高地から

@aka_millky29

第1話 真反対 *(和香)

チャイムが鳴り、走る音は校舎へと向く。

「はぁ~、次何だった?」一人の声がどこかでする。

「国語じゃない?」

「あー発表か…」

「うん…」

沈んだ表情で校舎へと入っていく生徒。

それを上から、校舎の中からぼーっと眺めている女子生徒がいた。

名を矢島和香。

学年一しっかり者で頼れるリーダーと慕われる存在だった。

和香は正直あまり嬉しくなかった。そのおかげで期待される。学級委員とかも勧められる。

でもそのような誘いは全て断っていた。

いくらしっかりものだと言っても和香はまだ五年。

上には六年がいるんだから、と妙な暗示をかけて。自分でも意味不昧な思い込みだったが、それくらい思っていないといけないくらい、何故か期待度が高かった。

下を、はしゃぎふざける男子たちが通る。

その中でも一際目立っているのは、長野英というお調子者でイタズラ好きな男の子。

長ズボンとパーカーという服装で、周りの短パン半ズボンに比べるとあまり活発的には見えない。

しかし、遅れを足らず皆と騒がしく、校舎へ向かって駆けている。


和香は彼のことを自分と正反対だと思っていた。

そして英も、和香は自分にはなれない存在だと思っていた。

正反対を感じる、二人の生徒。其処へとある悪戯を起こそうと企てる者がいる。

名をホヨと呼ばれる少女が、正にその本人。

黒いローブを纏い、白に近いクリーム色の髪を肩下まで下げる彼女。

宝石の様なものが、中に着る白いシャツの襟元で、輝いている。

いかにも魔法使いの様な格好。

歳は12歳ほどに見える。

彼女は暗い隠れ部屋のような場所で、床下に続く穴の様な所に映る世界を、透明プレート越しに眺める。

「うん、この二人、とても良い!」

はしゃぐ様にそういうと、怪しげな笑みを浮かべ、何やら作業を開始した。



私、和香は憂鬱な気分で教室に入った。

次は国語の発表…また、先生に何か言われる。

もちろん褒めてくれてるんだ、先生は。

だけどしんどい…周りから、私は何か違うところにいる存在のように扱われる。

自分とは違うって思っているように接される。

何より『一緒』に思ってくれないのが悲しかった。

私は何故か小さい頃から、しっかり者だと言われてきた。

もちろん演技とかじゃない。もし演技ならとっくに辞めている。

両親の仕事はどちらとも、常に精神冷静でいないといけない仕事だから。

それに適応できている両親の性格と似てしまったのかもしれない。

いくら慌てていても表情に出したくない、出せない。

どれだけ緊張していても、平然としゃべってしまう。

間違っていると思うことはつい注意してしまう。

これら全てがまとまって、そういうイメージになってしまったんだと思う。

はぁぁ。

悲し…。

そんな私と比べると、長野ってどんだけ自由なの…。

悪戯したって先生からは叱りながらも苦笑される。

まあそんなにひどい悪戯じゃないのもあるだろうけど?

それでもなんか…ずるいよ。

授業中だっていつもふざけてて、私が注意すると、チラッとこっちをみて続きを始める。

いろいろな面でムカつく。

「んーじゃあ初めは和香っ!どうぞー」

最悪なタイミング…なんで私が最初なの?

出席番号順とかの方がわかるけど、全然違うのに。

それに今回のは…長野に落書きされたところがある。

見るだけで嫌な記憶が戻る。

マーカーで描かれて、めっちゃ謝ってきたんだけど…じゃあしないでよ。

その時、思わず思いっきり怒鳴り返した。

そして

「こわっ」とか言われて。

思い出すだけでも腹が立つ。

はぁ…。

一日だけもし変われたらなぁ。自分の性格が。

発表は無事終わったが、何も気分は晴れない。

休み時間の後は体育か…苦手じゃないけど、秋だしなぁ。

寒いのはあんまり好きじゃない、何方かと言えば暑い方がまだマシだ。

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