第2話 千年前の秋雨

 

「世界よっ、何故だっッ。……何故」


 雨が降る、

 雨が降っている。

 夜半を過ぎ、星一つなく。冷たく冷たき雨が降る。

 この体躯を痛めつける。

 血が冷える。


 この世界の痛みを知っていた、それでも傷む、痛む。

 崩れ落ちた柱。

 削れた山肌。

 血を吸った地面、泥濘んだ地面。


 腕の中に一人の女。

 くすんだ亜麻色の髪、長い睫毛、白い肌。


 その翠玉の瞳はもう、開かない。

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