擬似ハーレムを作ろうと4人同時にレンタル彼女したら、全員知り合いで地獄絵図になって草

田中又雄

第1話 冴えない男の頭が冴え始める

「い...いい人だとは...思うけど。...ごめん。その..,れ、恋愛対象としては見れないかな...」


「...そう...だよね!」と、乾いた声で笑う。


 いつだって断られる理由はこれだ。

男友達も多いが、女友達もそれなりに居る。

 2人で遊んだりすることもあるのだが、告白すると「え!?私のことそういうふうに見てたの!?」とか、「友達にしか見えないわ笑」とか...。


 結局、そこ止まりの男である。


 そうして、高校の卒業式この日も見事に撃沈するのであった。


 ◇


 ジリリリリリリリ!!


 夢の奥で鳴り響く目覚まし時計。

薄い意識の中、何とか携帯のアラームを止めようといじっていると、顔面に携帯が降ってきて見事に顔に命中するのだった。


「...って...」


 さぁ、最悪の目覚めをしようじゃないか。


 のそのそと芋虫のように這いつくばりながら、改めて携帯を見ると【9:15】を指していた。

 一講目はもう間に合わねーなー。


 入学してからわずか1週間で見事にクズ大学生を全うしていた。

 いや、俺は悪くない。

自主性を大切にする学校が悪い。


 社会や学校に文句を垂れながら、いつものように味噌汁を作り始める。

 我が家秘伝の味噌を使った味噌汁。

これを飲まないことには1日は始まらないと言っても過言ではない。


 味噌を取り出すだけで涎が出る姿はまさにパブロフの犬そのものである。

 そうして、熱々の味噌汁をお玉で取り、テーブルに置いて手を合わせる。


「大豆様、感謝感謝...なんつって」


 こうして、1日が幕を開けるのだった。


 ◇


 頭をボリボリと掻きながら先に講義室にいた友達の西岡にしおかに声をかける。


「...おっす」

「お前、早速1講目サボってんじゃねーよ」と、やや睨まれる。

「悪い悪い。夜更かししすぎた。マジ深夜アニメおもろすぎ」

「...典型的ダメ大学生だな」


 この西岡にしおか大吾だいごという人間を一言で表現するならば普通である。

学力も、顔面も、運動神経も何もかもが普通レベル。普通の中の普通。THE普通。


 まぁ、そんな普通なやつの隣にいる俺も普通の人間であることは間違いないだろう。


「まさか、まだを引きずってるなんて言わねーだろーな?」

「...別に俺が何を引きずろうが関係ないだろ」

「大有りだから。お前が居ないせいで1講目変なやつとペア組まされたじゃねーか」

「来週は出るよ」

「ばっか、あのペアは解除不可なんだよ」

「...」

「つまりお前も変なやつとペアを組まないといけないってことだ」


 そうして、教授の話を聞き流しながら話を続ける。


「んで?ぶっちゃけまだ引きずってんだろ?」

「だから...別にいいだろ」

「そんなお前に一ついい話を持ってきてな」と、携帯の画面を俺に見せる。


【レンタルしてみませんか?】という文字の横に可愛らしい女の子。


「...レンタル彼女?」

「そそそ!興味あるだろ!」

「ねーよ。金払ってそんなの...虚しいだけだろ」

「そう言わずにさ!紹介したら5,000円分のクーポン貰えるんだよ!俺とお前どっちも!」


 どうやらこれが目的らしい。


「いやー、この前一回試しで使ってみたらハマっちゃってよー。好きとか言ってもらってよ!更に、色んな女の子に手を出しても浮気にならないとか天国だぜ!」

「人としては終わってると思うが」

「なんだよ、つれねーなー!」


 その言葉を聞いて実は揺らいでしまっていた。

 レンタル彼女を題材にしたアニメも見たことがある。俺もあんなふうにもしかしたらレンタル彼女から、リアルの恋人になったり...?なんて夢見るのは童貞故のものだろうか。


 卒業式のあの日...、俺は好きな子に告白して見事に撃沈した。

 告白前からもし付き合ったらと想定し、色々なことを考えてアルバイトをしまくって、20万円ほど貯めていたのだった。

つまりお金の面はクリアということだ。


「...いやいや、ないない」と、それでも俺は否定する。

「とりま、何個か使ってるサイトの招待だけ送っておくから!」


 その後の授業など一文字たりとも耳に入るわけがなかった。


 ◇その日の放課後


【元気で積極的な女の子!】

【大人しくて可愛い女の子!】

【優しくて距離が近い女の子!】


 家に帰るとすぐにサイトを見ちゃってる俺が居た。

 確かにどの子も可愛いな...。


 多分、この時には既にレンタルすることは決まっていた気がした。

 大吾から送られてきたサイトで色んな子達を見ながら、テレビをつける。


 すると、画面には【本日更新!《4人の彼女達》】と書いていた。

 あーそうか。今日は月曜日か。ということは、《ヨニカノ》の更新日ということだ。


 20世紀最高ラブコメと評されているこのアニメを簡単にまとめると、主人公と超個性的で超魅力的な女の子達によるハーレムアニメである。

 一人一人でアニメ1作品作れるんじゃないかっていう濃いキャラが4人も居るなんて贅沢すぎる作品だ。


 そんなアニメのタイトルを見た瞬間にあることを思いついたのだった。


「...擬似ハーレム...作れるんじゃね?」


 男であれば一度は憧れるシチュエーションである。

 確か一つのサイトで同日で予約できるのは1人まで。しかし、複数のサイトを使って同日に予約したら...どうなるのでしょうか?


 答えは至って単純。合法擬似ハーレムの完成だ。


 どうせやるなら徹底的に。これが我が犬山家の家訓である。


 このまま恋人が出来ないなら、いっそ振り切ってやろうぜ?


「...やってやろうじゃねーか」


 そうして、俺はまず1人目を選ぶことにした。


 どんな子がいいだろうか...と、探していると自分のタイプにドンピシャな女の子を見つける。

まさに初恋の女の子にそっくりな女の子だった。って、そんなわけないない。


 ちょっとやさぐれているというか、ヤンデレ感が漂うダウナー系黒髪ロリ少女。

 笑顔が当たり前のこういう写真で無表情なところも非常にグッドである。


 ということでまずは彼女を指名する。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093077531816978


【4月10日 AM10:00〜】


 2番目の女の子を探す。

やっぱり王道の清楚系女の子は外せないよな。


 うちの高校にいたあの清楚美人で有名だった先輩に似ているな...。

 って、そんなわけないか。ないない。


 うん。この透き通るほどの透明感。これぞ、レンタル彼女と言わんばかりの完璧なスタイル。

胸も...結構大きそうである。

つまりは最高である。ぐへへへ。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093077531904317


【4月10日 AM10:00〜】


 3番目はやや変化球寄りの女の子がいいな。

ということで、派手な髪色のこの子にしようかなと思う。


 どことなく義妹似ている気がしないでもないが、こんな派手な髪色ではないし、そもそも一回しか会ったこともないので記憶も曖昧であるが、ないない。あり得ない。


 こういう子こそ意外と尽くしてくれるタイプだったりするんだよなー。てことで採用。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/my/news/16818093077531857501


【4月10日 AM10:00〜】


 最後の4番目は...。

...気のせいではないよな。

まさか、こんなこところで再会することになるなんて...。


 昔と変わらないその見た目...。

間違いなく俺の幼馴染であった。


 なんであいつがこんなところでこんなことをしてるのか...。聞かなければならなかった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093077531949728


 【4月10日 AM10:00〜】


 そうして、月日は流れて当日を迎えることになるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る