第18話 他の傭兵
迷宮は昼は明るく、夜は薄暗い程度であるが昼夜が存在していた。グレイハルトとバニラは明るくなった迷宮で出発の準備をしていた。すると遠くから悲鳴が聞こえた。
「誰かが喚いているようじゃがどうするのじゃ?」
「そうだな・・・迷宮内の傭兵は基本、不干渉だが、襲われているのなら助けねぇとな」
グレイハルトとバニラは出発の準備を止め、悲鳴の聞こえた方向へと走り出した。
森の中を走っていくとゴブリンに追われている女性傭兵を見つけた。逃げながら魔法を放っているがダメージを与えているようには見えなかった。そして女性傭兵は大木を背にして止まった。
「大丈夫か?助けようか?」
グレイハルトが声を掛けた。
「助けて・・・」
女性傭兵は涙声で助けを乞いてきた。グレイはストは剣を抜きゴブリンへと走り出した。バニラは女性傭兵と近づいて行った。
「大丈夫か。もう安心じゃ」
女性傭兵とバニラの周りには、まだゴブリンがいる。女性傭兵に安心できる要素は無かった。ゴブリンはバニラたちに飛び掛かってきた。
「きゃーーー」
女性傭兵が悲鳴を上げるが、バニラは慌てず短剣を抜き横に縦にと振る。飛び掛かろうとしていたゴブリンはその場に崩れ落ちた。
「えぇ?」
女性傭兵は今までゴブリンに苦労していたの何だったのかと呆気にとられた。グレイハルトもゴブリンを倒しバニラたちに合流した。
「こんな所で何してたんだ?」
「あ、あ、ありがとうございます。助かりました。あっ!仲間が・・・」
女性傭兵は走り出した。グレイハルトとバニラは顔を見合わせ頷き、女性傭兵の後を追っていった。
川辺で野営していたであろう場所は踏み荒らされ酷い有様だった。そこには剣や矢の刺さった傭兵だった者が2人倒れていた。ゴブリンから夜襲を受け女性傭兵は何とか逃げ出したが2人は無理だったようだ。女性傭兵は2人の前で泣き崩れていた。
「3人で潜ったのか?他には居ないのか?」
グレイハルトは辺りを見回しながら女性傭兵に聞いた。
「はい。3人です。昔から面識のあった2人で、今回は4層に行くからと臨時でパーティーを組んで来たんですけど、こんな事になるなんて・・・」
女性傭兵は涙ながらに語った。グレイハルトは傭兵をしていればこういう場面は良くあることだと思うが、知り合いが亡くなるのは辛いことだが、前を向かなきゃならないと思った。
「これからどうするのじゃ」
「あぁ。遺品を回収したら火葬して埋める。地上に連れて帰るのは無理だ」
「そうじゃな・・・」
そんな会話を聞きながら女性傭兵は泣き叫んでいた。グレイハルトが遺体から遺品を回収し野営を片付け、バニラは女性傭兵の面倒を看ていた。
グレイハルトは空き地に遺体を横たわらせバニラが火魔法を行使する。遺体に火が付き燃え上がった。それを見て女性傭兵はまた泣き崩れた。そして燃え尽きた遺体をバニラが魔法で土に沈めた。
「あんたはこれからどうすんだ?俺たちは地上に戻るが、戻るんなら一緒に来い」
グレイハルトが少し落ち着いたらしい女性傭兵に聞いた。
「はい。出来れば一緒でお願いします。あっ。私はエレナと言います。魔法使いです」
女性傭兵は名乗りながら頭を下げた。3人はグレイハルトたちの野営へ戻り、荷物を持って地上へと歩き出した。地上への帰り道にも魔物は出現するのだがグレイハルトが危なげなく退治し、バニラが魔石を回収していく。その手際の良さに女性傭兵エレナは感心する。
「おふたりはパーティーを組んで長いんですか?阿吽の呼吸といいますか、相手が何を求めているのか分かってらっしゃるようなので」
「俺たちゃ・・・2か月ぐらいになんのか。主と下僕だ」
グレイハルトはバニラを主、自身を下僕と指差しながら語った。
「そこだけ聞くと妾が酷い扱いをしているようではないか」
バニラの憤慨にグレイハルトは肩をすくめた。
「似たようなもんだろ。あぁ。ただ、こいつの作るスープは干し肉と野菜と香辛料しか入ってねぇのに絶品だ。料理だけは凄えぇと思う」
「・・・妾の取り得はそこだけか?」
グレイハルトの言葉にバニラの顔に落胆の色が落ちる。そんなバニラをグレイハルトが抱き上げ肩に乗せた。それだけでバニラの顔は笑みに変わった。
「ふふふ。仲良しですね。私もそんな仲間・・・友人が欲しいですね・・・」
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