今年の勇者になって魔王たおすんですけどそんなことしてる暇がないくらい相方が可愛い。都合の悪いときは〜磁界で魔王倒す予定があるので忙しいです〜って言ってるけど全然進まない。

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第1話 勇者

1月1日


おそるおそる水晶に手をかざす。

数瞬の沈黙の後、ギルドのお姉さんは口は開けた。

「おめでとうございます!あなたは今年勇者として選ばれました!」


周りからの歓声がギルドの高天井を響かせた。

職業が変わった!

俺は驚きと喜びで、どうにかなりそうだった。

体内爆発して目が覚めるとかやめろよ!

夢オチの典型だからな!



俺は去年この世界に召喚された。

いわゆる異世界召喚だ。

しかし、なぜだか、あんまり記憶が残っていない。

この世界に召喚された、、、までは覚えているのだが、ここ数年の記憶が完全に消えてしまっている。

そのため、俺はなぜこの世界にやってきたのかもわからないし、元々どこの世界にいたのかもわからない。

何度か考えたが俺はこの世界を救うようなやつではないことだけは確かだと結論づけていた。

なぜなら!去年はパン屋だったからだ!

だが今この瞬間、俺がこの世界に来た理由がわかった。

世界を救うのだ!!

どうやら俺を召喚させたやつはこの世界に慣れるためにチュートリアルのための時間をくれたのだろう。


去年、パン屋だった俺は勇者に憧れてフランスパンとピザを両手に持っていた。

落として商品をダメにして店長に半殺しにされかけるまでがセットである。

今思うと食パン切ってやった方が安全だったな。

たがそんなことはもうどうでもいい!

なぜなら!

公務員でみんなにチヤホヤされる勇者になったからである。

く〜長いチュートリアルだったぜ



俺のチュートリアルは終わり、やっとこの世界の本編が始まった。

それじゃ、ちゃっちゃと魔王倒して有名になって銅像でも作ってもらって、安らかに眠るか、、、ってその前に俺の種族値変化してるか確認しないとな!去年は純粋な恐怖と自分のゴブリン以下の雑魚さが恥ずかしくてろくに外にも出られない生活だったからな!

たしか全部足して20だった気がする。

さぁて心の準備ができたところで見ていきますか。

俺は勇者専用の水色のキラキラとした職業カードを隅々まで見た。

「えっと〜Lv99で〜HPが3億!攻撃が3億!!防御が1億!!!魔力が3億!!!!頭の良さ-10億!?器用さ-1京、、、、イケメン度-1€☆想像力7京?!」


俺は大声でくそみたいな能力を叫んでしまったことと目の前の現実に押しつぶされて一瞬固まった。

えっと〜、、、、、、は?

いや〜、、は?

ちょっとまてよ、、んー、、いや、は?

おい!

なんだよこの種族値、最初は強いんじゃないのって思って調子に乗って大声で種族値叫んでたけどよ!話が違う!話が違う!おいおいおい、俺を転生させたやつ出てこいよ、なあ、おい!

まぁいいけど、、、いや良くねぇからな!覚えてろよ!

心の中で言っても無駄だな。

虚しいだけだ。

頭の良さはまだしょうがない、、、、

けどよ何?器用さ-1京って逆に何?

どうゆうこと?誰か教えて、、攻撃が当たらないってことそれとも臨機応変に対応できないってこと?またはその両方?

あと、ひとついわせてほしいー1€☆ってなに?

どうやって発音するの?

声に出して読むタイプの読者が可哀想だよ!

いないと思うけど!

あとアニメ化したらどうすんの?

しないと思うけど!

てか!この数値自体いいのか悪いのかわかんないんだけど!

マイナスついてるからダメなのか?

この記号の定数誰か求めといて!

くっそ、、、俺一応転生者だぞ〜!

コメディアンじゃないんですよぉ

ツッコミばっかりさせやがって!

もっとチート能力くれよ〜

ん?

職業カードが光出した。

おー能力改善か!だよな明らかにバグってるもんな。

「スキル、世界一おいしいパン作り、磁力を解放しました。」


職業カードから恥さらしの言葉が響いた。

みんながこっちを見てくる。

「見せ物じゃありませーん」

俺は羞恥から逃れるため一旦ギルドから離れた。

あーもう嫌いこの世界。

世界一おいしいパン作りは手遅れなんよ!

去年くれ!

あと、、磁力ってなんだ?

あれか?

なんかナントカカントカの左手の法則のやつか?

あれだろ?あの〜手を銃みたいにして中指付け足したやつ。

俺の持ってるスキル特殊すぎるやろ。

もういい今日は世界一おいしい(らしい)パンを食って枕を濡らしながら寝てやる。

と思って家に帰ろうとしたその時、、

「はぁ、、、はぁ、、、勇者さん、、、、」


ウィザードの女の子が俺を追いかけて走って来たようだ。

息切れしすぎでしょ。ゆーて200m前後でしょ、、

てかなかなかタイプな顔してますね。

身長は160前後か、、俺より少し小さいくらいでちょうどいいな

胸は、、、うん、世の中色んな人がいるからね、うん、

「お名前教えてください。」


そういえば俺の名前ってなんだろう、、、

俺はパンを作ることに全力を尽くしていて名前を忘れていた。

ぱんじろう?ぱんたろう?ぱんつくったろう?

あ、、俺はさっきの『磁力』を思い出した。

磁力、じりょく、じりく、ジリーク!

俺の名前は、、

「ジリークだ!!」


この時俺たちはまだ知らなかった本当に魔王と戦うことになるなんて、、、

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