第5話 画面に表示された制服姿の女性
今勤めている保険調剤薬局は常勤の薬剤師が二名、先輩と僕、非常勤の女性薬剤師が二名、常勤の医療事務員が一名勤務している。
基本は先輩と僕、非常勤の方のどちらか一人が出勤する形で、常時薬剤師が三人出勤している形となっている。
常勤といっても完全週休2日制なので日曜以外のもう1日と労働基準法の関係上、僕も先輩も有給などの休みを取らなくてはいけない日もあるので、そういう日は非常勤の方が二人とも出勤になるような日もある。
医療事務員の方が休まなくてはいけない日は、他の店舗から応援に来るか、派遣社員の方が応援に来るなどして補っている状態である。
この話は先輩が休みの日で、非常勤の女性薬剤師が二人とも出勤している日に起こった出来事です。
当薬局はお昼休み時間が設けられていて、お昼時間になると一旦閉局し午後から開局するタイプの店舗である。なぜこうなっているかというと、これも労働基準法の関係からである。
労働時間が1日8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなくてはならないと定められているからだ。
交互に休憩をとるようにして閉局時間を作らないようにしている店舗もあるが、うちの薬局は薬剤師は三人いるが医療事務員は一人なので一旦閉めざるを得ないのだ。
若い頃、休日返上でがむしゃらに働いていたような方からすると、お昼休みなんか取らないで働け。と、よくご指摘を受けるが、労働者に休憩も取らせないで働かせていることがバレてしまったら、会社が厳重注意を受けてしまうようなことなのでご理解していただきたいところである。
ということでうちの薬局にはお昼休憩時間が設けてある。お昼休憩時間は本当に自由時間で外に昼食を食べに行ってもいいし、コンビニで弁当を買ってきて休憩室で食事をする形でも大丈夫である。
特に何か決められているわけでもない、完全に自由にしていい時間である。
先輩はお昼は軽食で済ませ、残りの時間は自分のデスクで寝てしまっている。僕は枕が変わると寝れなくなってしまうタイプなので、食後は大体動画を見て過ごしたりしていた。
その日は特に見たい動画が無かったので、当ても無くブラウジングして過ごしていたら、薬局の電話が鳴った。出るとお薬の相談のようだった。
内容はそれ程手間がかかるようなものではなく、食直前服用となっている糖尿病のお薬を飲み忘れてしまったのでどうしたら良いかというものだった。
そのお薬は食直前に服用しないと意味をなさないものなので、今回はお休みして次回から忘れないよう注意して下さいねとお伝えする。
大丈夫なのかと不安がっていたようなので、人の体はある程度許容できるように作られているので、一度くらい飲み忘れたからといってすぐにどうにかなるようなものではないから。と、お伝えすると安心したようで電話を切られた。
電話を終え休憩室に戻ると非常勤の女性薬剤師の方、二人とも僕の顔を見て何やらニヤニヤしている。
特に笑われるようなことは何もしてないので、何笑ってんだこの人達、ってな視線を向けると。お一人が『お若いのね』と言ってきた。
さらに何を言っているんだこの人達は?というような疑問顔をしていると、先程まで見ていたタブレットの画面を指さして笑っているようだった。
何か変なものが表示されているのかと思って、タブレットの画面を覗き込むとスリープモードになっているようで暗くなっていた。
暗くなっている画面の何が面白いのかと疑問に思いながら、取り上げ裏側を見たり、端から端まで隅々に渡って見たりしたが特に何もなかった。
疑問顔をしながら裏側にしたり、ひっくり返したりを繰り返していると『そうじゃない、何見ていたの?』と言ってくる。
二人で目を合わせ、クスクスと笑い出した。
何見ていたのと言われても、特に何かを好んで見ていた訳でもなかったので思い出せないでいた。
思い出せないので何か変なもの映ってましたかと聞いてみると、少し恥じらったような表情となった。
よく聞いてみると僕が席を立った時はまだ画面がスリープモードには入っていなく、そこに写っていた画面の内容のことでニヤついていたとのことだった。
そこで何を見ていたか思い出した。ただニヤつくような内容ではないと思った。むしろ気持ち悪がられるような内容だと思ったのだが、もしかしてこのお二方もそっち系が好きな方なのかと思った。なので思い切って聞いてみようとしたら向こうが先に口を開いてきた。
「やっぱりそういう感じの娘がタイプなの?」
???何を言っているんだと思った。
詳しく聞いてみるとタブレット画面には制服姿の女性が表示されていたようで、好きなアイドルの画像でも見ていたんじゃないかと思って、ニヤついていたようなのだ。
流石に職場でそんなサイト見ないだろ。と思ったので二人の見てる前でタブレットの画面を開いてみせた。
そこには先ほどまで僕が見ていたサイトが表示された。二人はあれ?って表情をする。
二人が言っているような制服姿の女性の画像など影も形もなかった。
実を言うと心霊系のサイトを見ていたのだ。その内容はアイドル系の内容でも、女子高生が出てくるような内容でも何でもない。
えっ、えっ、うそー、とか言ってくるので、心霊系のサイトを見ていたとはあまり言いたくなかったのだが、エッチ系のサイトを見ていたと誤解されたままなのはもっと嫌だったのではっきり言うことにした。
でも言わないほうが良かったと思ってしまった。
自分は心霊系のサイトを見ていて、そこには制服姿の女性なんて出てこないですよ。表示されていた制服姿の女性ってどんな感じだったのですか?と聞くとしばらく顔を見合わせた後、真っ青になってしまった。
そういえばどんな顔の女性なんだろうと思って、興味本位で画面をスクロールしてみたが、動かなく首から下のみしか表示されないのでおかしいなと思った。
背景が薄暗い建物の様だったので変だなと思った。とか色々言い出して騒ぎ出した。
二人は混乱しきってしまっていたので、心霊系など特殊なサイトを見ていると時々、エッチ系の広告が表示される時があるのでおそらくたまたまそれが表示されたのだと言って落ち着かせたのだが。
今見ている心霊系のサイトは何度も見ているが、エッチ系の広告など一度も表示されたことはない。
お二人は一体何を見たのだろうか。何だか、いやーな気持ちになる変な体験だった。
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