第10話:(4/4):高位貴族の陰謀(影の騎士)
悠人が核心をついた。「もしかしてこの先の階層も同じく異世界に繋がり、階層ごとに異世界があるのか?」
リリスはしみじみと頷いた。「もし空があって風が吹き雲が流れ、昼夜があるなら、その可能性は大きいわ。恐らくこの世界の人々は異世界という概念がないのかもしれないわね」
そうだとしたら、この世界はかなり複雑に入り組んでいる。他の地域にあるダンジョンも同じなのか不確かではあるものの、今は目先の階位上昇に向けて邁進するのみだった。
その夜、悠人たちは慣れない環境の連続で疲れ果てていたため、次の階層への進行は翌日に延期し、近くの宿へと足を運んだ。
翌朝、悠人は宿の窓から外を眺めながら感心した。「本当に夜が来て朝もあるんだな」彼の声には新たな世界への驚きが込められていた。昨日リリスから異世界だと聞いていたとしても、地上から入ってきた以上、どうしても『地下』という認識が頭から離れなかった。
アイラは彼の隣でうなずきながら言った。「ええ、そうね。ダンジョン内は怖くて住めないという人たちもいるけど」リリスがその言葉に同意するように加えた。「魔獣狩りを生業にしている人以外は、住みたがらないかもしれないわね」
たしかにここは、効率だけを考えたら最高の場所だ。昼夜もあり空気は流れ、一見して地上と同じ環境で今までの世界と繋がっていると思える。どうしてこのような地があるのか不思議でならない。リリスはこの先の階段を降りた先も異世界だというが、果たして……と悠人は深い思考に陥りそうになった。しかし、今は重要なことではないため、その疑問はすぐに頭の片隅へ追いやった。
悠人はふと思った。「襲撃は――なかったな」リリスはすぐに応じ、「まだ油断はできないわ」アイラも重ねて言った。「ここでもし襲撃が起きれば、犯人探しは徹底して行われるはずよ。なぜなら、皆の安全を脅かすからね」
その後、彼らは宿屋に併設された食堂で軽く食事をとり、十六層の「暗黒の森」へと向かうために下り階段を降りていった。十五層だけは十四層への上り階段のすぐ隣に十六層への下り階段が存在していた。
森を進む途中で、悠人たちは「十一人の勇者」の中でも特に慎重な「影の侯爵」の配下に遭遇する。この敵は二メートルを優に超える背丈で赤黒い甲冑に身を包み、礼儀正しくお辞儀をしてきた。
「ご機嫌よう。十一人の勇者の『影の侯爵』より仰せつかった赤の騎士ゲールと申します。以後お見知り置きを。といっても最初で最後の挨拶になるかな」と彼は不敵な笑みを浮かべながら大剣を召喚し、悠人の左胸を突然貫いた。リリスは大剣の腹で殴られ木に激突し、アイラは怒りに任せて「暗黒卿!」を呼び出すものの腹を貫かれてしまった。
敵は彼らを倒した後、不適な笑顔で「愛おしいほどの死があなたを呼んでおります」と言い残し、煙のように消え去った。
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