俺の元に来たAIがポンコツ過ぎる件

あかせ

第1話 AIを設定だ!

 「この動画つまらんな~。何が面白いんだ?」

あまりにも退屈なので、途中で観るのを止める。


社会人になると、日々の仕事をこなすだけで精一杯だ。そして今日は念願の休日なのだが、1人暮らしの俺には趣味もなければ金もない。


だから家で暇つぶしに動画を観ていた訳だ。再生数と“いいね”が多いから期待したのに…。


……腹減ったな。そろそろ昼だし適当に作るか。そう思った時、インターホンの音が聞こえた。俺には友達がいないから、家に来るのは宅配業者ぐらいになる。


なんか頼んだっけ? 記憶にないぞ? とにかく急いで玄関に向かう。


やはり来たのは宅配業者だ。伝票の送り主にピンと来なかったが、備考欄に“懸賞当選品”と書いてあるのを見て思い出す。


そういえば懸賞に応募したっけ。簡単なアンケートに答えると応募できるってやつだ。大した物はなかったが、代わりに当選者が多かったので暇つぶしにやったな…。


何が当たったんだろう? 俺は荷物を受け取った後、早速部屋に戻って開ける。



 荷物の中身は、メモのような小さい紙・冊子・黒いメガネの3点のようだ。こんなの当選品の候補にあったか?


俺は“2000円を200名”や“洗剤セットを500名”とかを目当てに応募したのに…。まぁ良いや、俺はメモを手に取り読んでみる。


【おめでとうございます! 川増かわます 俊也しゅんやさんに1等の“弊社開発のAI”が当選しました! 詳しくは冊子をご覧下さい!】


AI? …そういえば、そんなの見た気がする。だがそれに当選するのは確か1名だったはず。当たる訳ないからロクにチェックしてなかった…。


AIは以前の事を思えばだいぶ普及しているが、どんな物にも良し悪しがある。高性能のAIは当然高く、俺のような貧乏人には夢のまた夢だ。それぐらいはニュースを見てれば一般常識だな。


このAIは俺の人生初になる。今日は予定ないし、暇つぶしに設定するか。



 荷物を全て取り出した後、冊子を見てみる。え~、なになに…。


【同封されている黒いメガネには“チップ”が内蔵されており、AIは常にあなたと同じ光景を見る事が出来ます。まるで隣に人がいるかのような会話ができますよ】


それは便利だな。つまり「これは何だ?」と対象を指差せば、AIはすぐ答えてくれるのか。傍から見ると『独り言が大きい人』と思われるのが難点だ…。


【専用ページを通して、あなたの所有するスマホに弊社のAIをインストールする事も出来ます。お好みに合わせてご使用下さい】


これはメガネをかけない人向けだな。従来の“スマホがAIの目”となるパターンだ。


偶然にも俺は黒いメガネをかけているから、当選品のメガネに替えよう。今のはボロくなってきたし良いタイミングだ。度数は近い内に再調整しないとな。


さて、冊子の続きを読もう。


【AIの名前・性別・年齢・特徴を決められます。何度も選び直せますし、お任せする事も出来ます】


これから俺のそばにいてくれるAIなんだ。キャラメイクするしかない!



 AIの設定は専用ページで行うらしい。スマホで住所や氏名などを入力して会員登録したので、ようやく設定できる。その情報がチップに転送されるようだ。


【AIの性別を選んで下さい】


こんなの“女の子”一択だろ! 考えるまでもない。


【希望年齢を選んで下さい。AIによって多少誤差が出る場合がございます】


小学生低学年の幼女・幼馴染・お姉さん系で悩む。どうしよう…?


少し考えた結果、幼女にした。そのほうが面白そうだと思ったからだ。それぐらいの歳は“10歳”ぐらいになるか?


【AIの特徴を選んで下さい】


活発(元気)系・清楚系・お嬢様系etc…。幼女にしたから“活発系”で良いや。


【AIの名前を選んで下さい】


簡単そうで一番の難題だ。シンプルが良いのか、凝ったほうが良いのか…。


設定は何度も選び直せるらしいが、俺はそうする気はない。だってコロコロ変えたら、そのAIに愛着を持てないじゃないか!


恋人のようにずっとそばにいてほしい…。だからこそ慎重に選ぶ!



 どれだけ悩んだだろうか、AIの名前は『アイ』にした。無難中の無難で、これを思い付かない人はいないレベルだろう。


だが、無難故の安心感もある。この名前を後悔する事はないと思う。アイという名前の女性は決して珍しくないんだから。


【設定を完了しました。入力情報をチップに転送中なので、今しばらくお待ち下さい】


これでスマホでやれる事はないな。後は少しずつ増えるパーセントを見守ろう。


そして、ついに100%を迎える。


【転送完了しました。AIの姿は、初期設定の場合“右レンズ”に映ります】


いよいよご対面か。俺は当選品のメガネをかけるのだった。

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