〇◇村公式記録映像【撮影者不明】(◯◇部分は既存漢字ではない為代用)

 茅葺屋敷、高座、若い男が座っている。黒い着物。以降定点。所々映像が掠れている。


「どうも茅葺剛太郎と言います。この村の村長をしており、この村の繁栄を願うべく、今ここに神の挿げ替えを行おうと思います。すげ替えるのはこの◯◇村(正確に聞き取れない)にいる土地神・××様(正確には聞き取れない)です。我が村は代々神様を挿げ替えながら発展し続けて来ました。その際、天変地異が起きることもありますが◯◇の村人は強い!そんな事に負けずに何度もここに戻って来てくれる。そして今回呼ぶ神はこれまでとは訳が違います。この村をより豊かに、より幸福にしてくれるでしょう。うぶなさま、こちらにどうぞ」


「映りとうない」


―――


 社、若い男が立っている。その横に長い何かが倒れている。黒い着物。以降定点。所々映像が掠れている。


「素晴らしい!××様はすっかり弱くなられてた。もうこの村を支えれん。うぶなさまならきっともっともっとこの村を成長させれる。どうぞ、ここを貴方様のお家にして下さい」


「綺麗に掃除して」


「はいただいま!!宗次郎、さっさと掃除しろ!!!」


「はい、ただいま!!!」


 映像に映り込む少年、端正な顔立ち、どこか仄暗い雰囲気。


―――


 茅葺屋敷、高座、少し年老いた男が座っている。黒い着物。その横にうぶなさま。以降定点。所々映像が掠れている。


「何故?どうしてですか?私はあなた様にこれだけ捧げ物をしてるのにどうしてあなた様の婿になれんのです」


「いやなもんはいやや、願いは叶えたる、それでいいでしょ」


「駄目です!!この村の習わしです!!神を嫁に出来ん男が村長にはなれんのです!!!どうか私を男にして下さい!!」


「無理強いするんなら出ていくわ、あんたが頼むからこの村におるだけよ」


「…では建前としての婚儀をして頂くことは?」


「嘘はつきとうない」


「分かりました…」


―――


 茅葺屋敷、高座、少し年老いた男が酔っている。黒い着物。以降定点。所々映像が掠れている。


「くそ、馬鹿が。俺は笑いもんだ。くそ、もう一度すげ替える?だがあれほどの力持つのはそうそうおらん。くそ、宗次郎、宗次郎!!くそ、東京か。役者になる?馬鹿が!あいつは何も出来ん!!たえ!!酒をもってこい!!!気が付かん女だ!!!離れに布団をしけ!!外の女を呼んだ、お前は何処かで飯でも食ってろ!!くそ、俺がこの村を大きくしてやってるのにどいつもこいつも敬意がない!!クソ…」


―――


 茅葺屋敷、高座、年老いた男が赤子を抱いている。黒い着物。以降定点。所々映像が掠れている。


「三郎、おーよしよし、男の子だ、これさえ手に入れば良い。宗次郎、二度とこの敷地を跨ぐな。金はくれてやる。さっさと消えろ」


「…ええそうします、ですがまた戻ると思いますよ?」


「なんじゃと!!!」


「もうお年ですし次の村長は私ですので、ご引退をお父さん」


「こ、この馬鹿が!!」


「ふふ、耄碌して立てない様では終わりですよ。三郎の人嫁候補も私が連れてきますのでご心配なく」


―――


 茅葺屋敷、離れ、年老いた女が少し大きくなった子を抱いている。その横にうぶなさまが立っている。白い着物。以降定点。所々映像が掠れている


「どうもみなさん、始めまして。この記録を撮影していたたえといいます。旦那とは分かれてここで暮らしてます。うぶなさまが嫌いになるのも分かりますよ。あの人は好色で、わがままで、傲慢で、さみしい人ですから。孫の三郎にはそんな人にしたくありません。村の年寄りに匿って貰ってます。あの人は怒って私を供えるでしょう。ですが構いません。最後にあの人の大事な物を盗めたんですから。ねえ、うぶなさま」


「あんたも淋しい人やね、なんで助けてって言わなかったん?」


「それを言えばあなたはあの人を殺してたでしょう。でも私は私の手で苦しめたかったんです。これが今、成就して私、一番幸せなんです」


「…人は難しいわ。愛憎ってやつやね」


「うぶなさま、いえ…うぶなもそのうち分かります」


「楽しみやわ」


「たえ!!!どこにいる!!!出てこい!!!」


 たえ、子供をうぶなさまに渡す。その茅葺剛太郎が刀を持って入ってくる。カメラが倒れ天井を映す、叫び声と刺す音のみが響く。

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