第12話 冬籠もりのお仕度
今や秋真っ盛り。そして秋が来れば自ずと冬が近付いているからか……。
カラスヘビさんとアオダイショウさんが冬籠もり用の巣を作り始めた。
――――――俺の部屋に。
「……何故俺の部屋ぁっ!?」
思わずツッコんだ。しかし蛇妖怪や蜘蛛妖怪は縁起のいい妖怪なので、お部屋に来てくれることはありがたいことなのだ。
蛇2匹、ちび蜘蛛たくさんでも余裕のある俺の部屋。お琴スペースも広々と確保されているし、最近はお仕事に大活躍の持ち運び琴や、箏まで新たな仲間に加わった。
……俺よりちび蜘蛛の方が演奏上手だけどねっ!?たまに泣きたくなるけどね!?
「ここ、ちび蜘蛛たちいっぱい、もふもふあったか」
カラスヘビさんが俺の部屋に堂々とお布団やらもふもふグッズを持ち込んでセットしながら告げる。
「まぁ、確かにそうだけどね」
最近は、真冬が広めた『俺、夜ひとりでおトイレに行けません』情報により、一緒におトイレ言ってあげると集まる有志のちび蜘蛛たち。最近はちび蜘蛛コミュニティにまで広まっているらしい。
……いや、確かにそうだけど……!
たまに夜おトイレ行きたくなって付き合ってもらったけどもおぉぉっ!
真冬さんは俺を羞恥心で染め上げたいの。いや、むしろ、俺の夜中のおトイレ事情まで鑑みてくれる、良きパートナーご主人さまと捉えることも……できる、のか?
今ではレギュラー土蜘蛛ちびちゃんずに加えていろんなちび蜘蛛がくる。通常カラーの黒いもふもふオオオニグモのちび蜘蛛。
あと手乗りサイズの小さなオチバカニグモちゃんとかキハダカニグモちゃん。最近はちび蜘蛛たちの名前も覚えてきた。
それから蜘蛛女の姐さんたちもよくいるから覚えてきた。ちび蜘蛛ちゃんたちも○○蜘蛛だよ~って教えてくれる。たまに蛇のお姉さんもいる。最近はアカジムグリさんに会った。赤髪に赤い蛇体のとてもきれいな蛇さんだった。
それから今日はアカオニグモとアオオニグモのちび蜘蛛ちゃんたちが遊びにきている。
赤鬼と青鬼も親友だが、蜘蛛でも親友らしい。なお、赤鬼は青鬼を犠牲にして、青鬼は刑期を全う中。青鬼があそこまで荒れたのは……赤鬼に犠牲にされた悲しさ故だろうか。優しい青鬼。でもその後、赤鬼は人間と仲良くなって青鬼と遊んでくれなくなったらしい……。赤鬼、友だちはちゃんと大事にしろよ。そんな赤鬼さんは、そんなことをやった上に酒飲んで暴れたので岩に封印されて謹慎中である。
……ある意味、息の合った鬼たちだ。
そんな鬼に比べて、アカオニグモとアオオニグモは仲良し。俺と仲良くなりたくても2匹そろってやってきておやつをねだってくる。なお、おやつについては厨房から支給があるからそれをあげる。今日は金平糖。あげれば仲良くはむはむしてる。
あぁ、和やかぁ~~。赤鬼と青鬼も、ちびちゃんたちみたいに仲良しに戻れるといいよね~。あと、俺の部屋にちび蜘蛛が増えたので、お布団が2枚に増えた。それでも余裕のある広い部屋。実家でもお琴を置いていたから広かったけど、こんなに妖怪づくめではなかったかもー。
――――――だからか、
「たまにちび蜘蛛ちゃんがお布団に紛れ込むと、ふかふか~」
幸せそうに語るカラスヘビさん。その言葉にすりすりしに行ってくれるアカオニグモとアオオニグモコンビはとっても優しいなぁ。カラスヘビさん、いつものまったりくったり。
くかー。
あ、寝た。
風邪ひかないようにカラスヘビさんのお腹にブランケットを掛けてあげたのは……アオダイショウさんであった。
お家の守り神なのに働き者だし優しくて気が利く~~っ!
