異世界小説家
えー、毎度ばかばかしい創作を一つ。
物語の世界では異世界ブームと言いますかね、いろんなところに転生する話が多いですね。一口に転生と言ってもそのままの姿で異世界に行って活躍したり、全く違う世界に生まれ変わったり。現実世界に転生してきた、なんて話もありますね。生まれ変わるのもスライムだったらもう普通といった具合で、自動販売機になったりしてます。
かくいう私はこのまんまの姿で異世界に行きたいですかね。で、こっちの話をファンタジーとして小説にする。異世界にとっちゃこちらの方が異世界ですから、受けると思うんです。ただ一つ残念なことがあって、私普段からファンタジー書いてるんですね。こっちの世界のこと書くのが苦手という……
「うるせえなあ。まったく、この世界にはチャイムとかないもんだから、来た奴みんな鬼の首とったみたいにドア叩きやがる。いや、本当にとってる奴いるかもしんねえな。この叩き方はオークの編集長だな。まだ原稿できてねえんだよなあ」
「ちょっと、いい加減開けろ! もう締め切り三日も過ぎてるんですよ! もうすぐ草断食期に入っちまう!」
「なんだい草断食期って。まだこっちの宗教のことはよくわかんねえなあ。へえへえ、ドア壊されちゃたまんねえ、とにかく入ってくだせえ」
「まったく、いつまで先延ばしにするつもりなんだい、あんたは」
「そう言いますがね、いったん出したじゃねえですか。いろいろ『青字』入れてきて。こっちゃ手書きで苦労したんだからがっかりきちまった。急がせたきゃ早くパソコンでも発明してくだせえ」
「またわけのわからないことを。だいたいあれはあんたがめちゃくちゃなことを書くからだ。鉄が空を飛ぶなんて」
「私の世界ではそうだったんですがねえ」
「いやいや、こっちの世界では千年前に禁止されてんだよ。ペガサス車交通がとんでもねぇ事故を続けやがってね。飛んでるのにね、ガハハ」
「どこの世界でもオヤジはギャグが好きだねえ。こっちのタブーなんて気にしてたらファンタジーは書けませんぜ」
「そうは言っても最近は色々厳しくてね。『子どもが真似したらどうするんだ』『魔族に悪用されるぞ』『猫耳が王道だ、狐耳は追放されたはずだ』ってね」
「差別はいけないと思います。いやあ、めんどくせえ。創作は自由にやらせてくれませんかねえ。はあ、ケンタウロスにでも衝突したくなってきた」
「突然どうした」
「もうね、現実に転生したくなっちまった」
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