第3話 転移の理由


(.......なるほど、やはりこの女神、分かってるな)

3つの能力を自分で考えられる、これ程興奮する状況も中々ないだろう。


ただ、能力を考える前に聞かなくてはならない事がある。


「能力の強さの上限?ってどれ位ですか?」


いくらチート能力といえども、流石に上限はある筈だからな。


『流石に神と同レベルというのは無理ですが、あっちの世界異世界基準でも、最上位に位置する様な能力までなら行けますよ』


異世界でもトップレベルの能力3つ...これは想像以上に好条件なのでは?


....好条件....?待てよ、俺はこの転移という異常な状況をすんなりと受け入れていたが...


「何故俺を転移させるんですか....?」


(今まで、女神とか、チート能力とかですっかり頭から抜けていたが、何故この女神は俺をこんな好条件で転移させるんだ?)


『転移させる理由ですか?そうですね...あまり詳しくは言えませんが、世界と世界は、途方も無いほど離れて居るのです。神といえども、他の世界と交信するのは、少し手間なのです。そこで、世界から世界へ魂を送ることで、道を作って居るのです。そして碧さんは、異世界への適性が高かったのです』


「成程...それで俺をトラックで....」


そう。つまりは俺はこの女神に殺されたのだ。


『勘違いをしないで欲しいのですが、私は碧さんを殺してはいません。寧ろ、


「...は?どういう事ですか?」


『碧さんは本来、3年前の』だったんですよ。


「なっ.......どういう事だ!」


俺はつい怒鳴ってしまった。


『そのままの意味ですよ。本来碧さんは3年前の事故で命を落とすはずでした。しかしまだ魂が未完成だったため、私の力で少しだけ延命したのです』


それを聞いた時、3年前の思いが、感情が、蘇ってしまった。


「だったらッ『散るはずだった命を繋ぐのは、あまり良い事では無いんですよ』


「........」



『申し訳ないとは思いますが、魂は廻る物ですから』


「....いえ、女神様が謝ることではありません。こちらこそ、怒鳴ってしまってすみませんでした」


『いえ、大丈夫ですよ。神も感情はありますから、碧さんの気持ちも、理解出来ます』


勝手に怒って、八つ当たりをして、慰められて、何してんだろうな、俺は。


3年前に仕舞い込んで、乗り越えたと思っていたが、俺はまだまだあの事故を引きずって居るらしい。


...そう考えれば、この転移は転機かも知れない。

こっちの世界では乗り越えなれなかった、けど、あっちの世界でなら、もしかしたら....


(逃げて逃げて、転んで、それでまた逃げて。俺は逃げる事が悪い事とは思えない。けど、それでも、逃げた先で決着付けなきゃいけない事だって、きっとあるから)


「話を曲げてしまってすみません、能力の話をしましょうか」


俺は、確かに決意の灯った瞳で、微かに微笑んでそう言った





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

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