第33話 学園二年生の忙しい日々

 副会長の私がいなくても、次期副会長確実のサージェスのフォローがあれば生徒会は何とか回っているみたいであった。


「僕がやらねばならない王宮の仕事をサラが肩代わりしてくれている。そのおかげで僕は生徒会の活動に専心できる。たとえ顔を見せなくてサラは生徒会に貢献してくれているんだ」


 ジーク生徒会長は皆に説明をしてくれる。


「いわば陰の功労者と言うわけですね」


 サージェスがそれを受けて言った。


 一緒に生徒会の活動をできないゆえ感じていた寂しさが、彼らの発言で少し癒されたような気がした。


 それから私は学園に入学する前から、自分で市井に『ダイネハーフェン相談所』と言うよろず相談所を立ち上げていた。


 雇ったのは受付のための二十代の女性と相談を聞いてまとめるための職員。


 そこで聞いた悩み事を相談者のニーズにあわせて、ヴァイスハーフェン家の力も使って解決しておく。


 ちょっとズルをしているかなって感が無きにしも非ずだが、使えるものはしっかり使って活かした方がいいよね。


 これは一般庶民の生活や考えを知ると同時に万が一の時のために、よろず相談所を通して多方面にコネを作って恩を施しておく。そして、努力の甲斐なくやっぱり断罪されてしまった暁には家族全員で別人になって市井に隠れる。


 そのためにつくった避難場所なのである。


 学業や生徒会、そして王宮の仕事で忙しくなってきたが、このころには二名の職員やヴァイスハーフェン家から借りている事務処理担当係に仕事をほとんど任せても大丈夫になっていたので、経営者の私は報告書を読むだけで事足りていた。


「サラはきっといい王妃になるわね。貴族社会だけでなく一般庶民の生活も知りたいからと、こんな相談所をつくるのだから」


 家の者以外には内緒の『ダイネハーフェン相談所』について母が言った。


「『いい王妃』なんかになってやる必要はないと思うけど、まあ、サラの向上心や優しさには上限がないってことは認めるよ」


 兄が若干皮肉交じりに行った。

 でも、ほめてくださっているのも確かなのでありがたい


 しかし、相談所を立ち上げた動機が『断罪』に対する備えであることは家族に対しても言えない。


 何足ものわらじをはいて忙しい学園二年生の日々はあっという間に過ぎ去った。


 そして、ジークは卒業していった。


「ありがとう。悔いのない学生生活をおくれたのはサラのおかげだ。今度は僕がお返しをする番だね」


 ジークはそう言って、私の王宮の仕事の中で自分が肩代わりできる分は全部引き受け、女性王族がしなければならないことは母である王妃に振り分けた。


 そして、最終学年の年、私は生徒会長になった。



☆―☆―☆―☆-☆-☆

【作者メモ】

 読みに来ていただいてありがとうございます。

 次回から『乙女ゲーム開始編(仮題)』です。


 ☆や感想頂けると嬉しいです。


 

  

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