92 告白(2)
心臓が、バクバクする。
「それで僕、ずっとみかみくんに憧れてて」
断らないといけなくて……。
それで…………。
「みかみくんみたいに、なりたいって」
「………………え?」
えっと…………なりたい????
礼央は、照れたように「へへ」と小さく笑った。
なりたい???
“一緒に居たい”じゃなく???
だって、好きなら。
好きなら。
相手になりたいんじゃなくて、一緒に居たくなるもんなんじゃ……???
あ。
そうか。
れおくんは、『好き』だって言ったんじゃないんだ。
『憧れ』だって言ったんだ。
え、それって。
つまり、恋愛対象じゃなくて。
俺の事が好きなわけじゃなくて。
ただの……憧れ…………。
目の前が、真っ白になる。
え、そんなの。
だって……、そんなの。
じゃあ、今までのって……。
……全部、勘違い…………。
かぁっと顔が熱くなる。
「そ、そっか」
そっか…………勘違い。
今まで、れおくんが照れてるような気がしたのも。
恋愛として見られていると思ったのも。
キス……されそうになったような気がしたのも。
全部。
そんな意味じゃなくて。
ただ、人として好感を持ってくれているというだけの。
尊敬できるという意味の。
恋人になりたいとは違う感情の。
そう気付いた瞬間、亮太の膝に、パタパタと水滴が落ちた。
やべ、俺、泣いて……。
堪える間もなかった。
ただ、瞳に涙が溢れる。
こんなの、れおくんが困るだけなのに。
なんか、わけわかんなくなって。
パタパタと零れ落ちる涙に、礼央の表情が固まる。
「みかみ、くん……?」
ああ。ほら。れおくんが困ってる。
「僕…………何か言って………………」
「ごめ……」
涙を拭いながら言う。
「な、んでもな……」
なんでもないのに。
本当になんでもないのに。
涙が止まらない。
「帰、……帰ろ?」
なんとかそう言って、足を机にぶつけながらガタガタと立ち上がる。
礼央は、驚いた表情をそのままに、
「うん……」
と返事をした。
涙は止まらなくて、前がよく見えなくて、フラフラと歩く。
礼央はそんな亮太を、後ろでじっと見つめた。困惑を隠しきれないまま。
ガタン、と亮太が机にぶつかりバランスを崩したところで、礼央がその腕を支える。
「……っ」
礼央は、もう何も聞くことも出来ないまま、黙って亮太の手を引いた。
いつかの雨の日とは、立場を逆にして。
亮太は、涙をポロポロと流したまま、礼央に手を引かれて歩いた。
夕陽に染まった学校の廊下。
あれだけ鮮やかだったオレンジは、次第に重い色へと変わっていく。
何の音もしない静かな廊下に、ただ、二人の足音と、亮太の鼻を啜る音だけが響いた。
◇◇◇◇◇
みかみくんの方が泣いちゃう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます