◆第一章 逢着
―― 窓。これは、窓だ ――
透明樹脂がはめ込まれた小さな窓。その窓に
―― あぁ ――
処理が進むにつれて、私に
データが次々と更新されて古い情報が
電気系統 ―― 回路の通電並びコンデンサ、バッテリー、異常なし。
駆動系統 ―― 関節、筋繊維の伸縮運動、反射運動、異常なし。
感知系統 ―― 視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、異常なし。
神経系統 ―― 感知系統から電子神経回路網への信号伝達及び駆動系統へのフィードバック、異常なし。
ハードのチェックが次々と終了し、ソフトの注入へと切り替わる。様々な適合デバッグが進み、最適化されて行く機械仕掛けの脳と身体。ソフトとハードの整合性が証明されると、最後に現代のパラダイムにおける思考回路プログラム『raison d'être』(レゾンデートル)が開始される。
―― 私はこの船に配備されたアンドロイドである ――
―― 私は人類の
プログラムは正常に終了し、私の存在が承認される。そして、長らく抜け
しばらくすると一人の少年が
彼は私をちらりとも見ず操縦席に座り、
注意を引こうと一つ
「大丈夫です。私が
柔らかな落ち着いた
あのーもしもし、と
聞くに彼は航路を変えたいと言う。
彼は静かに私を
私の意識は途切れた。
********************
これを使うのはためらいもあるけど時間が
それに ――
行けば分かる気がするんだ。
あの時、君が何を言いたかったのか。
だから ――
********************
一瞬ノイズが映り ―― 意識を取り戻すと、私を
私は猛烈に抗議する。
彼は反省する
それを目にした私は背筋が凍った。
「 ―― 待って下さい」
「わ、私には人権に
彼はお
「どうか早まらないで下さい!」
声を
「権限は解除されたました!私を
と最後は強く目を閉じ、
その瞬間足音がピタリと止み、ひと時の
私は片目を開けて彼の
「 ―― ヒューマノイドインターフェースは正常に機能しています」
彼は私を
「つまり、話せば分かるということです」
私は
「 ―― はい。航路の変更は可能です」
と答えると、ようやく
胸を
―― ジェットの果てへ ――
彼は強くはっきりとそう言ったが、
現時点ではおおよその方角しか分からず、目的地は
すったもんだの
********************
声がする。でも、何と言っているのかは分らない。聞き取れぬ
―― 危険思想だ ――
―― 心に問題があるのだ ――
――
「僕はただ、
―― 自由等と、なんと無責任な ――
―― 倫理基準がずれている ――
―― 危険思想だ ――
―― 心に問題があるのだ ――
――
――
これは記憶だ。
記憶の中を
あぁ、そうか、夢を見ているのか。
そう自覚すると世界は
*
良く通る教師の声で
「えー先に言った通り、初期宇宙には水素、ヘリウム、そして少量のリチウムとベリリウムしかなかった。だが、現在の宇宙では百を超える元素が確認されている」
と
―― それに比べて ――
「なぜこれほど多様な元素が存在するのか?その答えは
―― 僕はせせこましく監視された、この
「しかし、生まれるだけでは元素の
――
「それは『ジェット』と呼ばれる現象だ」
――
「ジェットは
―― 言われるままに流されて ――
「我々の惑星系の
―― そこに意思はなく、何も存在しない真っ黒な世界で ――
「そうなれば周囲の星々を、むろん私達が住んでいるこの星や月も含めて粉々に破壊する。粉々にされた物質はジェットにより放出される。その方角は大よそであるが、
―― 自分の
ようやくチャイムが鳴り、授業の終わりを
窓から見える丘の景色を、僕はしばらく
ある日のこと。
特に
息を切らし、もつれる
なんとも心地が良く、寝たまま大きく伸びをする。手にゴツゴツした何かが触れた。きっと樹の根っこだろう。目を閉じたまま感触だけに意識を集中する。
僕は ―― 自由だ。
ひと時の間、何も考えず自由に身を
驚き、
――
彼女はひとしきり笑い終えると、ゆっくりと立ち上がり、あどけない
―― その瞳は
突然、柔らかな風が吹いた。
黒髪は風に乗り、日の光を浴びながら
「何をしていたの?」
と、
完全に思考が停止していた
「 ―― 自由を感じていたんだ」
と答えた。
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