血桜 ~秋田空想浪漫ちっく活劇談~

横手さき

一話

 ざぁ、という音がした。

 木枠に張られた和紙に勢いよくがかかる音だ。先ほどまではその和紙は全て白色だった。だが音がしてからは紅色に染まっている箇所が散見された。


「・・これが・・・人殺し・・」


 手に短刀を持つ女が言った。

 彼女はざくろ色の瞳の持ち主。

 肌は怖いくらいの白皙、烏色の長髪を元結で纏めてある。

 身に纏った夜色の忍び装束が彼女によく似合っていた。


「・・綺麗な紅しぶき・・・。これはあなたの力・・・?」


「・・・」


「・・聞こえていますか・・?」


 行灯が灯る部屋の明かりは揺らめいており、障子にはが飛び散っている。彼女にはそれがまるで屏風に描かれた桜のように見えていた。

 畳の上には先ほど首を切った男が横たわっている。もう動かない。


「・・・ああ・・」


 桜色の刃を持つ短刀は答えた。ひどく冷艶で低い声だった。


「・・・今日から・・ずっと続くのですか・・・?」


 彼女は短刀を鞘に収めた後に目を閉じながら言った。


「・・・・ああ・・」


 再び、低い声が響いた。



 二人はその場を後にした。

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