第21話 闇と風の能力【フェリシア視点】
私とエミール王子殿下が婚約したのはともに十一歳の時。
自分の気持ちをうまく表せなくて「子供らしくない」と言われる私と違って、エミール殿下は活発で裏表のない少年。
こんな私が殿下の婚約者としてやっていけるのかしら?
「なんとお可愛らしい!」
「王国も安泰ですわね」
「あの年でもう高等教育で習う数式や術式を習得しているとか、器量だけでなく聡明さもすばらしい!」
口々に祝福と称賛の言葉を投げかけてくれる人々。
しかし、私たちの目の届かないところでは侮蔑と冷笑の言が飛び交っていた。
人々の声に酔って気分が悪くなった私に対してさらに容赦ない人々の声。
「見た目だけだろ、ひどい人見知りらしいな」
「まあ、王子妃の役なんてこなせるのかしら」
「頭脳は優秀らしいが、かえって可愛げがなくなるかもしれんな」
私には他人の陰口や噂話を聞くことができる能力がある。
王国でも一二を争う名門の公爵家の娘に生まれたにもかかわらず、人間恐怖症ともいういうべき内向的な性格になったのは、自身の生まれ持った能力が原因の一つ。
パーティの翌日、私は泣きながら王子との婚約を辞めにしてほしいと両親に訴え、聞いた言葉を全部話したが、両親ともに怪訝な顔をされた。
でも、言った人間の名前と内容が実に細かく具体性があったので、それとなく両親は、その相手に言われた言葉をもじって投げかけてみた。
「可愛らしいと言ってくださいましたが、見た目だけでひどい人見知りなんです、貴方もそう思っていたでしょう」
カマをかけられた貴族はバツの悪そうな顔をしたらしい。
それで、私が言っていることがどうやら本当であると信用してくださった。
その後、魔力による弊害を研究されているクルーグ家のミンディ様に見ていただく。
「フェリシア様は風と闇の力が強く、それが制御できていないようですね」
伝説のミューレア王妃は、自身の意識を飛ばす風の力と闇の隠れる力で、人々の隠れた本音、いわゆる陰口なども聞くことができたと言われている。
風と闇の力が強すぎる私はそれを無意識にやってしまったとか。
そういえば、さらに幼いころ、私たちの前では殊勝な顔で働いている使用人が、陰でずるをしたり、主人一家の悪口を言ったりするのを私は見抜いていた。
それを両親や執事にしゃべったら、あとでその使用人が叱られたり、クビにされたりすることがあり、それ以降、わかっていても知らないふりをするようになった。
それは子供の身ではなかなかきつい体験だったわ。
この症状の対処法として魔力の制御を身につけること。
そのための指導をミンディ様から受けることとなった。
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