、老人ホームにいた人間は見つからなかった。

少なくとも、ゲス共の毒牙にかかった訳ではないようで安心した。

もう、ここに用は無いので出よう。

出口に向かおうとした時に、ゲス共から聞き捨てならない言葉が聞こえてきた。

「でもよぅ、若い女を回収出来なかったのは失敗だったな」

「若いの全員で物資調達に出ちゃったからな」

「ガキとオバハンとジジババはいらんな」

「でも拠点が無くなったから、こっちの誘いに乗ってくるんじゃないか?」

「どうだろな、物資調達出来ないように色々と邪魔したからな」

「近場の店舗は、前もって全部回収したしな」

「確かに、嫌われてるから合流はしないか」

「女だけの4、5人のグループじゃ、不安でのってくるんじゃね?」

「俺らが何かしたって疑ってくるかもな」

「悪気はなかったんだよ?ちょっと事故っただけで」

「ギャハハ!ちょっと事故って、重機でバリケード破壊したってか?」

「事故って焦ったんだよ、操作を間違えただけだ」

「藤森って女はバケモンだから、何とか他のやつと離せればな」

「あれが一番の上玉だけど、他のだけでも欲しいな」

「結構遠くまで出てる筈だから、2、3日は戻って来ないだろ?戻って来てから一度は勧誘だな」

なんだ?老人ホームで何があったのか知ってるのか?

聞いてる感じ、こいつらが物資回収の邪魔をした。

仕方なく若手メンバーで、遠くの物資を探しに出た。

戦えるメンバーのいない内に、バリケードを破壊して、モンスターを侵入させた。

若い女が残っていれば、連れ去るつもりだった。

拠点を失って困っているところを勧誘する。

今は、こんなところか?

どうするかな、潰すか?

こいつらは老人ホームにいた人達を、モンスターにわざと殺させた。

かなりの恐怖を味わった事だろう。

俺は正義を語れる様な人間ではないが、個人的な感情としてムカつく。

人の死がありふれてる世界になったが、自分の欲望の為に簡単に他人を犠牲にする。

こいつらはそれを楽しんでやっている。

逆の立場を体験させてやろうか?

駄目だな。

コイツらの処分は、彼女達が決めるべきだな。

ないとは思うが合流を希望するかもしれない。

まずは彼女達を見つけよう。


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