EPISODE4 降り注いだ運命
深い森の中で、未だ獣の呻き声は消えず、
黒く禍々しい影が木々の間を徘徊していた。
この世界の生命体ではない、何かに蝕まれた獣たちは、
人間を狙って闇の中を動き回っている。
「…とりあえず紅輝たちは帰った方がいい。」
或空は紅輝たちに向かって静かに告げる。
「は…?お前らは…どうすんだよ…!」
「ボクたちは大丈夫。心配しないで。」
笑顔を作る蒼月に、或空は微かに頷いた。
紅輝は、それ以上口を開けなかった。
深く濃く、星も見えなくなるほど闇が広がっている。
木々の影が揺れ、遠くで微かに枝を踏む音が響く。
或空は、まだ少し濁った瞳で森の闇を見つめた。
「今更だけど、ここが人間界か。」
「まさか初日で4人も人間に会えちゃうなんて!」
「みーも、人間が見れて嬉しいよ?」
3人は近くに聳え立つ廃屋の中で、
さっきまでの出来事を整理しながら声を潜めて話していた。
その時、さっきまで煩かった獣たちの咆哮が消えたことに気付く。
人間たちが去った途端、森には静寂が戻った。
「なに…?アイツら人間にしか興味ないの?」
蒼月は胸をざわつかせながら呟く。
未来空は口元に笑みを浮かべ、肩を軽くすくめた。
「だってアイツら、人間を殺しに来たんだよ?」
「え…、それ、どういうこと…?」
「この世界の人間は、何かに攻撃を受けているらしい。」
その侵略者が何を望んでいるか、
死期を操れる或空と未来が視える未来空は理解していた。
蒼月は小さく息を飲む。
「ボクたちが、人間を…守らなきゃいけないんだ…。」
或空は黙ったまま、少し濁った赤い瞳を細める。
「…ボクたちがいる。可能性はまだ視えてる。」
未来空は微笑むが、その瞳の奥は暗闇しかなかった。
「守り切ってみせるよ、ボクの星を壊させはしない。」
蒼月だけが、可能性を見据え、静かに心の奥で決意と覚悟を固めた。
月が雲に隠れ、森はさらに深く沈黙し、
枝の軋む音と微かな影の揺れが不穏な気配を知らせていた。
黒い何かが、まだ潜んでいることを3人は感じていた。
闇の中で呼吸を整え、互いの存在を確かめるように小さく頷き合う。
希望と不安が交錯する森で、3人だけの時間は静かに過ぎていった。
だが、彼らは人間と共に戦わなければならない。
この世界を管理する者として、この星に降り注いだ運命として。
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