配信映像編集版【撮影者・大和灯里他】【編集投稿者・茅葺蒼】

投稿者コメント


 この映像はクラウド上に保存された大和灯里他多数の持つスマホの配信映像と配信内コメントを時系列順に編集した物です。モザイク処理もしているので安心して下さい。


―――

【大和スマホ】


 蒼の肩を掴む大和。スマホ画面が蒼を映す。その顔は笑っている。


「理由分からない事を、実際、動画は上がってますし。掲示板でも話題になってたんですよ!!!」

『蒼が流した奴やろ』

『噂になっとる』

『言い逃れするな』


「そう怒らんといて下さいよ。ただでさえ、疲れててしんどいのにあんまりイジメられると泣いてしまいます」


 蒼は顔を服で隠す。口元は笑っている。


「何を…」


「大和、その手を離しんしゃい」


「いや、三郎様。これは本当なのです。証拠もあります。実際、沢山の人がうぶなさまの真のお姿を見てしまったのです。それもまるで道具のように扱っているまさしく自分本位そのもの…」


「離せというとる」


 大和の腕を掴む三郎。その目は怒りが浮かんでいる。


「わ、私はただ、ただ、三郎様の為に…」


「…蒼がうぶなさまの御戸開を撮ったんは本当や。俺も知って叱りつけた」


「さ、三郎様?ご、ご存知だったのですか?私、何も知らずに…」


「ええ、それは構わん。蒼にちゃんと言わんかった俺の落ち度や。うぶなさま、この落とし前、どう示しを付けます?」


 うぶなさまが立っている。その目はいつもの優しさはなく、何も感じていない。


「そやね、蒼の噂話だけ聞いてたからてっきりネットに御戸開が公開されたんかと勘違いしたわ。もしそれ垂れ流したのが蒼やったら、この場で首を毟っとった。でも、そうやないんやろ?蒼」


 蒼は笑ってる、嘲笑ってる。


「…はい、ちょっとしたお遊びの動画を上げただけですよ。ネットに良くある代物ですよ。さっちゃんは信じてくれるよね」


「ああ、当然や」


 大和が呻く。コメントが騒ぐ。周りの女が騒ぐ。


「そんな訳、そんな訳が…」

「そうです!!どう考えてもおかしいです!!」

『やっぱ動画の中身ってうぶなさまの姿だったんだろ?』

「蒼様の言い逃れです!!」

『いや、動画見たやついないだろ』

「やはり人嫁にふさわしくない!!」

『俺見たけど内容は御戸開だった』

『じゃあ死んでないとおかしいだろ!!』

『マシな嘘つけたこ』


「それよりもな俺、近頃、耳良いねん」


 三郎がぼつと喋る。


「さ、三郎様?」


「なんでも良く聞こえるわ。うぶなさまの声も、蒼の声も、大和の声も、みんなの声も、うぶなさまにお願いしたけんかね?村の人の声を聞けるようにって。すごい力や」


「何を?」



 ―――

【女1スマホ】


 画面黒、咀嚼音と叫び声


「ええわ、凄い丸々と太っとる」


―――

【女2スマホ】


 震える手、真っ暗な闇の中、うぶなさまの頭だけが上から出る。口を開く無数の歯。


「もう、飢えては無いけんね。ちゃんとしっかり育てたかったんよ」


「ひぃ、ひぃ」


「奥座敷はええ場所やわ。みんなの裸見て確信したもん、これは美味そやわぁって」


―――

【女3スマホ】


 スマホを投げ捨てる。地面に転がり、下から映す。その手にはナイフ、蒼に向かう。


「こ、この、三郎様を誑かす糞女が!!!」


「…動画撮ったって言うたやろ」


 蒼、スマホ画面を女に見せる。角度的に画面は見えない。


「あ、あ、あ?あ?うぶなさまのお姿を拝見出来たことを大変うれしく思います。私、時雨鈴は事務と冒険者業を生業としており、蒼様の撮影された御戸開を拝見しました。はい、偶然でした。はい、そこに祈りはありません。はい、故に死罪も妥当だと思います。はい、なので自らの死を持って償います。はい、この度はご足労誠にありがとうございました。はい、ではまた」


 自身の首にナイフを指す。


―――

【女4スマホ】


「わ、私だって、A級探索者!!大和様の次に!!」


 リザードマンの群に襲われる。手に持った剣を振る。対抗出来ず食われる。その後、三郎を襲うが一振りで全滅。


―――

【大和スマホ】


「な、何が、何が間違ってたんですか。なんでこんな事になってるんですか、どうしてこんな目に会ってるんですか?私は、私はただ、三郎様と一緒に、三郎様のそばにいたかっただけなのに!!!」


 画面の揺れ、スマホを掴んだまま走っている。一瞬映る、黒い影と白い影。三郎とうぶなさま。


「まあ、三郎があんたらを供えんかったら仲良くするつもりやったんよ。だって、可愛いやないの、蒼を必死に蹴落とそうとする足掻き方。虫かごを外から見てるようで面白いわぁ」


「虫、虫ぃ?し、知りません!!私は、救われたんです、三郎様に、その時、私は本当に生まれて初めて、生きてて良かったって思えたんです。だから、私は、この人が私の運命の!!!」


「思い込みや」


 倒れる。転びスマホが飛ぶ。カメラレンズの破損による映像の乱れ。大和と三郎、うぶなさま、後から来る蒼の間に黒い亀裂が入る。


「思い込み?何が思い込みなんです?お、教えて下さい!!」


「…俺は奥座敷なんかいらんのや」


 顔に明かりが当たってない。表情は分からない。


「うぶなさまや蒼、ジジババに言われてやってるだけや。でももう終いや。しんどいわ。蒼と映画とか音楽の話したり、うぶなさまと話しながら畑耕す方がなんぼか気持ちが楽や」


 大和が震えながら腰から剣を抜く。

 

「私を助けたんわ、最初から育てて食わすつもりで…」


「そげなことあるか。お前らが蒼やうぶなさまと仲良くしてくれたら俺はそれだけで良かったんや。他の誰かと結婚してこの村に居着いてくれたらそれで…」


「私は三郎様と一緒になりたかったんです!!!!あなたのあなたの人嫁に!!」


「蒼とうぶなさまだけでええ、ずっとそう言っとる。嫁が三人も四人も追ったらおかしいやろ。二人で十分や」


 大和は手から火球を出す。腕につけたリングが光っている。


「狂ってる、この村の人間はみんな狂ってる、気持ちが悪い、気持ち悪い、嫁が二人?気持ち悪い、何もかもが、何もかもが気色悪い!!!!み、みんなし…」


 うぶなさまの伸びた手が大和の首をぽんと引き抜き、飲み込む。


「…狂うちゅうのわ、もうわかっとるや、ずいぶんと前からな。でもな、俺らはこういう生き方しか出来んのや。今更、後戻りする気もなか。死んだ後は地獄さ行く」


「お供するよ、さっちゃん」


「私がそんな場所に行かせる筈ないやろ?三郎」


「…そですね」


 映像終了


―――


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