君を独占したかった
@kimigasuki
第1話
ねえ、今君の目に写ってるのは誰?
「玲央、今度の日曜日空いてる?」
勇気を振り絞って震える声を隠しながら言った私に君は
「知らね」
冷たい声を放った
「そっか、」
精一杯の明るい声で返した私の声は掠れてきっと君には届いてなかっただろう
私、りんは玲央(れお)と付き合って2年だ
いや、正確には付き合っていたのは1年かもしれない
1年前から 私たちは冷め切っていた
私は今でも玲央のことを愛している
でも玲央にとって私はどうでもよくて
早く玲央を解放してあげないといけないのに私の玲央への愛が邪魔をして、こんな関係ながらもまだ続いている
ごめんね、玲央
でももう終わりにするから
私が日曜日、玲央に予定を聞いた理由は最後の思い出作りをしたかったからだ
私たちが初めて2人で出かけた水族館に最後にもう一度行きたかった
玲央は行きたくなさそうだったけどどうしても諦められなくて1人で行くことにした
(やっぱり水族館はカップルばかりだなあ
付き合いたては私たちも周りからバカップルって言われてたっけ笑)
1人で思い出に浸りながら水族館を満喫してまっすぐ家に帰った
玲央とは同棲していてマンションの2階に一緒に暮らしている
部屋についてドアを開けたとき
今思えばなんであのタイミングに帰ってきてしまったのだろう
下着姿の女性が玄関で玲央を押し倒していた
何をしていたのかは何も言われなくてもすぐにわかった
ああ、なんで私っていつもタイミングが悪いんだろう
こちらに気づいた2人
「っ、りん」
驚いた声で私の名前を呼ぶ玲央
こんな時でさえ、自分の名前を呼んでくれたことに喜びを感じた私はきっとどうかしている
「あ、ごめんね!私もうすぐに出かけるから、!」
「りん!」
大好きな玲央の声がしたけど
これ以上その場にいたら涙が溢れてきそうで
また、私は逃げたんだ
「っわかってたけど、やっぱりつらいなあ、」
誰もいない公園で1人泣く私
私のこともうなんとも思っていないのはわかっていたことだけれど目の前に突き出されると流石につらい
「あの人、美人だったなあ」
何もかも自分と比べて落ち込んで、また泣いて
いくら泣いても私の目は泣き止めることを知らない
でも、
「玲央の、ばか」
ほんのちょっとだけ胸に秘めていたことを小さく呟いた声は弱々しく消えていった
スマホで玲央とのトーク画面を開く
(今までありがとう さようなら)
送信ボタンを押した
こんなにもあっけなく終わるのかと少し悲しい
こんなにも心から愛したのは君だけだったよ
今までもずっと、これからもきっとそう
君を目の前にすると胸が苦しくなって上手く喋れない
ああ、私今恋してるんだってつくづく思うよ
ねえ、知ってる?
君がどれだけ私の心を独占しているか
ねえ、知ってる?
君が話すたった一言で私の気持ちなんてころっと変わってしまうこと
ねえ、知ってる?
君の前だと緊張して本音なんて何一つ言えなかったこと
ねえ、知ってる?
君が愛しくて愛しくてたまらないってこと
ねえ、 知ってた?
君が
どうしようもないくらい憎かったこと
END
君を独占したかった @kimigasuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます