第5話 ジーク王太子の乱入
「父上、母上、一体どういうことですか!」
扉が乱暴に開かれ一発触発の雰囲気が破られた。
そして、聞き覚えのある少年の声。
「入室を許可していないぞ、ジーク!」
国王が王太子をとがめる。
「その件に関してのお叱りは後で受けます。しかし、僕が望んでそうしてもらっていることに対して、サラがお叱りを受けるのは納得がいきません!」
ジークはきっぱりと言い放つ。
自分が叱られるのを承知で私の弁護をしに来てくれたの?
ちょっと感激した。
「ヴァイスハーフェン家の馬車が停まっていたので、何事かと家臣らに尋ねたら、まさかこのような……」
恨みがましくとがめるようにジークは国王夫妻につめよる。
「誰じゃ、ジークにそのようなことを漏らしたのは……?」
きまり悪そうにつぶやく国王。
「その件に関して説明を。実は先日のサラ嬢とのお茶会の後、侍女たちが王妃陛下に呼ばれ様子を聞かれました。そうですね、陛下」
従者のトロイアが説明をし始める。
「彼女たちはお二人が仲睦まじい様子であったことを言うために、サラ嬢が殿下の名を呼ばれたことを申し伝えたのですが、その後陛下はひどく気分を害され……」
へっ、つげ口ってわけでもなかったの……。
「それで、自分たちの言い方が悪かったのか、と、侍女たちから相談を受けまして、その件があったのでもしや、と……」
なるほど、推測してこの場にやってきた、と。
「ほう、では言いがかりをつけているのは王妃陛下のみ、と、言うことでよろしいのですかな?」
父が冷ややかな口調で再び口をはさむ。
「言いがかりだなんて……」
「そうじゃ、少々心配が過ぎただけじゃ」
父の追及に口ごもる王妃と擁護する国王。
「『心配』とおっしゃっておられますが、私の交友関係を妨害するのが母上のおっしゃる『心配』ですか? サラだけじゃない。貴族の子弟らを王宮に呼び寄せた時も、同じように『殿下』をつけないで呼んでもらうことを頼み、その場では快く受けてくれたのに、次に会った時には、親にひどく叱られたので『殿下』の呼称は外せないと言われました」
ジークが母のエシャール王妃に抗議する。
「それは、各家がちゃんとご子息に礼儀作法を教えたからそうなっただけでしょう」
母の王妃が反論する。
「来てくれる貴族の子弟は、将来の私の側近候補ですから、確かに家臣ともいえます。ならばサラは? 父上と母上だって公式の場以外では名前で呼び合っているじゃないですか? 同じことをして何が悪いのですか?」
「……っ!」
王妃は言葉につまる、と、同時に、私をにらみつけてきた。
それって八つ当たりじゃん。
「はっはっはっ、なるほど! ご子息のお友だち付き合いを妨害するために各貴族に脅迫行為をされる王妃殿下、たいしたものですなあ!」
ちょっと、お父様!
めちゃくちゃトゲのある言い方なんですけど!
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