第2話

すみません!

なぜか一行だけで更新してしまったようで。

一話分の正しい二話を更新しました。

一行なのにいいねをくださった天使の方達、ほんと申し訳ないでございます。

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 家庭教師がお休みの日、金食い虫がどんな虫かとっても気になって、お父様の金庫とか調理場や貯蔵庫にそばにいないか探し回った。


 調理場の裏手でうちのメイドが商家の配達人と手を繋いでモジモジしてるのを見かけて、

危なくなさそうだから、逃げなくっても良いかなと隅っこで虫を探してたら、執事のスチュアートに見つかってしまった。


「お嬢様?何をしておいでで?」


 スチュアートの声にメイドたちはバッと離れてどこかへ行っちゃった。


「あのね?金食い虫を探してるの!スチュアートはどんな色か知ってる?」


 私の質問にいつも真面目な顔をしているスチュアートが一瞬「ぶっ」って唾を飛ばしてしまったの。


「っこほん。そうですね。金食い虫がお金をたくさんもっている家人のそばによく出ます。当家には金食い虫が来るほどの大金はないのでここでは見つからないかと」


「そうなの?なんだ~。見てみたかったのに。お金食べちゃうなら体はキンキンになってたり、ゴテゴテした派手な虫かと思ったのよ」

「ぶーーー!!!!」


 スチュアートが膝を折ってしまったわ。私は何か変なことを言ったかしら?


「ハァハァ、お嬢様は想像力が豊かでございますね」

「そうかしら?」

「金食い虫はおりませんがあちらの木にはよく黒い立派な虫が来ますよ」


 スチュアートに連れられて庭の木を見に行ったら、カブトムシと言う虫と偶然飛んできた黒いアゲハチョウと言う蝶を見られたわ。


 金色の虫はいないのね。残念。



 それからもたまに、お出かけ先で抱き合ってる人とか、女の人が男の人を平手打ちしてるところを見かけたりして。


 私も殴られちゃう!!って思って見かけたらこそっと逃げた。


 お父様が言ったことは確かだと思って震えちゃったの。



 当時はまだお昼しか外に出てなかったからそれで済んでたと思うのはまだずっと先のこと。



 私には、十四歳で婚約者ができた。

 ジョシュア・マァムさま、伯爵家の長男でお父様のご友人の息子だそう。

 同じ歳で、優しそうなお顔でとても安心したわ。

 少しだけふくよかで垂れ目、のんびりした感じが私の好みだったの。


 週一回、デートやお茶をする日が楽しみになったわ。


「君はキラキラした目で世界を見てるんだね」

「キラキラ?」

「そう、いつも見てるだろうものでも全部楽しそうに見てる。空やお花も、そこの小石さえも」

 そんなふうに見てるかしら?


 ある日、ふと思い出してジョシュアさまに聞いてみたの。


「ねぇ、ジョシュアさまのうちには金食い虫って出る?」

「金食い虫?」

「スチュアートが、お金持ちの人のそばに出るって言ってたの。うちはお金持ちってほどではないから出ないんですって」


 彼は目を丸くしてからクスクスと笑い出した。


「うちもそこまででもないから出ないかなぁ?公爵さまや侯爵様あたりのお家にはたまに出るんじゃないかな?」

「まぁ!それじゃ観察する機会がないわね!」


 残念無念なの。あら、でも?


「そういえば、昔ね、子爵夫人のところに出たの!見せてもらえなかったのよ」

「子爵・・・。その虫はたまたま見かけた領地の予算なんかをお金を食べちゃったんじゃないかな」

「まぁ!!それは大変ね!領民に迷惑がかかっちゃう」


 金食い虫やばいわ。やっぱり駆除薬を撒かないと。


「金食い虫には出会わない方が良いからもう気にしない方がいいよ?口に出すと寄ってきちゃうかもだよ?」


 クスクスっと笑って私の頭を撫でてくれた。


 ジョシュアさまと順調に過ごしている間に、お兄様はドロシーさまと結婚して今は我が家の離れで暮らしている。

 お姉さまはガット・エイブリー子爵令息に嫁いだ。少し寂しいけど、お姉さまは幸せそうなので良かった。婚約が決まった時はもう少し上に爵位の方が良いって母と二人で荒れてたけど。


 私は学園でもたまに抱き合ってる人とかを見かけちゃったりしたけれど、気にしないように過ごしていた。

 ジョシュアさまにも、私がよく隠れてデートをしてる人たちを見つけちゃう話はしたの。


「そんなに隠れてデートする人がいるんだねぇ」

 彼はのほほんと笑ってから、

「後ろ暗い人かもしれないから、見かけてもすぐ離れようね」

 お父様と同じように注意されたわ。


 私は十五歳になった。夜会に出られる年。

 ジョシュアさまはデビュータント用に、ドレスとお飾りを贈ってくださった。


 白いドレスに、ジョシュアさまの瞳の色のエメラルド。


「私に似合うかしら?」

「よくお似合いですよ」

 メイドが地味顔の私を一生懸命にはドレスに負けないメイクを施してくれた。


 お迎えに来てくれたジョシュアさまは、素敵だわ。


「さぁ参りましょうか?我が姫」

 ユーモアたっぷりにエスコートしてくれて、初めての王宮の大広間に案内してくれた。


 私たちと同じ年頃の子たちが揃っていて、学園ではみない華やかさに圧倒された。


「ねぇ、年上の婚約者がいる子たちって素敵ね!」

 学園の同級生が話しかけてきた。

「あの余裕のある感じが羨ましいわ」


 ジュシュアさまも余裕があると思うのだけど。隣を見ると苦笑している。


「学園での姿を見てる相手と夜会で見る男性と比べたらいけないよ」

「それもそうね!」


 近くにいたお友達も笑ってる。


 いつもの顔ぶれより見知らぬ大人がカッコよく見えるのは仕方ないって。


 私にとってはジョシュアさまが一番だけれどね。





 

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