第6話 苦戦の予感
1日目が終了した放課後。
初勝利に喜びを感じながら静子が櫛灘寮に帰宅している頃。
街の中央にあるボクシングジムでは瑠音と瑠都がスパーリングをしていた。
魔法のうち体術のみを許可した特殊ルールでのボクシングは戦技大会を見越してのモノ。
ある種の調整と言える。
「宮本さんが使った魔法を擬似的に再現してみますわ。リュートは遠慮なく打ち込んでくださいませ」
「いくぞ! ギアゲル!」
ギアゲルは反射神経、俊敏性、動体視力を強化する魔法。
高等体術に当たるわけだが戦技大会に向けて瑠都はこの魔法だけを徹底的に鍛錬してモノにしていた。
この魔法に限れば2年生の中でも今やトップの実力である。
そこに純粋なボクシング技術で放たれる拳打は江の幻朧拳が形無しになるほど。
加速された左ジャブは残像を生み出すほどに速い。
「制空間バリア」
それに対して瑠音が使った魔法は周囲に魔法力を察知するセンサーを作る魔法。
その膜に魔法力を乗せた拳が触れたならば即座に反応してパリングで防いでいた。
これは静子が使っていた反射盾による的確なガードの再現。
瑠音の推測では今の瑠都のパンチスピードにも対応できるという想定である。
避ける。
弾く。
弾く。
避ける。
避ける。
約2/5のペースでジャブを弾く6回目のパリング直後、瑠音はカウンターを放った。
「マグナム!」
静子の場合は爆発魔法のオイを使用していたので瑠音もあわせて爆発する拳を放つ。
制空間バリアが途切れる一瞬に攻撃に転じるのを察した瑠都は即座にガードの姿勢を取るが、静子の魔法よりも高い威力の爆発を纏う拳打の前に瑠都はリング端まで吹き飛ばされた。
加減しているもののこの技は魔法であるとともに影道ボクシングクラブに伝わる必殺拳。
瑠音が放った威力と出の速さを相手に防御が間に合う瑠都のほうも上出来とも言える。
「ガードが間に合っただけでは不充分ですわ。さあ……もう一回」
「わかった。だけどルネのマグナムを相手に後の先を取れって言われても難しすぎるって」
「だったら成功したらご褒美を差し上げますから気合いを入れてくださいな」
「よし!」
瑠音がスパーリングで模倣している戦い方と実際の静子のスタイルは見た目では近くても中身は大きく異なる。
特に魔法を発動する際のプロセスにその差が大きい。
ここらで閑話休題は終わりとするが最後の一言。
瑠都がこの日、特訓の末にご褒美を貰えたのかはご想像にお任せするが、とにかく翌日の試合において彼は江に勝利するとだけ言っておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます