恋愛想〜二つの音が交差する〜

@sigure22

第1話 可憐な少女

「高校生になっても何も変わらない日々」


 独り言を呟く、周りに誰もいないから何も聞かれてはいなかった。

 聞かれても別に問題がある訳でもない、

 仮に問題が合ったとしても変わらず、退屈な日々なのは変わりない。

 腕にある腕時計の時間を見ると十五時二十分。


「やべ」


 思っていたより時間が過ぎており焦る。

 授業をサボり屋上で寝ていたら、もう既に部活動の時間、または下校の時間。

 鞄は教室だから急いで取りに行って帰るか。

 教室に戻ろうとした時、天候が薄暗くなり、ポツポツと小雨だが降ってくる。

 濡れないように急いで校内に入り、外を見ると少し強くなっていた。天気も悪くなるって最悪だな。

 今日雨降る予報だったけ? ポケットからスマホを取り出す。軽く操作し、天気を見るとこれから先、朝まで雨の予報だった。

 ほんま最悪、今日傘――折り畳み傘を持って来てない。

 走って帰るしかないな、教室に戻るともぬけの殻になっていた。早いな、まぁ大体は部活動。

 俺には関係ない話か。なるべく濡れないようにして帰ろう。

 教室から出て、校門まで向かう。


「あれ? 君は部活動をしないのかね?」


 向かっている途中に声を掛けられ、声の方向に振り向くと、生徒会の腕章をつけた、同年代くらいの男。

 生徒会の会計か、風紀員や会長じゃないだけマシか。


「お生憎、俺は部活動をするほどの運動好きではないので」

「そうかならば気をつけて帰りたまえ」


 軽く会釈をし帰る。呼び止められた所為で少し雨に濡れてしまった。

 これ風邪引かないか? 引いたら生徒会の所に苦情入れてやる。

 ざぁざぁと雨が強くなる。制服が濡れて少し重たい、少し小走りで帰ろう。

 校門を抜け、途中、コンビニに寄ってビニール傘でも買うか。

 腑と横に視線がいった、正確には何か気配を感じた。目線の先にはずぶ濡れになりながら体育館座りをしている女子生徒。

 一体こんな所で何をしているんだろう? 思わす足が止まる。

 すると女子生徒の顔が上がる。少女の表情には生気がなかった。

 それ以上に俺は彼女に見惚れていた、を凌駕するほどに美貌が重ね合った。

 一言で表すとすれば可憐な少女。

 と、云う印象。立ち止まり少女を見ていた、だんだんと哀愁が漂ってくる感覚に襲われる。

 俺の手は自然と鞄の中を漁り、偶然か、ないと思っていた折り畳み傘が入っていた。

 何かを話し掛ける訳でもなく、お互い見ていた、その中、俺は折り畳み傘を出し差す。

 それを見て少女は顔を伏せる。

 その感、雨はどんどんと強くなっていく、


「そんな所でうずくまっていたら風邪引くよ」

「え、いやいいんです。ほっといて下さい」


 初めて声を発したかと思えば暗く、声量が小さく少し聞こえ辛かった。

 ネガティブ思考にでもなっているのだろう。いつもだったらほっとく。

 けれど、今は何故か、この少女の言うことを聞く気にはなれない。


「この傘貸してあげるから大人しく帰りな」

「何が目的ですか?」


 明らか様に警戒をされている、接点も何もないのに優しくされれば警戒はするか。

 同じ立場だったら警戒をする、何かを企んでいるとか思うのが定石。

 もしくは偽善者と捉えるだろう、そんなことはどうでもいいんだけどね。


「ただのお節介焼きと思ってくれればいいよ。もし傘がないならばそれ上げるよ」

「え、いや……」

「それじゃあまたね」


 多分、もう出会すでくわことはないと思うけど、


 少女に背を向け、少し歩いてから鞄を頭の上に置いて小走りする、

 これで多少は濡れるのが防がれる。その分、鞄は濡れてしまう、自分が濡れるよりはまだいい。

 特段、鞄の中に濡れてはマズいものは入ってないから大丈夫。

 ――――――――


 あのの少女に傘を渡してから一週間くらいは経った。あの後。

 見事に俺は風邪を引き、熱を出し数日くらい学校を休んだ、そして生徒会に苦情の手紙を置いた。

 結局、あの子とは会わなかった、もし会ったとして、何もないからいいんだけど。

 傘を上げちゃったし、買わないとな。

 あ、そうだ、コンビニで傘を買おうとして忘れたんだった。

 やっちまったな、その分。傘代が浮いたと思えばいいか。


「席に着いたか? 今からHR始めるぞ」


 先生の号令でクラスメートは前を向く、詰まらないHRが始まり、寝ようかなと思った矢先。


「生徒会の所に謎の手紙が届いているらしい、もし心当たりある奴いたら放課後、生徒会室にいけ」

「問題になっているんですか?」

「ああ、問題さ、特に生徒会長が犯人する為に色々するらしいぞ」

「今の所、犯人の検討はついているんですか?」

「一人だけな」


 凄いことになっているな、犯人と思われている人ごめんと、心の中で謝った。

 普通ならば自分が犯人ってバレているか、心配をするだろう。

 だけど、この学園にはよく犯人に仕立て上げられる生徒がいる、今回も被害者になるのだろう。

 もしバレたら一発くらい、殴られそう。


「注意点はそのくらいだな、まぁ後は授業をサボる場合、バレないようにしろよー」


 本当、教師が言う言葉ではないな、クラスの連中は苦笑を浮かべていた。

 その中で俺はニヤっと口角を上げる。

 だが、そろそろ真面目に受けないとバレそうだなと思う反面。

 やはり受けるのが面倒くさい、テストでいい点取れれば授業を受ける必要もない。

 誰かに見つかっても嫌だし、今回は教室で寝てよう。

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