そして冬籠もりはカラスヘビさんと一緒だし、2匹も仲良しだよなぁ。
「ねぇ、冬になったらやっぱり……蛇妖怪たちは冬眠するの?」
それなら、お部屋にいてもちょっと寂しくなるかも。寝ててもちび蜘蛛はお布団に入ってくるけど。それは知ってる。もふもふで大変ありがたい。そんなぬくみどころだからか、たまに違う妖怪も紛れ込む。
こないだちびタヌキちゃんが紛れ込んだ時は歓喜した。ちびタヌキ妖怪……めちゃかわいかったぁ~~っ!一晩のお布団のお礼にたくさんもふもふさせてくれたよぅっ!!
翌朝それを真冬に話したら呆れられたけど。いや、いいじゃんっ!ちび蜘蛛たちも警戒してなかったし、タヌキちゃんもイイコだったもん~~っ!
それに秋めく季節に向けて、ちび蜘蛛ちゃんたちが網掛けをしてくれてるのだ。
蜘蛛妖怪たちの網掛けは、厄除け魔除け効果があり、悪い妖怪も追い払ってくれると言う。
この時期は窓の外や入り口などにたくさん掛けてある。俺の寝室の入り口にもついていた。
いずれ消えるが効果は再び網掛けをする時期まで一年間続くそうで、俺の部屋にもちび蜘蛛たちが来てくれるのでありがたくそのままにしている。
――――毎日違う形の網が掛けられてるから、毎日誰かしら網掛けしてるらしい。
知ってる?蜘蛛の網って蜘蛛の種類や、時には同じ種類……オニグモやツチグモでも違うことがあるそうだ。
網に隠れ帯と言うギザギザの模様がついていたり、ジョロウグモ姐さんだと網を3重奏にしたり、ドーム型の網が逆さまに吊り下がっていたり。蜘蛛の網も、奥が深いわぁ。最近は誰が網掛けしたでしょークイズもやってるんだ!
そしてそんなありがたいお部屋で冬籠もり準備を進めるありがたい蛇さんたち。
「妖怪だから、完全な冬眠じゃないの。半冬眠かな?寝る時間がいつもより多くなるの」
と、アオダイショウさんが教えてくれる。
「……カラスヘビさんも?」
「そうだね」
カラスヘビさん、今より睡眠時間が増えたらどうなるんだぁ――――――っ!因みに昼行性らしいのだが、カラスヘビさんはお昼でもだらだらしてる。ご飯とおやつの時は起きてくるけどねー。
「あ、ビャクくん見て見て」
「どうしたの?」
アオダイショウさんが後ろの蛇体を示す。
そこにはもっふもふの……。
「ちびコンちーっ!?」
真っ白毛並みのちびっ子狐耳6本尻尾の妖怪がいたのだ。
「冬になると寒いから、うちに避寒にくるんだ。こぎつねちゃん、ビャクちゃんだよ?」
そうアオダイショウさんが告げれば、こぎつねちゃんがひょこっと耳を動かしながらとことことこちらにくる。
「撫でてあげてね。喜ぶの」
アオダイショウさんがそう言うのなら。
なでなで。
「きゅぅ~んっ」
かっわえぇっ!!
なでなで。
「きゅん、きゅんっ」
やっばかっわえぇっ!!
野生のキツネには触れないから、妖怪ならではの特典っ!みんな、くれぐれも野生のキツネには触らないように!あと、妖怪のキツネさんを見かけたら、もふっていいかはちゃんと確認しようね!
「あぁ~~っ!かわいいなぁ~~、こぎつねちゃ~んっ!ちびコンちー!」
「こんち?」
「9本しっぽのもふギツネさんだよ~」
「もっふ~~~っ!?」
あれ、何かぶるぶるしてないっ!?
「九尾は強い妖怪だから、子どもには恐いの」
アオダイショウさんの言葉にハッとする。
「大丈夫だって!何があっても蜘蛛女!蜘蛛女は強い!ねっ!?」
こう言う時はジョロウグモさんたち蜘蛛女の威光をお借りしよう。
「……うんっ!!」
どうやら、納得してくれたようなので何よりである。
――――――そんな中……
「ビャクちゃん、お客さんだって」
桜姐さんが呼びに来てくれた。俺に、客?害のない妖怪ならそう言う前に勝手にトコトコ入ってくるけど。何なら朝起きたらいつの間にか冬籠もりの準備してるし。
一体誰だろうと玄関に向かえば……
「諭吉くん!?あとでっかいコンちー!」
まさかの諭吉くんとコンちーであった。
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