62 文化祭(3)
2日目は、クラスみんな、どうやらそれぞれが思う場所にいるようだった。
部活での出し物び参加している者もいるようだったし、客として文化祭を堪能してまわる者も多かった。
亮太、礼央、ケント、サクの4人は、今日はすっかり4人の時間を堪能していた。
「うまい」
「うまいね」
二人並んでアイスクリームに勤しんでいるのは礼央とケントだ。
この二人は、こういうちょっとしたところで、仲がいい。子供っぽいとでも言うか、なんと言うか。
「バド部は文化祭何か出してるの?」
「ああ」
亮太が持つフライドポテトに手を出しながら、サクが答える。
「あっちは喫茶店。もう少ししたら、1、2時間手伝って来る」
「ムッキムッキ喫茶店!みたいなやつ?」
と、ケントが茶々を入れる。
「いや、もっと、イケメン〜喫茶店〜パンケーキ〜みたいなやつ」
「あぁ。バドのやつ、長身でシュッとしたやつ多いからなぁ」
「んで、店員にバドで勝つと、パンケーキがタダになる」
「いいじゃん」
アイスを食べ終えたケントがくるりと振り返った。
「行こうぜ〜。勝つわ」
ケントはノリノリだ。
「いや、流石に部員はダメでしょ」
「お前ら居るじゃん。弟子だろ」
そう言いながら4人は、バド部パンケーキカフェへ意気揚々と出かけて行ったのである。
出迎えてくれたのは、カマーベストに身を包み、頭をピッチリとオールバックに固めた名塚先輩だった。
「バド部へようこそ〜」
にっかと笑顔を見せる名塚先輩は、確かに女子にウケそうだ。
教室の中を見ると、席はいっぱい。さらに数人が並んでいて、なかなかの盛況のようだ。
「お前らどうする〜?タダ対決するなら、隣」
示された教室は、カメラが数台設置してある、バドが準備してある教室だ。どうやら、カフェの方のモニターに映しているらしい。
「もちですよ」
と、腕まくりをしたケントだったけれど、一瞬だった。
「は…………?」
「へへん」
と笑ったのは名塚先輩だ。
一振りどころか、シャトルを目で追う事も出来なかった。
「マジかよ……」
その後に続いた、礼央も亮太も同じだった。
「この人大人げないぞ……」
最後に、流石にそうはならないだろうと思われるサクが登場したわけだけれど。
借りたラケットを持つなり、
「俺……自分の持ってきていいですか……」
と力無く言った。
「良いわけないだろ」
と名塚先輩が笑う。
「だって……これ……質悪くないすか」
「しょーがねーだろ。経験浅いやつはどうしても金魚掬いみたいに端で使うからあっという間にダメんなるし。ちゃんとしたやつ貸すわけいかないの」
そんなわけで。
流石にサーブには食らいついたサクだったけれど、シャトルは予想外の方向に飛び、あっという間に負けてしまった。
そこに君臨したのは、誰よりも背が低いくせに、誰よりも偉そうな男、名塚だった。
結局、4人は、クリームたっぷりのパンケーキを、普通に楽しんだ。
「うまい」
気を取り直してパンケーキを食べる4人を構いにきたのは、他でもない名塚先輩だ。
「だろうだろう。俺がクリーム乗せたから」
「先輩、ういーっす」
「流石、名塚先輩のクリーム、美味しいなぁ」
「チョコソースも先輩ですよね。美味しいです」
「先輩、あれやってくれないんすか?『おいしくなぁれ♡』みたいなの」
「まかせろ」
名塚先輩は、すかさず蜂蜜のボトルを持つと、裏声でこう言った。
「おいしくなぁれ♡もえもえきゅん♡」
4人全員分のパンケーキに丁寧に蜂蜜をかけていく。
後には、「あれには勝てないわ……」と頭を振る4人の姿があった。
◇◇◇◇◇
そんなわけで、ほのぼの文化祭回でした。
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