厄介なこと
都内の今日の天気は快晴、先日から続いた雨がまるで嘘のように街を照らす、その眩しい街の中、日比谷1人だけ暗い気持ちでいた。
日比谷は刑事であり、殺人などの凶悪犯罪を主に捜査しており、今日も事件の知らせを受けて現場に向かっていた。
「死亡したのは20代男性と30代男性の2人で、事件現場には拳銃を握っている遺体と倒れたそばに拳銃が落ちてある遺体がある」
パトカーの中で同僚の刑事である谷津が言った。
「拳銃が落ちているか、状況から見て撃ち合いが起きたと考えて良さそうだな」
「おそらくそうなんだが、少し厄介なことが分かった、現場についたら説明する」
「厄介なことねぇ、拳銃を使ってる時点でカタギじゃなさそうだけど」
そんな会話していると現場に到着した。
パトカーは住宅街から少し外れた所に停められ、日比谷はパトカーを降りて事件現場である雑木林に向かった。
住宅街の外れにある雑木林の中、本来あるはずのないイエローテーブがやけに目立っていて、その中に2人の遺体はあった。
「なるほど、この人目につかない所なら目撃者はいないだろうな、確かに厄介だ」
調べによると拳銃を握っている被害者の名前は山崎といい、年齢は25歳で職業は土木系の会社に勤めている、しかし実際のところその会社は暴力団と関わりのあるとされている会社で、拳銃を持っていたことを考えるとヤクザであることは明白だった。
もう1人の男の名前は杉山といい、経歴から考えて山崎と同じヤクザだろう、と日比谷は思った。
「こんな人目のつかない場所に居たのにどうして発見されたんだ?」
日比谷は現場にいた警察官に聞いた。
「はっ、この近所に住む老夫婦は毎朝この雑木林で散歩をするのが習慣で、その日も雑木林に訪れたところ、遺体を発見したらしいです」
「毎朝の散歩で発見か、死体を発見しちまうなんて嫌なモーニングルーティンだな」
日比谷は冗談のように呟いた。
通報をした老夫婦は朝6時ごろにこの場所を訪れ、そこで現場を目撃して通報したようで、近隣住民からの聞き込みをしたところ、老夫婦は毎朝散歩しているのは本当のようだった。
「それで、厄介って言うのはどう言うことだ、まさか目撃者が1人もいないってことか?」
日比谷は谷津に尋ねた。
「そんなことならまだマシさ、この2人がなぜ銃で撃ち合ったかを聞きたくても死亡しているから聞けるわけがない、となると2人の知人などから情報を得るしかない」
「まさか」
日比谷は谷津の言うことを聞いて、自分たちが次にすることを察した。
「そう、この2人の所属していた暴力団に聞くしかない」
「面倒だな」
「ああ、これだけでも面倒だ」
谷津はため息をついて続きを話した。
「この2人のうち、山崎氏の遺体から大麻が発見された、100グラムの袋が3個で300グラムだ」
「大麻だと、しかもそんな量が、1グラムで6000円とすると180万円もの大金になるぞ」
日比谷は驚きながらそう言った。
「状況をまとめると」
刑事は続けた。
「我々が調べるべき事柄は2つある、1つはなぜ2人で銃撃戦を繰り広げたのか、もう1つはこの麻薬、一体どのようなものなのか……」
「ヤクザへの聞き込みか、面倒なことにならなければいいが」
日比谷は髪をいじりながら答えた。
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