【第1部完まで毎日更新!】モブ・オブ・モブs ~ゲームのモブキャラに転生した俺のスキルが攻略データベースな件~
ツマビラカズジ
プロローグ
第1話 ゲーム世界のモブキャラに転生してた
全寮制の高校にこの春から通い始める男の子。
目立つ容姿も無ければ、秀でたる才能も無い。
極々普通の高校生だ。
要するにモブキャラだ。
名前と性別だけ決めた、みたいな。
それが発売間近だった没入型オンラインゲーム『ダンジョンダイバー』の世界に転生した俺だった。
それにしても、俺は何で死んだんだろう?
一人暮らしの会社員って、そんな簡単に死ぬ?
さっぱり解せぬ。
さて、そんな俺だが主人公のクラスメイトとなるらしい。
どうしてそれが分かったかって?
不思議なのだが『それが紛れもない真実』と頭で理解しているのだ。
転生時に刷り込まれたのかも。
それに「武蔵第十三ダンジョンダイバー学園高等部」なんて奇天烈な名称の学校は現世に存在しない筈だし、確か先のゲームで主人公が通う学校名だったからだ。
加えて両親を含めた家族がおらず、そうなった原因に関する記憶が全く無い。
恐らくゲームとして未設定だから。
寮室(有り難いことに個室)内にある書類「武蔵第十三ダンジョンダイバー学園高等部」の緊急連絡先が空欄である点と、住民票の世帯主欄が俺の名である点が先の推測を裏付けてる気がする。
しかも、スマホのアドレス帳が空っぽだった。
通話履歴も無し。
当然メールやSNSの送受信履歴もだ。
今どきの高校生でそんな事ある?
俺は思わず身震いした。
刹那、
――ピピッ、ピピッ、ピピッ・・・
スマホのアラームが鳴った。
見てみると、
「入学式の一時間前・・・」
と表示されている。
そうか、俺はこれから入学式に出るのか。
それもやった事もないゲームのモブキャラとして。
「あと一時間、か・・・」
空腹は何故か感じてない。
朝食は食べた設定からスタートなのだろうか?
それともモブキャラは食べなくても良かったり?
追々わかるか。
それよりも情報が足りない。
ここはゲーム世界。
現世には存在しない、突飛な設定が有る筈。
それを知らぬまま入学式場に向かうのは少々危険な気がする。
例えば校内で
「そんな訳で先ずは情報取集だな」
実のところ、『ダンジョンダイバー』と言うゲームには注目していたので概要は知っている。
何故ならば超有名ゲーム会社の製作だし、その所為かコマーシャルが数多く打たれていたからだ。
ゲーム内容はオーソドックスな学園RPG。
主人公が多くのヒロインや仲間達と切磋琢磨しつつ、ダンジョンを攻略しつつ、ヒロイン達と良い仲になりつつ、文明世界の滅亡を生き残りつつ、クリア時の様々な達成度を競う、みたいな。
ありがちなゲーム。
同じようなゲームを探せば幾らでも見つかる。
幾ら超有名ゲーム会社作とは言え埋没必至だ。
そんな事は当然ながら超有名ゲーム会社も気付いていた。
そこで力を入れたのがキャラクターデザインだった。
超有名なギャルゲーイラストレーターを起用したのである。
更には声優にも。
つまり『ダンジョンダイバー』とは、超有名ゲーム会社が全力でギャルゲーに寄り切った渾身の作、だったのだ。
しかも、世の興味・関心を惹くギミックとして用意されたのはそれだけでは無かった。
現代人が何故か憧れる『身分差の恋』を作中に盛り込めるように
正直、これはこれで何番煎じ? と思わないでもない。
それにしても――
「ほんと、調べて良かった。入学早々無礼討ちされてたかもだ」
一応ダンジョンダイバー学園としては身分差は寛容に扱う(無いとは言ってない)と言う建前があるのだが、それはあくまでも学園内の話。
一歩学び舎を出たら最後、強固な身分制に絡め取られる。
具体的に言うと校内では「おはようございます」と挨拶しても問題なくとも、校外では切り捨て御免されるケースもあるのだとか。
実際にそういうケースは枚挙に暇がなく、本校での昨年度実績は十件あったらしい。
