29 練習開始!(2)
その日から、亮太はバスケの勉強を始めた。
プロの試合もいくつか見てみたし、バスケの本も何冊か読んでみた。
けれど、思う。
言葉を知っているのは大切だ。
けれど、これはどちらかと言うとレクリエーションで、所謂競争ではない。
試合そのものだって、ルールこそそのまんまだけれど、1日で全てが終わるようかなり時間を短くしてある。
つまりもしかすると、バスケのテクニックより、選手について解説すべきなんじゃないか?
バスケの基本的なルールなら、1年の時の体育でみんなやっているはずだし。
つまり、練習に関しても、バスケに拘る必要はないのだ。
「色々考えたんだけど、れおくんの実況、やっぱ続けたいと思ってさ」
フィッシュサンドを食べながら、亮太が言う。
曇り空の下、相変わらず4人は屋上に居た。
「あ、うん」
あれから何度か実況の題材にされ、礼央はなんだかんだで昼食時の実況にも慣れてきていた。
よくはないけれど、亮太のためでもあるし、練習に付き合うと言った手前断る気はないようだ。
「雨の多くなってきた6月!さて、今日もれおくんの昼食が始まります。実況はわたくし、ケントと、」
「解説の亮太でお送りしたいと思います」
「今日も天気が悪いようですね。解説の亮太さん」
「そうですね。とはいえ、雨予報が曇りで留まっているので、それほど悪い天気とも言えないでしょう。ただ、流石に屋上で昼食は少し寒かったですね」
亮太は亮太で、練習の甲斐もあり、解説する事に慣れてきていた。
「教室では実況練習も出来ませんからね。出来れば屋上がいいという亮太さんとれおくんの希望の意図はわかります。おおっと!?」
礼央がお弁当を開けると同時に、ケントが叫んだ。
「弁当が開けられたー!」
「はい。あの黒いお弁当箱は見た目より容量が入るんですよ」
そう言った亮太は、パラパラと資料の紙をめくる真似をする。
それだけの真似が出来るほどには慣れてきていた。
「あの弁当箱、なんと900ml入りますね」
「意外と食べますね」
「まあ、サクの弁当箱が一回り大きいですからね。わたしたちもあのヒョロっこい身体に小さな弁当で、飛んで行ってしまうんじゃないかと不安に思ったこともありましたが」
「ちゃんと食べているというわけですね」
ふと名を呼ばれ、実況に興味を示したサクが、少し笑った。
「フライを口には・こ・ぶー!あのフライは……!?」
「アジフライでしょうね。匂いがここまで届いています。まあ、そろそろ旬ですからね」
昼食を食べ終わる頃には、礼央はすっかりおとなしくなっていた。
「さ、流石にちょっと、恥ずかしい、ような」
照れている。
これも、段々と亮太が上達してきた証という事で、いいだろうか。
ちょっと赤くなって目を逸らす礼央に、亮太は「ははっ」と笑った。
◇◇◇◇◇
みかみくんは、けっこうれおくんの照れ顔が好きなのでは?
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