第2話 孫キャラ駒子ちゃん
私のお友達、
「こまごちゃんこの間はありがとう。これあげるわ〜」
「嬉しい」
朝学校へ向かう途中、庭の手入れをしているおばあちゃんがたまごボーロをさくらちゃんにあげていた。お友達もどうぞと私もついでにもらってしまい、二人でお礼を言った後さくらちゃんに聞いてみた。
「さくらちゃん、あの人とどういう関係?」
「この前ひとりぼっちで寂しそうだからお話した」
おばあちゃんの話し相手になるさくらちゃん…優しいし可愛いな、高二なのに頭をぐりぐり撫でたくなってしまう。そんな私の思いを知らず、さくらちゃんはもらったたまごボーロをせっせと食べていた。そんな様子も可愛かった。
さて、そんなさくらちゃんですがどうやらいい感じの男子がいることを私は知っています。それは隣のクラスの央芭内紅葉君。
彼はさくらちゃんとは反対のおばあちゃん系男子と言うことで、同じクラスの子が言うには
「リアルおばあちゃんと孫の会話で癒される〜」
と聞きますが、その央芭内君のクラスにいる友達からは
「思ったよりガチ恋度高くて引く」
とのことでした。
いやガチ恋度高いってなに!?
いくら相手がおばあちゃんで癒し枠だとしても、そんなことを聞いたらうちのかわいいさくらちゃんはあげれない。
とういうことでわたくし鈴芽、実際に彼にあってさくらちゃんにふさわしいか見極めようと思います!
登校の最中、あくまでも自然にさくらちゃんに聞いてみた。
「さくらちゃんのさ、お友達に央芭内君っているでしょ?」
「うん」
「私ちょっと会ってみたいかもな〜」
私がそう言うとさくらちゃんはこちらを向いたまま黙ってしまった。その表情はどことなく固いように感じた。もしかして今は喧嘩中で気まずかったりとか?それなら会わせてもらうのは申し訳ないし、
「さくらちゃんやっぱり大じょう、」
「いいよ、央芭内君に会いに行こう」
そのままさくらちゃんに手を引かれていき、たどり着いたのは2のBの教室前。
「呼びに行ってくる」
「あ、さくらちゃん!」
さくらちゃんはそのまま教室に入っていってしまった。一人取り残された私はとてつもなく緊張していた。見極めなきゃいけないといいつつも、いざ本人に会おうと思うと何を話したらいいのだろうか。それ以前に相手の人は話の通じる人だろうか。
もし、連れてきたのが熊のような大男だったら?いかにもクズそうなヒモ男だったら?
「やっぱり一人で行かせるわけには…」
私も教室に入ろうとしたが丁度良くさくらちゃんが出てきた。
「おまたせ」
「あ、こんにちは」
さくらちゃんの後ろにはミルクティー色の髪で糸目が印象的などっからどう見ても好青年がいた。
「はじめまして央芭内紅葉です。貴方は、えっと」
「さくらちゃんの友達の
思わず大声が出てしまったがいや、めっちゃイケメンじゃん!優しそうだしこんな人が引くぐらいヤバい人には見えないけど…
「お友達…あの、僕になにか御用ですか?」
「あ、すみません!えっとそのさくらちゃんがよく話してたのでどんな人かなーって」
「そうなんですか!僕と駒子さんは小さい頃からの幼馴染なんです」
そうだったのか!こんなイケメンが幼馴染なんて羨ましい…けどさくらちゃんみたいな子が幼馴染なんて央芭内君も羨ましい…。
2人に対して羨望の眼差しを向けるとずっと無言のさくらちゃんが央芭内君を見つめていることに気づいた。
もしかしてどこか具合が悪いのかと思い、教室に戻ろうかと言おうとした時、私の中にある仮説が生まれた。
もしかしてさくらちゃん、嫉妬してるんじゃ?
長年人の恋愛を見てきた私にはわかる。これは急に長年連れ添った幼馴染を奪われそうで不安がっている顔だ。
それは可愛いすぎないか?もし、私の予想が正しかったら2人は両思い!?どうしよう友人のスピーチまだ書いてない!
「宿木さん?大丈夫ですか?」
「へ?あ!!ごめんなさい!!」
二人の結婚式の妄想にふけていると央芭内君から話しかけられていることに気づかなかった。
「えーとなんでしたっけ?」
私が聞き返すと央芭内君はこう言った。
「もし放課後空いていたらお話ししたいんです。二人で」
フタリデ???
