EPISODEⅣ ケラウノスの侵攻
その頃の天星世界では、母なる星が人間界を見下ろしていた。
双星の幸せが、自分の幸せのように感じて嬉しさを覚える。
「嬉しい…だなんて。私はただの歯車に過ぎないのに…。」
感情に違和感を抱き、ぽつりとそう呟いても今この場所には他に何も居ない。
彼女はアカシックレコードを眺めてエウロパの氷殻を口で溶かす。
「はぁ、あの双星の影響で随分と人間臭くなったものだな…。」
独りぼっちの空間で、くすくす笑みを浮かべて文句を垂れる。
いつもはエンケラドゥスの水蒸気を嗜んでいたけれど氷殻も悪くない。
母なる星と呼ばれる
「っ!?」
そんな安寧の時間は、突如として終わりを告げる。
少し離れた後方に異様な気配を感じた。
ふたつの強大な気配は、一瞬にして背後まで近付いてくる。
「よぉ、
「…
「へぇ?こっち見ずに当てるなんて流石だねぇ?」
その兄弟は天星世界では名の知れた戦闘狂者たちだ。
彼らの星では争いが絶えず、管理者階級も、処遇でさえも戦いで決まる。
「全天神を侮るなよ、天空神の息子の分際で…。」
この世界の管理者である
「して、高名なディオスクロイが、ここに何用だ…?」
「お前が生み出した双星の世界を頂戴しに来たんだ。」
「軽く視たけど、ほんとに良い星だねぇ!欲しくなっちゃったんだぁ!」
それに続くように口を開いた
ふたりに視線を向けると、呆れた様子で
「お前らに賜る星など無い、天空神の元へ帰れ。」
そう冷たく言い放った。
彼らは互いの視線を交えて、小さく頷く。
「まあ、貰えないなら奪うだけだねぇ!」
依然嬉々とした態度の
「ははは!精々ケラウノスの攻勢に脅えるがいいさ!」
天空神の雷霆は、天高くから
それは天狼星を襲うように、アカシックレコードを直撃した。
衝撃波が、この空間をも襲う。
エウロパの氷殻が滑り落ちてクラック音が甲高く鳴り響いた。
「双星が作った星だから、天狼星に拘るのか…。」
そんな小さな
恐らくそれが、彼らの肯定となるのだろう。
「ケラウノスの
「…これで"ニンゲン"…も、
捨て台詞のように吐き捨てて彼らは去っていった。
彼ら、ディオスクロイの目的は"ニンゲン"を1人残らず殺すこと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます