第39話 ネメシス王国? メーヴィス王国? さあどっち。

 そんなオネスティから、ウェズリーに対して宿題が出されていた。

『もう帝国は無くなった。ネメシス王国からメーヴィス王国に名を戻しても良いぞ。王であるお前の判断でな』

 そんな文書がやって来た。


 とりあえず、ウェズリーは悩んだ末。帝国が併合されて、牢から出てきていた先王コンラーディン=メーヴィス十三世と会談を行う。


「オネスティからそのような話しが、親書として届いております」

 ウェズリーが父である、元王へ伝える。

 そこに、口を挟む馬鹿が一人。


「歴史ある、メーヴィス王国へと戻すべきです。父上」

 調子に乗っているのは、何の役にもたたなかった、第一王子であるロイド。

 そこに、便乗をするのは、第一王女クリスティーネ。


「そうですわ。どさくさに紛れ、王と名乗っているウェズリー共々元に戻せばよいではありませんか」

 第一王子と第一王女は、妃であるマルレーヌの子供達。

 気が付けば、皆、牢で暮らしていた。

 王には一応概略を伝えていたが、その他の者には、計画の漏洩があると危険なために一切伝えていなかった。

 

「クリスティーネ様。ウェズリーと呼び捨てとは失礼な。現在はネメシス王国。その王に向かって何という言葉遣い」

 そう言い放つのは、驚くことに宰相クリストハルト=ヴィーガント。

 何も知らない、クリスティーネ達とは違い、多少事情を知っている。


 そう。だが彼の心の中では、ウェズリーはどうでも良い。

 問題は、弟である第三王子オネスティと、愉快な仲間達が持つ得体の知れない武力。

 そして、民からの支持。


 さらに、オネスティから謎の武器を供与され、完全に復活をした母親、側室であるマリアーヌ=カーティスの実家。元来武の名門であったが、帝国の戦争が長引く中で先頭で戦い、疲弊していた。


 とうぜん、帝国も実効支配時。彼らを警戒して、その力を取り戻さぬように、解体をされていた。

 そう主要人物は、国中に分散され幽閉をされていた。


 それが今では集まり、なおかつ新型の武器を装備して、その効率的な運用方法を模索。

 凶悪な集団となっている。


 そう。現在この国において、最も凶悪なのはオネスティ。

 流石の、宰相でも理解している話。


 元王と王妃。そして子供達は牢で暮らしていたために知らない。

 真面目さと、人の良さだけが取り柄なウェズリー。

 不良王族のオネスティで情報が止まっている。

 無論、オネスティが王国のふがいなさに反発して、走り回っていたことなどは知らない。


 そう、帝国に支配され、国全体が疲弊していたことすら、このぼんくら達は理解をしていなかったのだろう。


「何ですって? わたくしに向かって何という口の利き方。わたくしを誰だと思っているの?」

「先王…… 国を潰してしまったコンラーディン様の娘。現在は、情けにより生かされておる存在でございます。そちらこそ、自身のお立場について、ご理解をされておりますでしょうか?」

「父上。こやつが不遜な口を」

 父親に向かって言い上げるクリスティーネ。


 だが、父親であるコンラーディンは、宰相の言い分を理解をしているし、反論も出来ない。本当なら、メーヴィス王国が滅亡したときに、縛り首で吊るされるのがこの世界では一般的。


「不遜な口はお前の方だ。我々は、この国ネメシス王国に情けで生かされておる存在じゃ。ウェズリー王。このような無理解な火種も起こる。滅んだ国名を復活をさせんでもよい」

「父上」

「御父様」

 反発の意を示す、子供達。

 その横で王妃は、何の話という感じで、理解をしていない様子をみせる。

 だが……


 王妃は公爵家の娘で、一通りダンスや礼儀作法を習った後は、教育らしい教育を受けていなかった。

 そう目的は、公爵家が国政に口を出すために作られた人間。

 それには、賢い娘は必要ないと言うことで、見目の良さがあったために、彼女はそう育てられた。

 普通なら、自分で考えて色々しそうだが、そんな事をあなたは考えなくて良いの。子供の頃から、繰り返しそんな事を言われ続けて、本人も楽なために受け入れた。

 ただ、場に座りニコニコと微笑むばかり。


 当然人間だから、腹の中で思うことはある。

 だが周りは許してくれず、彼女は、自身の心。そして、耳と目を閉じ考えることを放棄した人間だった。


 それが変わったのは、側室であるマリアーヌ=カーティスが、嫁いできてから。

 彼女は、自身を人間扱いをしてくれた人。


 そして接する時間も、実の子供達より、ウェズリー達と過ごした時間が長い。

 自分たちの子どもは、産むだけ産むと乳母や教育係が付き、取り上げられてしまった。

 だが、マリアーヌが、そんなことを許すわけがない。

 第二王子と第三王子だし、良いかと王達も許した。


 そう。ウェズリーやオネスティの活躍が嬉しい。

 目の前で、王達があたふたしているが、あまり気にしていなかった。



「そうか。ネメシス復讐者で行くんだな」

 オネスティは手紙を見ながら、そうつぶやく。


 そしてその視線の先には、もう一つのメーヴィス王国とも、もう一つの帝国とも言える、エヴァンジェリ王国軍が並んでいる。


 彼の国は、文書による縛りではなく、帝国の皇帝だったカリスト=ウルバーノの弟。アルトゥル=ウルバーノが王位を簒奪して好き勝手していた。


 王女の元へ、婚姻と共に養子に入った後。本来王位を継ぐはずだった王子達を次々と謀殺をして王位に立った。

 そう。和平のために行われた婚姻。それが、毒だった。


 その後、帝国の傀儡として、国が存在をしていた。

 彼の国については、オネスティも敵だと認定をして、情報が渡らないように気を付けていた。

 

 だが、流石に、帝国の現状を知ったらしい。

「ふざけんなよ。ネメシス王国だ? つぶせ」

 そんな命令が、下った。

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