第22話 悪口を聞かされた時の対応は難しい【フェリシア視点】

 母は私の人見知りが生まれ持った性格というより能力の副作用であることを理解してから、私が徐々に人になれることができるよう計らってくださった。


 具体的には、できるだけ腹に含みのない信用のできる人を選んで接触できるようにしたのだ。


 私と同い年の娘がいるご自身の学生時代のご友人、ラッセル家とシュニーデル家の夫人をブリステル家に何度も招き、私はその家の娘と親交を深める。


 アリシア・ラッセル、赤金色の髪ストロベリーブロンドのはきはきした子。

 エリーゼ・シュニーデル、白金色の髪プラチナブロンドのおっとりした子。


 三人で一緒にお茶したり、遊んだりするのは本当に楽しかった。


 三人とも同い年なので、学園に入学する年も一緒。

 それを考えると今からワクワクする。


 あと、もう一人、個人的に交流を深めたい方がいらっしゃる。


 エミール殿下の兄の王太子殿下の婚約者のサラ様。


 両親が聞いた噂話では、私が新年のパーティで倒れた後、私を貶めてヴァイスハーフェン家におもねろうとした下級貴族を、逆にぴしゃりとたしなめたとか。

 

 その家のご息女でもあるサラ様は、パーティの時もそのほかの時も、何度か顔を合わす機会があったけど、陰で人の悪口を言っているさまを確認したことがない。


 きっと清々しいお心の方なのだわ。


 もっと親しくなる機会を!

 勇気を振り絞って我が家のお茶会に招待。


 来ていただいたサラ様とも話が弾み、これから何度でもいっしょにお茶会と思っていたのだけど、王妃陛下にはそれが気に障ったみたい。


「私を仲間外れにする気なの?」


 そう言われてしまい、今後、サラ様と二人きりのお茶会はやりにくくなってしまった。


 その代わりに王宮で、授業の後に一緒に三人でお茶を飲む機会はあったが、それは緊張と戸惑いの連続だった。


「フェリシアは立ち居振る舞いは『優雅さ』を絵にかいたようで、サラのいいお手本になりますわね。婚約者のうちにサラも同じようにできるようにならなければ、王太子妃になってから、第二王子の妃より劣ると言われては大変ですわよ」


 えっと、これって……。


 注意? 

 忠告?

 それとも非難?


 サラ様には私より優れたところがたくさんあるのに。


 サラ様がおられず、王妃様と二人きりでのお茶の時間を持った時には、さらに困惑した。


「王太子の婚約者は、あなたに比べるとどうしても粗野でがさつなのよねえ。ほんとうはあなたに王妃になってもらった方がいいんじゃないかって話もあったのだけど、やはり年回りの都合でねぇ」


 そんな言い方……。


 サラ様だけじゃなく、エミール殿下や王太子殿下にも失礼なんじゃ……。


 否定したらさらにサラ様への批判の勢いが増しそうな気がする。


 賛同なんてもちろんできないし、あいまいに返事をしても、私がいつも見ている陰で人の悪口を言っている者の取り巻きと同じことをしてしまうことになってしまうこととなる。


 どうしたらいいのかしら?



 


 


 

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