第42話 侵略者
「うわぁあああああああっ!!」
別の人の叫び声が再び響いた。次々と連鎖的に悲鳴が広がっていく。
くそっ、いったい何が起こってるんだ!?
「子供を守れ!! 悲鳴をあげた者を探し出して状態を確認せよ!!」
『はっ!!』
俺が混乱している間にイーデクス様が指示を出す。
何かあった時一番危険なのはまだ魔脈を開いていない一般人の子供たちだ。イーデクス様の指示は的確だろう。
守護者が一斉に動き出し、子供を抱える一般人の周囲に集まっていき、数十人くらいのグループを作り、それを数名の守護者が守る形にしていく。
モンスターは今日一日くらいなら絶対に来ないくらい潰したしたはず。それに、感知にだってモンスターは引っかかってなかった。
しかし、何かが起こっているのは間違いない。
今だってなんの反応も……。
「は?」
俺は魔力感知の範囲に急に無数の反応が現れて混乱した。
いやいや、いったいどこから!?
周囲にモンスターの影はない。
――ボコッ
地面に振動を感じて下を見ると、盛り上がりが多数現れた。
そうか、地面の下か!!
俺は自分の迂闊さを呪った。
防壁は頑丈なものに造り替えられたし、空からやってくるモンスターは見える。しかし、地面の下からモンスターがくることはないと無意識に除外していた。
地面が防壁よりも柔らかいのは当然として、地上と違って感知が遠くまで及ばない。近づかれてようやく気づけた。
「下からモンスターが来るよ!! 注意して!!」
俺は大きな声で叫んで警戒を促す。
最初に出てきたモンスターは守護者によってすでに倒されたようだ。
すぐに地面に手を当てて土魔法を発動させ、広場の地面を固めていく。さすがにすぐに村全体の地面を固めるのは難しい。
『ギュギュ――』
至る所から数多くの苦しげなモンスターの声が聞こえてきた。
『ギュギュウゥウウッ!!』
しかし、全てのモンスターを止めることはできず、固まる前に地面を抜けてきた無数のモンスターが飛び出してくる。
構えていた守護者たちがモンスターを次々切り裂く。
「やぁっ!!」
「ふっ」
「はぁっ!!」
リーシャ、レイナ、シャロも応戦している。
モンスターはニンジンみたいな形をしていて、ヘタがある部分全体が口になっていた。いわゆるワーム系のモンスターに酷似していた。
後続は魔法で潰してるけど、結構な数のワームが入り込んでしまった。
体長は一メートルくらい。犬型のパップスよりも小さく、攻撃力が低いらしい。ただ、数だけはやたらと多い。
パパンとママンとレナは?
辺りを見回すと、ママンとレナはパパンが守ることでひとまず無事。
守護者は子供も大人もダメージを受けることなく戦っている。一般人の大人たちは多少怪我をしている様子。
最初に悲鳴を上げた人たちもどうやら切り傷程度で大怪我ではないらしい。
そこまで被害が大きくないようでホッとした。
しかし、安堵している場合じゃない。今まさにモンスターと戦闘中。
ある程度広場の地面の硬質化は済んだ。これで下にいたワームたちは潰せたはず。それ以外のワームはその外側から上がってくるしかない。
俺は一般人の子供が怪我しないようにワームたちを殲滅していく。
『ギュギュウゥウウッ!!』
広場のワームがいなくなった辺りで、案の定、広場の外から無数のワームが広場に集まり始めた。
「広場の周りに壁を造れ!! 出入口は一カ所にするのだ!!」
さすがに四方八方から攻撃されたら、数が多すぎて防ぎようがない。しかし、一カ所から向かってくるのならやりようはある。
イーデクス様の指示で、守護者たちが広場の周りに数メートルの高さの壁を創り上げた。
念のため、俺は固めた地面の硬さが変わらないように調整し、他の守護者たちが造った土の壁の強度を限界まで上げた。
これで一カ所以外ワームは入って来られないはずだ。
「半分はワームの掃討に当たれ!! 残りの守護者と見習いたちは一般人の保護!!」
『はっ』
イーデクス様の指示により、予め決められていたであろう部隊の半分が、一般人たちから離れ、一カ所だけ作った出入口から中に入ってこようとするワームの群れを押し返していく。
これで後は残党を殲滅していくだけだ。
壁外のワームの数はかなり多いけど、以前と比べて何倍も強くなった守護者たちの敵じゃない。
敵味方入り乱れた状況でなければ、その力は存分に発揮できるはずだ。
現に魔力感知で今壁の外にいるワームたちが数を減らしていっているのが分かる。
うちの家族もリーシャの家族もレイナの家族も全員無事。これで一安心だ。
「ふぅ……」
――ドカアアアアアアアンッ!!
そう思った矢先、凄まじい爆発音とともに地面が大きく揺れた。
「え……」
その音がした方を見ると、防壁が吹っ飛び、防壁よりも巨大なワームが姿を現す。
そして、イーデクス様が信じられない者を見るような顔で叫んだ。
「バカな!? まつろわぬ虚無だと!?」
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