第12話 対策は『男同士の友情』?
「お父様、このことはお兄様たちには?」
「二人にはそれぞれ十三歳になったときに話したさ。ヴァイスハーフェン家は歴史的にこういった王家の横暴には、陰になり日向になり何らかの抵抗を示してきたからね。ヴェルダートルの件はあまりにも王家の処置が早く何もできなかったが……」
「だから、お兄様たちは……」
私と婚約をした王太子を敵視していた理由はそれか!
ようやく合点がいった。
「私はお兄様たちにも迷惑をかけてしまうかもしれないですね……」
私を心配して王太子に厳しい目を向けていた兄たちの心が染みると同時に、申し訳ない気持ちも生まれてくる。
「そんなこと、サラは思わなくていいんだ。私たちはヴェルダートルとは違い王家に対抗しうる力を得ることが可能だ、みすみす滅ぼされるようなことはない!」
「お父さま、そんな不穏なこと、誰かに聞かれたら……」
私は周囲を見回した。
いくら家の中と言ってもスパイが紛れ込んでいるかもしれないでしょ。
「そうだね、ここだけの話だ。私が言いたかったのは、私たち家族はいつでもサラの味方だってことだよ」
父は私の頭に手を置きささやく。
実際、父であるヴァイスハーフェン公爵は魔法省と財務省の大臣を兼任している。
家が代々管理してきた国の重要機関もいくつもある。
そんじょそこらの兵力で滅ぼすのは無理だろう。
そのせいか、物語の中のサラは高慢で冷血。
ヴァイスハーフェンがかかわっているところは魔法関連が多いせいか、家はまるでマッドサイエンティストの集団のような描かれ方だった。
「家族の支えは心強いですわ。でも、基本的に殿下とのことは見守っていただきたいかなと……」
私は父に懇願した。
「わかった。王太子との関係が今後どうなるかわからないけど、問題が起きたらすぐに言うんだよ」
父は私の頭の上にのせている手で髪をくしゃくしゃと撫でながら優しく言った。
私の現実の中の王国にて起こりうるであろう乙女ゲームの展開。
その裏にはこんな深い歴史的な事情もあったとはね。
破滅を回避するためにできることは二つ。
起こらないようにすることと起こってしまった時の被害を最小限にとどめること。
起こらないようにするためには、すでに非道なことをしでかした国王夫妻はともかく、婚約者の王太子殿下とはできれば良好な関係を保っておいた方がいい。
恋愛に関しては相手の好みもあるしどうしようもない。
でも、別の女性に心を移しても、友人として良好な関係を保っていればそこまで非情なことはされないかもしれない。
幸いなことに、ジークは今の段階では婚約者である私にも好意的に接してくれている。まだ恋愛云々を意識する年頃ではない、と、いうことからかもしれないが、その関係を維持していけるように努力しよう。
「目標は『男同士の友情』ね。いや、私は男じゃないけどそれに近い感じで。恋愛関係になるのは難しくても、同性同士の友情に近い親密な関係を作っていくってこと。うん、とりあえず、それで行こう!」
自室のベッドの上で私は独りごちた。
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