49 夏休みってやつは(3)
そう言うと、礼央は三冊ほどお薦めを紹介してくれた。
「図書室にも、読書感想文コーナー作ったからさ」
「課題図書とかあんの?」
「うん。図書室の冊子に、課題図書のあらすじなんかも書いてあるよ」
「便利じゃん。俺、部活前に寄るわ」
サクがそう言うと、ケントは真面目な顔で、
「じゃあ俺はこれにするわ」
と、礼央が薦めてくれた本の中から、一冊を選んだ。
そんなわけで、まだ本すら決まっていないのは亮太だけになった。
その日は、礼央の宿題を眺める会のようになってしまう。
宿題は、小学生の頃の宿題とは違い、写せばいいというものでもない。
とはいえ、礼央の宿題は大いに参考になり、結局定期的に4人で勉強会をすることになった。
その日は、最終的に、いつも通り、ケントと礼央のゲーム大会で終わった。
途中までは4人でやることもあったのだけれど、ゲームに対する熱意はケントと礼央には勝てなかったというわけだ。
その夜。
礼央の連絡先が入ったスマホを眺め、ベッドの上で考えあぐねる。
れおくんが図書室にいつ行くか、聞いてもいい、よな?
それくらいなら、おかしくはないと思う。
けど、“好きな人”からの通話かぁ……。
それは、普通はけっこう大変なことなんじゃないのか?
勘違いされたり……しない、よな。
考えすぎだと思う。
考えすぎだと思うのだけれど。
まあ、メッセの方がいいか。
と、メッセージを送ることにした。
『れおくん。次、図書室行く予定ってある?』
送ってから、じっと見つめる。
……まさか、すぐに既読にはならないか。
待つでもなく待って、返事が来たのは1時間後のことだった。
『明後日の午後にまた行くよ。13時〜16時』
と、とくに変哲のないメッセージが返ってくる。
事務的なメッセージ。
よかった。
やっぱりこれなら深い意味には取られないみたいだ。
亮太にはわからなかった。
礼央がどれだけその返事を書くのに時間を費やしたのかは。
ティトン、と礼央のスマホの通知が鳴る。
……返事、来た。
スマホの通知画面で、メッセージの内容を見て、デスクに突伏する。
なんて返事しよう……。
とりあえず、自分を落ち着かせるために数学の宿題に取り掛かる。
こんなことをしていても、メッセージが気になって勉強なんて手につかないのだけど。
何か、余計な事を書けば書くほど、気持ちが見えてしまいそうで嫌だった。
バレたら、きっと、友達としても居られなくなる。
メッセージが来たこと自体が嬉しくて。けど、変なことを書いてしまいそうで混乱した。
「はぁ〜〜〜………」
大きなため息を吐く。
そして礼央は何度も書いては消し、送るか送らないかまでひたすらに悩んだ挙げ句、亮太の、
『じゃ、その頃行く』
という返事に、
『また明後日』
と返した。
◇◇◇◇◇
夏休みにも会えてよかったね!
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