第3話 シーニー、決 中編
「ん~、、」
チョウラは大きく伸びをする。
(ねむいなあ)
しばらくぼーっとするが、昨日シーニーがなかなか起きなかったことを思い出した。今日は大丈夫かと、服の帯を
(なんてったっけな、あれ)
いろいろ考えている間にシーニーの部屋に着く。ドアノブに手をかける。
「いったあー!静電気いたいよおー」
(めっちゃ痛ー!)
ビチッという音とともに、見事に静電気が当たった。そしてもう一度、ドアノブに手をかける。
「ふう~今度は大丈夫!」
ガチャリとドアを開ける。
「シーニーいるー?」
少し大きな声で言う。
「え?呼んだ?」
声につられるようにシーニーが出てきたのは、部屋。ではなくキッチンだった。
「なんだ、そこにいたのかあ」
「うん」
「昨日がうそみたいに早起きだねー」
「昨日は異常だったから。うん。私昨日やばかったから」
「異常って何?」
「そこから?」
「うん。」
「えっと、異常ってのはいつもと違う、みたいなやつ。まあ私も
「うーん。よくわかんない」
「そお。」
シーニーが残念そうに言う。
「今日の朝ごはんなあに?」
キッチンに居るのなら作っているだろうと思い聞いてみる。
「今日はね、ホットケーキだよ」
「あと、ホイップクリーム。チョウラ、好きでしょ?」
(あ、これやばいパターンかも)
なんとなく嫌な予感がする。シーニーが朝に甘いものを出してくると嫌なことがあるのを、チョウラは記憶している。チョウラの嫌なこと、つまりは、難しいこと、だ。チョウラが世界一嫌いなことである。
(今日、なんか難しい話をする気がする。)
チョウラの勘がそう言っている。
「ところで、ホワスどっかで見た?」
「ううん」
チョウラは首を振って見せる。
(ホワスを探すなんて珍しいなあ)
「そっかあ。いないか」
「部屋に居なかったのお?」
「いなかった。まあ、ここ広いしね、どっかにいるでしょ」
「うん」
(ホワスって髪黄色いから目立つけどなあ)
「あ、そうだ。チョウラホイップクリーム作ってよ」
シーニーがホットケーキをひっくり返しながら言う。
「いーよお」
クリームを作るのが好きなチョウラにとっては嬉しい話だった。早速ボウルと泡だて器を取り出す。牛乳と砂糖をボウルに入れ、かき混ぜ始める。しばらくシャカシャカとかき混ぜていると、いきなりトラの鳴き声が聞こえてきた。
「なに?いまの」
「えー?わかんないけどお、トラっぽかったような?」
「トラ⁉待って、今トラって言った?」
「え?うん、そうだけど」
「やっば!マジヤバイわ」
「えー?なに?なんなの?」
チョウラの質問に答えることなく、鳴き声のするほうへシーニーが走っていく。チョウラも、その後ろを追うようにして二人で並んで走る。
(なんだろ。トラ?トラってなんかあったっけ)
「ホワス!!」
シーニーが大声を出しながら勢いよくドアを開ける。するとそこには、トラ化したホワスがいた。
「へっ?なんでこんなとこにトラが居るの?」
「もー!なんでこんなにワンパターンなの?」
「ガルルルル」
まるで聞く耳を持たないトラ、いきなり怒り出すシーニー。チョウラは終始何も分からなかった。
「チョウラ、私抑えとくから早く
「え?あ、うん」
いわれるがまま、トラの額に触る。すると、トラが一瞬消え、瞬く間にホワスになった。なんとなあく見たことがある光景に、チョウラは首をかしげる。
(なんかどっかで見たことあるような。まあいいか。)
「ふう。何とかなったけど、」
ホワスのほうに向けたシーニーの怒ったような冷たい目線に、ホワスが後ずさりする。
「これで何回目かなあ?」
さらに後ろに下がるホワス。シーニーの頬がぴくぴく痙攣しているのが、怒っている証拠である。しかも、ニコニコしながらなので尚更怖い。じりじりとホワスに近づいいていく。
「
なぜか真面目に質問に答えようとするホワス。シーニーは今にも拳を振り出さんばかりの勢いだ。
「そろそろそーいうのは卒業していただかないとねえ」
そして、本当に拳を振った。が、何を思ったのか、ホワスの手前で止め、ぺしっときれいな音を立てて平手打ちを炸裂させた。
(
しかも、平手打ちでは物足りなかったようで、ホワスの頭にごつっという鈍い音とともに拳骨を食らわせた。なお、チョウラは見ていると痛々しいのでそっぽを向いていたが、残念ながら音が聞こえてその行為は意味をなしていなかった。なので、
(帰ろっと)
そんな結論を出し、部屋を退出した。ガチャリと戸を開けてキッチンへと戻り、また、クリームを作り始める。
「あっ、もういいかな。こんくらいで」
混ぜ終わったクリームを置き、ふと横を見る。
「あー!焦げてる!」
当然のごとく、真っ黒に焦げたホットケーキがそこにあった。シーニーに言おうと思ったが、何だか言うとホワスがえらいことになる気がしたので仕方なくフライパンから出してゴミ箱に捨てる。が、その気使いも
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