ダンジョン協会に送付されたビデオレター

 ダンジョン協会会議室に送付された封筒に入っていたBD。宛先などは無く、ダンジョン協会理事用特殊郵便を用いている。これ以外に手紙が入っており、文面は「これが届く頃には僕は…」とだけ筆ペンで書かれている。


 以降は映像。


―――


 金満太が映っている。その横には秘書。背景はグリーンバックに安い映像が貼り付けられている。


「ども、皆さん。ダンジョン協会・理事を務めてる金満太と言います。って、これ見てるみんなも理事だから知ってるか笑」


「時間がないので手短にお願いします」


「もー、ひーちゃん、分かってるよ」


 彼の服はアロハシャツ、隣の秘書も同樣。


「えーとね。私、金満太は理事の地位を退いて一般人に戻ることを決めました。応援してくれたみんな、本当にありがとう!!」


「…」


「なんか言ってよ、僕が滑ってるみたいじゃん」


「滑ってるので」


「ひっどいなー、モー怒っちゃうぞ」


 秘書の脇を突こうとして手で叩かれる。その後、正面を見る。笑顔が消える金満、襟を正す。


「まあ、真面目な話、こっちとしては初心名村案件が完全にこっちの敗北だからね。このままいたらマジで殺されちゃうから逃げないとね。でもさ、個人的には一番最適なタイミングでカードを切ったんだよ。そう思わない?、火切秘書」


 秘書の顔が締まる。


「はい、本来のプランなら御戸開の映像を直視した茅葺三郎は死亡・もしくは発狂。その後、うぶなさまの厄災が発生。その際にその原因を作った蒼をうぶなさまが殺害。地震や落雷により大規模な災害に関しては四国の一時的閉鎖によって解決する」


「そだね、でもまさかさ、ここまで三郎ちゃんが神様じみてたとは正直考えれなかった。というか人間一人を神様にするなんて流石にイカれてるでしょ」


「一応、個別に依頼していた調査とその研究によって可能性自体は提案させて頂きました」


「うん知ってる、それを却下したのは僕だからね。少なくとも三郎は人間として殺せる。そのつもりで計画立てないと流石にこちらも戦いようが無いからね。結果論さ。君が正しくて僕は間違ってた。だから、責任取って辞任して逃げるんだよね、なっさけなーい」


「いえ、そんなことはありません。私もより自プランに自身を持って進めるべきでした」


「そこは踏み込みすぎだよ。決断が僕の役目だからね。ってかさ、蒼ちゃんがえげつないんだよね。こっちとの関係性を匂わせようとしたら殺してやるみたいな目で睨んでててさ。三郎ちゃんと連絡取ったタイミングでネタバラシしようと思ったのに出来ないでやんの!!」


「…あちらはこちらの個人情報まで把握しています。下手に匂わせたら御戸開を見せる状況すら作れませんでした。あなたの言う通り、最善のカードが切られてます」


「そうだよね、結構頑張ったんだけどな。凡人なりにさ。まーけだ、負け、よし、やっぱ逃げるぞ!!!時間無いよ!!!ひーちゃん!!」


「ひーちゃん言わないで下さい。お供します」


 ペコリと頭を下げる秘書。金満が秘書を見る。普通の顔になる。少し若い少年のような表情。


「いいの?僕は一生、うぶなさま関係で命を狙われるよ?今なら君のことを逃がすことぐらい出来るけど?」


 秘書も表情を崩す、少し子供っぽい笑い方をする。


「太君って案外そういう所分からないんですね。別に正しいとか間違ってるとかじゃないんです。私はあなたの事が気に入って付いて行くんですから」


「…悪いね、火切」


「いいですよ」


 二人共立ち上がる。グリーンバックが剥がれる。背景は飛行場。金満太はピース。秘書はサングラスを付ける。


「じゃ、そういう事で、いつかまた何処かで会いましょう。しーゆーねくすとたーいむ!!」



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