「ここ、たまに駒子さんとよく行く和菓子屋さんなんです」
「へ〜そうなんですか〜」
放課後、央芭内君に連れられ入ったお店は一面畳が敷いてあり、いかにも老舗という感じがした。喫茶店やマックでもなく和菓子屋を選ぶあたりがおばあちゃん系らしいな〜
「いや違うでしょ!!」
「えっどうしました?もしかして和菓子は嫌いですか?」
「いえ、すみません大丈夫です!」
まさかの展開すぎて自分で自分をつっこんでしまった。
成り行きでついて行ってしまったが友達が気になっているかもしれない男と二人きりになるのはまずすぎる!
あの後、さくらちゃんは楽しんできてと言って今日は先に帰ってしまったがあの背中は絶対誰もいない所で泣いてるやつだ。慰めてやりたい。
この男もこの男で会ったばかりのやつをデートに誘うなんて、見かけによらずチャラいのか!?さくらちゃんとよく行くならさくらちゃんを誘えよ!
そんなことを考えていると、頼んでいたぜんざいが届いてひとまずそれを食べていた。
「おーすごく美味しいですね!」
「気に入ってもらえてよかったです」
「今度はさくらちゃんと来たいな〜」
しばらくぜんざいに夢中になり無言の状態が続くなか切り込んだのは央芭内君だった。
「……あの、宿木さん。あったばかりで申し訳ないんですが」
ぜんざいから視線をあげ、央芭内君の顔を見るとその顔は真剣そのものだった。
こ・れ・は
ほぼ確で告白というやつじゃないか!!!
改めて央芭内君を見つめた。
確かに美丈夫で物腰柔らかく礼儀正しい彼に告白されれば断るわけがない。
でも私はさくらちゃんが大事だ。可愛くて優しいさくらちゃんを裏切るなら死んだほうがましだ!!!
私は声を大にして言った。
「すみません!!私貴方とは付き合えないです!!」
「駒子さんの周りの人物について質問してもいいですか?」
「「え?」」
「………………………」「…………………」
「えっと一つ目の質問なんですけど」
あ、この状況で進めるんだ。
「まず駒子さんは普段どれくらいの人に話しかけられますか?」
「え?えーとあんまり気にしたことないんですけど、いろんな人から可愛がられてますかね?」
「そうですか、ではその中に男性は何人いるかわかりますか?」
「え?男性?あーこっちもわかんないですけど半分くらいですかね…」
「結構多いな、では次は……」
「いやこれなんの質問なんですか!?」
「あー、ちょっとした僕の興味です」
興味で人の交友関係調べるか?普通。やっぱりこの人、さくらちゃんのことが…
「……ちなみになんですけど、さくらちゃんとすごく仲がいい男子がいたら、、、」
ちょっとかまをかけて聞いてみた。この時、「話してほしくないな」とか「他の人に取られないか不安で」とかそんな可愛らしい嫉妬が聞けるんじゃないかと期待した私が馬鹿だった。
央芭内君は爽やかな声で言った。
「絶対にのろう……、いえ、お話をしてみたいと思いまして。僕ちょっと人見知りな所があるので駒子さんの紹介という形でぜひその人と仲良くなりたいと思います。あははは」
店内には央芭内君の乾いた笑い声が響いた。
笑ってるはずなのに心は笑っていないとはどういう状態か。私は今日、この身を持って初めて知った。
そうして一時間、私はさくらちゃんの人間関係についてこってり質問されまくった。
「今回はありがとうございますまたなにかありましたらよろしくお願いします。貴方が協力的な人で本当に良かったです」
「あ、はい」
業務連絡のような挨拶をして帰っていく央芭内君の姿を見て、私が呆然と立ち尽くしていると後ろからさくらちゃんの声がした。
「すずめ、終わった?」
「さくらちゃん?帰ったんじゃないの!?」
「気になって待ってた」
今日は少し風が吹く。その中を一人で待っていたのか、指先が冷たくなっていてなんだか申し訳なかった。
「ごめんね〜!!ほら寒いからコンポタ買ってあげる!」
「やった」
さくらちゃんは基本無表情だが嬉しい時は顔を変えず周りに花が咲いてるように見えるので案外わかりやすい。
「央芭内君と何してたの?」
さくらちゃんの質問に私は足を止め、すぐさまさくらちゃんの方を揺さぶりこう言った。
「さくらちゃん、あの男にはぜ〜〜〜ったい近づいたら駄目だよ!!!」
私はこの一年あの男からさくらちゃんを遠ざけることに命を賭けようと思います。
記録者 2のA 宿木鈴芽
本日の心拍数 80
央芭内君の心拍数を上げないでください駒子さん!! ゆーさん、 @yuzunarumi
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