第19話 鏡越しの瞳

「父親?」

「あぁ...って、何でお前にこんな事話さないと

いけないんだ」

「俺は結構聞きたいけどな、その話」

「別に、今のお前と同じような話をしてたって

だけ」

「そうなのか、もしかしたら俺と結構

気が合うかもな」


俺は茶化してそう言った。


「....もう居ないんだ」

「え?」

「お父さんもお母さんも、だいぶ前に、な....」

「すまない、悪い事を聞いたな」

「別に良いよ」

「何で、教えてくれたんだ?さっきまではあんな

刺々しかったのに」

「さぁ?...何となく、だよ。自分でも分からない」

「...そうか」


あぁ、そうか。俺がこの少女の瞳を懐かしいと

思った理由が分かった。俺は3年前.....


にこの瞳を何度も見ていた。

きっと、俺と同じなんだ。


「....俺も、3年前に両親を亡くしたんだ」

「え?」


今度は俺が語り、少女が聞き返す


「人として、尊敬してた。だけど、不慮の事故で

死んでしまったんだ。声変わりもしていなかった

俺は、その死を受け入れる頃にはとっくに周りに

置いて行かれてた。他の同い年の子供とも馴染め

無くて、俺はただただ堕落していった。だけど、

そんな時に転機が訪れたんだ」


俺は少しだけ声を高くして言う。


ある方ティアナ様が、俺を旅に出してくれた。新しい場所で、新しい人生を歩む為の

道を示してくれたんだ。だけど、その道を歩ける

かは俺次第何だ。...なぁ、俺と2人で、ここから

始めないか?」


俺は、真っ直ぐに黄金色の瞳を見つめる。


「勿論、初対面で信用しろ、なんて言わない。

ゆっくりで良いから、似た様な境遇の俺達が、

お互いの速度で、積み上げていきたい。

...新しい異世界ライフを」


俺は、ディアナ様にして貰った様にこの少女を

助けたいだけなのかもしれないし、この瞳を

かつての自分に見立て自身を救済しようとしている

のかもしれない。それでもこの、目の前の少女と

一緒に居たいと、始めたいと思うこの気持ちは嘘

じゃないから....!


「串焼き....」

「へ?」

「串焼き....頂戴」


俺は呆気に取られるが、直ぐに笑顔になり...


「あぁ!」


串焼きを1本渡す。


「それと、メル。私はメルだよ」

「そうか...俺は碧、碧 悠太だ!

よろしくな、メル!」


俺は美味しそうに串焼きを頬張るメルの頭を撫でる


「...っ!」


メルの尻尾と耳が逆立ち、目を見開く


「悪い嫌だったか...」


そう言い、引っ込めかけた腕を、メルが掴む。

そして俺の手を、自分の頭に載せる。

メルは恥ずかしそうに、嬉しそうにはにかむ。


「....これからよろしく、碧」












◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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