第20話 新たな仲間

 グレイハルト、バニラ、エレナの3人は迷宮に潜るための買い出しに来た。4層で野営して5層を探査する予定なので5日分程度の食料を買い込む予定であった。

 ポリフラの町は迷宮が存在することにより傭兵が多く住んでいる。そのな傭兵を相手にした商売も盛んで、安い食堂や安い酒場が何軒も軒を連ねている通りまで存在していた。3人はエレナの馴染の店を何軒か周り、必要な食料を揃えていった。


 翌日、宿へ迎えにきたエレナと3人で迷宮へと歩いて行く。バニラは腰に剣のみを装備し、グレイハルトは剣、盾を装備し大きな鞄を背負ったいつものスタイルでエレナは魔法使い然りとした帽子にマント、長めの杖を持ち小さめの鞄を背負っていた。

 迷宮1層目は洞窟であるが通路は狭い訳でもないがグレイハルトを先頭にバニラとエレナは2人並んで歩いていた。グレイハルトは盾を装備し近づく魔物を殴り倒す。バニラとエレナは後で回収袋を持ち魔石を拾っていた。

「なんだか随分と楽ですよね。魔石の回収だけで良いなんて・・・」

 エレナは以前に来た時は1層目でも、もう少し戦闘しながら進んでいたなと思い呟いた。

「傭兵・・・グレイが強いからな。妾としてはいつものことじゃ」

「・・・下の層に行ったら、お前ら2人が前な。俺はうしろで回収役するからな」

 グレイハルトは魔物を殴りつつ呟いた。

「まぁ、たまにはそれも良じゃろ。そう言えばエレナは魔法は何が得意なのじゃ」

「私は火と水が得意です。ただ詠唱に時間が掛かるかも知れないので前衛はちょっと・・・」

「詠唱など気休め程度じゃろ。思考をしっかり持って、バン、バンと魔法を放てばよいのじゃ」

「・・・お前は適当な事を・・・お前みたいにいきなり魔法を放つような奴は今まで見た事ねぇぞ」

 グレイハルトが話しに入ってきた。グレイハルトの長い傭兵経験でも無詠唱で魔法を放つ魔法使いは見た事が無かった。

「えぇ?バニラさんは詠唱しないんですか?」

「こいつは詠唱なんかしねぇよ。いきなり『バーーーン』だ。2層に行ったら見せてもらえ」


 2層に入り、前後を交代しバニラとエレナが前、グレイハルトが後で回収袋を持っていた。

「ではエレナ行こうか」

「・・・はい。頑張ります」

 エレナは杖を両手で持ち、緊張しつつバニラと共に歩き出した。

 オオカミが5頭迫ってくる。バニラは何も言わず、右手を差し出し岩礫を連射する。岩礫が風を切り5頭のオオカミに当たり倒れた。それを見たエレナは呆然としていた。

「凄いです・・・」

「次はエレナじゃ。どのような魔法を使うのかしっかり思考するのじゃ。最初は魔法の術名を言って発動させてみなさい」

 グレイハルトは魔石を回収しながら『誰でも出来るもんじゃねぇだろう』と思った。自身の剣技も長い年月を掛けて今に至っている訳で最初から出来たわけではなかった。バニラとエレナは繰り返し練習しているが上手くはいかなかった。

 2層、3層で練習しつつ歩いてきたが、4層は危ないだろうという事でグレイハルトが前になり歩いている。

「あの・・・2人が亡くなった場所に少し寄ってもいいですか」

 エレナが申し訳なさそうに切り出した。

「あぁ。いいぞ。野営地に行く前に寄るか」

 グレイハルトは2人が亡くなった奥の川の方へ歩みを進めた。

 4層奥にある川の畔でエレナは数日前に2人の知人を亡くした。エレナは2人の眠る地面に鞄から酒を取り出し注いだ。そしてお祈りを捧げた。


 3人はグレイハルトたちが数日前に野営した場所に来た。グレイハルトは荷物を置くと数日前に使ったカマドを治し始めた。

「焚き木を拾ってきますね」

「焚き木は無くても大丈夫だ。こいつは焚き木を使わねぇから」

 エレナは気を利かせて提案したつもりだがグレイハルトに断られた。

「え?使わない?」

「まぁそう思うよな。俺も最初はそう思った」

 そんな会話を聞きつつ、バニラはカマドに手を翳しサラマンダーを召喚した。

「え?何ですかこれ?」

 エレナは本日何度目になるか分からない驚きを口にした。

「火の精霊じゃ。心配せずとも美味いスープを作ってやろう」

 バニラはナベに水を入れ火に掛け、細かく切った干し肉、野菜、香草などを入れて煮込んでいった。スープが出来上がるころパンをカマド脇に置き温め、干し肉を炙った。

「え?美味しい。たったあれだけで・・・」

「なぁ、言ったろ。こいつのスープは美味いんだよ。俺も最初は驚いた」

 その後は3人で食事を進めていった。

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