第7話:(2/2)リリスの罪(罪と償いの旅路)
当時――。
クルスの力を分けて欲しい発言に対して、リリスはため息混じりに答えていた。「そうね……。ちょっと考えてみるわ」とリリスはいつものセリフを繰り返すが、その声にはほのかな揺れがあった。今回の話は彼女にとって格別だったからだ。クルスが提案すると、彼女は一瞬驚いた表情を浮かべた。「リリスさえ良ければ、僕からもリリスが黒猫の状態でいられることを女神様にお願いしてみるよ」
黒猫の姿になることを愛らしく思うリリスは、突然のクルスの申し出に、心からの喜びを感じていた。猫としての自由な時間は彼女にとって、生き生きとした瞬間だった。「そしたらさ、こういうのはどう?」クルスの言葉にリリスの耳は一層傾く。
「何かしら?」彼女の声に好奇心が宿る。
「僕が女神様にお願いして、女神様が承諾してくれたらそのお返しにタロットカードの力を分け与えてくれることをね。どうかな?」
リリスは少し迷った。彼女の内心は複雑だった。黒猫としての時間は確かに魅力的だったが、その代償として何を与えるかは重大な決断を要した。リリスは猫としての自由な生活に憧れていた。彼女は、戦いと責任から解放され、無邪気に過ごす時間を切望していた。しかし、彼女はクルスの言葉に心を揺さぶられ、彼が語る未来を信じたかったのだ。それでも黒猫になる魅力に抗えず言ってしまった。「いいわ。それがもしできたらしてあげるわ」と彼女は静かに言った。
「本当に? この神界で嘘はよくないよ?」クルスの言葉に、リリスはきっぱりと応えた。「ええもちろんよ」
クルスは心からの喜びを表して駆け出し、リリスは一人残された。彼女の心は喜びと同時に少しの不安を抱えていた。猫としての自由が彼女にどんな代償を要求するのか、その思いが彼女の心をかすかに曇らせた。
こうしてリリスは、突然猫に変化したことを体験する。
やがて、勇者たちが勢揃いして現れた。彼らは、リリスに対して約束通りの報酬を要求した。リリスは深呼吸を一つして、約束を果たす準備を整えた。「わかったわ。約束どおり与えるわ。一人ずつ並んで」と彼女は指示した。勇者たちは綺麗に整列し、その瞬間、リリスの過去の決断が未来に大きな影響を与えることになる。
「リリス、ありがとね」とクルスは無邪気な笑顔で言ったが、その言葉には未知の重さがあった。この時までは、まだ何も問題ないだろうとリリスは思っていた。
最初の一人には、「小アルカナはカップキング + 大アルカナは恋人」を付与した。まさに女神と恋人同士の勇者だ。この技は、使用者が他の次元に瞬時に移動し、敵の攻撃を回避することができる。また、愛と絆の力を借りて、魔法を強化し、より強力な攻撃を放つことが可能だった。使用者は敵の攻撃を受けずに、次元を超えて瞬時に別の場所へ移動。その後、恋人の力を借りて魔法を強化し、敵に向けて強力な魔法攻撃を放つ。この技は敵を惑わせ、攻撃を回避しながら、同時に強力な攻撃を仕掛けることができる強大な力だ。しかもその恋人は女神だ。女神の力を借りて魔法を強化するなど前代未聞の大事件だ。
次の勇者には「ソードクイーン + 吊るされた男」を与えた。この技は、使用者の魔法に真実の力を与え、敵の防御を貫通する効果を持つ。また、吊るされた男の洞察力を借りて、敵の弱点を見抜くことができ、その部位に致命的な一撃を与える。この技は敵の防御を無視し、強力なダメージを与えることができる。技名は「真実の刃」。
このようにして十一人にそれぞれ分け与えてしまった。
リリスがタロットカードの力を分け与えたその行為は、後に「十一人の勇者」と「悪徳の女神」として知られるようになる。与えたカードの力が彼らを変え、祇園悠人との旅で、リリスはその過ちを正すための重い使命を背負うことになる。
その間、多くの者が勇者のタロットカードの力により、苦しめられて死んでいった。不幸中の幸いなのが、全て正位置でしか使えずカードの交換も追加もできない物にしていた。そのおかげでさらなる被害の拡大は免れた。
この罪の意識に苛まれるリリスは、自身の過ちを償うため、悠人との旅を通じて再び世界のバランスを取り戻そうと決意する。リリスは、自分の行動がどれだけの影響を及ぼしたかを知り、心から反省していた。彼女は、再び世界のバランスを取り戻すために、自らの力を使い、異世界での混乱を収めようと決意した。
悠人はリリスの話を聞き、彼女の罪をどう受け止めるかで葛藤する。しかし、同時に、リリスが持つ豊富な知識と経験が、自身の成長に不可欠であることを理解し、彼女を仲間として完全に受け入れることを選ぶ。リリスもまた、悠人の純粋な心と強い意志に触れ、かつての自分を見つめ直す機会を得る。
悠人とリリスの関係は、試練と共に深まっていく。彼女が教えるタロットカードの秘密は、彼らの前に立ちはだかる数々の困難に対する鍵となり、同時に彼女自身の罪を償う道となる。二人が共に目指すのは、過去の過ちに立ち向かい、自分自身を創造し過ちを正すことだった。
悠人は、リリスの話を聞く中で、自分自身の役割や未来に対する考えも深まっていった。彼はリリスの過ちを知りながらも、彼女を受け入れ、一緒に未来を築いていく決意を固めた。リリスもまた、悠人の存在が自身の償いの道を照らしてくれることを感じていた。
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