しかし、件数か。
十人じゃなくて十件と表記する辺り、闇が深いな。
――ピピッ、ピピッ、ピピッ・・・
「もう、十五分前か。そろそろ向かうか」
俺は詰襟の学ランを着込み、鏡の前で身だしなみを整える。
そして入学式会場である第一講堂へと向かった。
第一講堂の道すがら、俺は聞き耳を立てながら歩く。
転生前は人並み以上に耳が良く聞こえる性質だったが、今生でも同じらしい。
様々な音を拾えた。
多くは親子による和気あいあいとした会話だが、中には親子間
「強くならなければ親子の縁を切る、か。学歴社会ならぬ
言われた子は顔を真っ青にし、身体がガタガタ震えていた。
その後も似たような会話を幾つか拾った。
DV以外で俺が耳にして萎えた言葉は、
「○○家とお近付きになれる様に励みなさい」
などと貴族だろう家名に取り入る様に諭してたのだな。
ま、一番多かったのは暫くは離れ離れとなる我が子を気遣う親のソレだったが。
千席はありそうな二階建ての講堂。
そこに男女共に学ラン姿の新入生が居並ぶ中、
「・・・以上をもちましてダンジョンダイバー学園における充実した学園生活を期待し、式辞といたします」
学園長の長い挨拶が終わった。
ダンジョン発生前後で
その間何度も訪れた人類滅亡の危機。
そりゃそうだ。
だって日本だけでも中学校の数と同じぐらいダンジョンが存在し、適度に攻略しないと魔物が溢れ出るのだから。
それらを凌いだ人類の英知と英雄達の活躍。
前提知識の無い俺は聞いてて思わずワクワクしてしまった。
しかし、後数年ないしは十数年で文明世界は滅亡する、または滅亡目前にまで追いやられてしまうのだ。
ゲームの設定上は。
そう考えると、どんなチートスキルよりもゲームの攻略本が欲しいこの瞬間である。
などと考えている間に、
「それではこれより高入生のクラス分けを行う! 高入生は右向け右!」
竹刀を持ったジャージ姿の先生が
高入生のクラス分けが始まるのだ。
クラス分けはステータス測定を行い、その結果に応じて振り分けられる。
ちなみにだが一学年は六クラス。
内、四クラスが中等部からの繰り上げとなっている。
一クラスの定員は四十名。
つまりこれから八十名のステータス測定が行われるのだ。
尚、主要キャラのレベル一ステータスは公開されていた。
確か、十以上の項目が幾つかあり、それ以外は一桁代後半の数値だった筈。
先頭から順番に名前を呼ばれ始めた。
呼ばれた生徒は呼んだ教師の前に座る事で計測が始まる様だ。
聞き耳を立ててみるも不思議と何も聞こえない。
変だな。
講堂内のざわめきはあるものの、距離的には絶対聞こえる筈なのだが。
もしかして、防音結界的なのが作動しているのかもだ。
「次!
どうやら俺の番らしい。
名前を呼んだ人の前に進み、席に座った。
刹那、周囲が静寂に包まれた。
凄いな。
魔法ないしは魔道具の類なのだろうか?
「確認の為、名前をお願いします」
と言ったのは俺を呼んだ白衣姿の先生だった。
胸のネームバッジには『春夏冬 千秋』。
あきなし ちあき、かな?
こういう一見して読み辛い苗字、主要キャラあるあるだと思います。
胸も大きく、口許の黒子もセクシーだ。
「一番 一です」
「はい、確認しました。ではここに手を置いて下さい」
手の形が描かれた板の上に右手を置いた。
板からは配線が伸び、それは横に置いてあるディスプレイに繋がっている。
画面に俺のステータスが表示された。
氏 名:一番 一
種 族:人間
レベル:1
職 業:ノービス1
体 力: 5/ 5
魔 力: 5/ 5
強靭性: 5
耐久性: 5
敏捷性: 5
巧緻性: 5
知 性: 5
精神性: 5
経験値: 0
討伐数: 0
称 号: -
DDR: F
スキル:攻略データベース
突っ込みどころしかない。
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