第10話 ヴァイスハーフェンの功績

 森の三つの駐屯地と王宮はポータルで繋がり瞬時に移動できる仕組みがある。


 そして三つの中で一番大きな中央駐屯地には、他の二つよりより高度な治療が施せる医療施設と、魔物退治に有効な魔法装備を開発するための研究施設が併設されている。


 その二つともヴァイスハーフェン家が管理運営を請け負っている。


 そもそも、それらの施設を作るのを進言したのはうちのご先祖様である。


 フリーダ女王様、やるべきことが多すぎて、各公爵が得意分野を活かしてできることについてはけっこう丸投げだったみたいね。


 魔法研究が好きだったヴァイスハーフェン家のご先祖様は、その後、王宮の魔法省の大臣の地位も得て、魔法を国民生活を良くするために利用するあらゆる部署を設置し、親族はその要となっていった。


 他の公爵家でもそうだが、それぞれの得意分野で国の運営に深くかかわっていく。


 それは王家にとって心強いと同時に脅威でもあった。


 エルフの血はこの国を統べる存在にとって、王位の正当性を保証するようになったが、それならば他の貴族とて同じ。


 特に五大公爵家はすでにその優れた資質を国民に示している。


 だからこそ、歴代の跡継ぎは年回りの近い公爵家の子を伴侶として迎えていた。


 だが、何世代かに一人ぐらいはそういう伝統に反発する者が出てくるようだ。


 父は語った。


「ルルージュやメレディスが滅んだのは、その家との婚約が気に入らない王家の世継ぎが言いがかりをつけたせいとも言われている」


 ちょっと、何ですか、その乙女ゲームのような展開は?


 私の前世の記憶では、ブリステルがパート1、ヴァイスハーフェンがパート2で滅ぼされているが、それ以前も似たようなことがあったとは!


 物語やゲームでは、話の佳境に入ると過去にさかのぼったエピソードを紹介する場合がある。だから、パート3以降でそれらがあった可能性もあるが、私はパート2発売の後しばらくして死んだのでわからない。


 いずれにせよ、この時間軸では過去の話。


 すでに起こってしまったことは今さら変えられない。


 父はさらに話を続ける。


「二家が滅んだのは百年以上前の話だが、ヴェルダートルは違う。だからこそ、国王陛下が王太子の時代、婚約者だったイレーネ嬢の罪を問い生家のヴェルダートルごと滅ぼした時には、過去の悪夢が再現されたと貴族社会に衝撃が走った」


「それは、私の聞いていた話と全然違う……」


 そもそも、エシャール王妃の前に国王に婚約者がいたこと自体、初耳だ。


「そう、わずか数十年前の話なのに国民には隠蔽されているんだ。王太子時代、国王は婚約者であったイレーネ嬢を差し置いて子爵令嬢のエシャール殿を寵愛した」


 こっちも乙女ゲームもどきか!

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