おしえて⁉ 科学と魔法の正しい使い方!!

小林汐希

プロローグ

〜わたしのひとりごと〜



 わたしのおうちは、雑貨と「魔法」の小物を扱う小さな『こころ屋』というお店。


 最初にこんなことを聞いてもいいかな?


 みんなは「魔法」ってどんなイメージを持っている?


「怖い?」


 うん、確かにそういう声もよく聞くよね。


 わたしだって、小さい頃に読んだおとぎ話に出てくる魔法の使いお婆さんが怖いと思ったこともいっぱいあった。魔法使いが出てくる映画とかもそうだよね。あれを見ちゃうと、わたしもちょっと怖すぎる思ったこともあったな。


「いっぱい道具が必要?」


 そうだね、パッとすぐに思いつくだけでも水晶玉とか、身近なものだと鏡やタロットカードとか、もっといろいろイメージするものがあるかな。みんなが思い浮かべているイメージもあってるよ。



 確かに本当に道具が必要な魔法術もあるけれど、「本当の魔法」ってみんなそれぞれ心の中にあるって、実は結構知られていないことだと思うんだ。


 困ったり悩んだことを相談された時は、わたしたちはそのお話を聞いて、ちょっとした能力だったりアイテムを使って背中をそっと押してあげる。


 その結果、その人の願いが叶ったのなら、それはわたしたちが渡した力じゃなくて、みんなそれぞれが持っている自分の魔法の力を使って叶えたってことなんだと思うよ。



 そう、魔法はみんな一人ひとりの心の力が形になったものだって思うと怖くないと思わない?



 「魔法使い」って呼ばれているわたしたちは、そのお手伝いをして、背中を押してあげるのがお仕事とか役目だと教わってきた。



 小さな頃からそんなふうに家族に教わって、学校の授業が終わった放課後はお店のお手伝いをしていたから、小学生の頃からいつも双子の姉と一緒にお仕事をするものだって自然に思っていたし、中学生の時も、高校一年生になっても部活には入らなかった。学校から近いうちのお店は放課後に結構混んでいたからね。


 そうして高校の一年間が終わろうとしていた二月、幼馴染みからの連絡を受けてから、わたしたち姉妹の生活は大きく変わることになったんだよ。





 もう二度と戻って来ることはない高校時代……。


 時が過ぎて、こうして当時のアルバムをめくっていると、いっぱい楽しかった思い出たちがこみ上げてくる……。


 もし、あのまま何も部活に入っていなかったら、こんなにたくさんの思い出や、大切な人たちとの出会いもきっと生まれなかったんだよね。



 だから、いろいろあったけれど……。


 それでも、後悔なんか全然しなかったな。


 ううん、それ以上に言いたい言葉がわたしの中にはある。


「みんなありがとう……。いまわたしがこういられるのはみんなのおかげ」って。


 あの時代の仲間たちは、わたしにとってかけがえのない「たからもの」なんだから。




瞳海ひとみ、悪いけどこっち手伝ってくれる?」


「はぁい!」


 ぱたんとアルバムを閉じて立ち上がり、エプロンとその下に着ているブラウスの状態を確かめて、髪型をもう一度シュシュで纏め直してから姿見で後ろ側からもおかしいところがないかを再確認。


「よし、合格」


 アルバムを接客カウンターの下に置いて、これは今夜また部屋に持って帰るから。


奏天かなで、今行くね」


「『夢砂ゆめすな』の調合の方お願いできる? お母さんが出ちゃって、そっちは瞳海の方が上手だからさ」


「うん、分かったよ」


 そうだよね……。あんな高校時代、もう一度やり直せるかと聞かれても、絶対に同じことなんてできないよ……。


 みんなで一緒に泣いたり笑ったり……。そのなかで大切なことをいっぱい教わったよ。


 あの時代の延長でもある今の時間は、きっとこれからもずっと続いていくんだよ……ね……?

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