第21話:保護犬

 俺は今回の4人組による襲撃を軽く考えていた。

 死を覚悟しているとはいえ、リョクリュウがいてくれるので、本心では殺されないだろうと思っていたのだ。


 ただ、俺に吹いた嵐のよう追い風によって、当選した人たちには大事件だった。

 特に、俺の借りた家が選挙区内の議員には大事件だった。


 俺を殺されたら、ネット民に叩かれるだけでなく、次の選挙では絶対に当選できなくなる、死活問題だったのだ。


 我が党の大分県選出国会議員、大分県の県会議員、宇佐市の市会議員が主だが、他の市町村会の議員も加わって、交代で補佐や警備を申し出てくれた。


 俺は後に知ったのだが、与党第一党を参考に設けた党三役が動いていた。

 事務長は金銭的に最も信頼できる親戚の兄貴が務めてくれている。

 総務会長は亡父の親友で、長年市会議員をしていたおじさんが務めてくれている。


 政調会長だけは縁も所縁もない人、マスコミに叩かれて政権与党第一党から離党した、国会議員歴の長い人に御願いしているが、信用はしていない。


 兄貴とおじさんが大分県を中心に九州の党員に連絡して、俺の補佐と警備をするように命じてくれたのだが、正直有難迷惑だった。


 昼の間はまだ良い、だが夜に来られるとリョクリュウが遊びに来られなくなる。

 だが俺の補佐と警備を命じられた人たちにとっては、夜こそ警戒しなければいけない時間で、何と言っても1人は家に居座ってしまう。


 最初の1日で、どうにかしなければいけないと思い知った。

 兄貴とおじさん、党員達を安心させないと、どうにもならないと思った。

 次の日には大分県と福岡県の保健所に行って、保護犬を引き取りたいと交渉した。


 急なお願いだったのだが、大分県選出の国会議員、県会議員、市会議員が事前に連絡してくれたようで、各地の保健所は親切に対応してくれた、申し訳ない。


 大分市動物愛護センターでは、推定年齢10歳から12歳でビーグルの血が濃い、中型茶黒の雄雑種犬が保護されていた。


 年齢的に考えると、とても警察犬にはなれないのだが、出会ってしまった以上見て見ぬ振りはできなので、引き取る事にした。

 もし保護者が現れたら返す事を約束して、番犬にする事にした。


 同じ動物愛護センターで、推定年齢3歳から5歳でダックスフンドの血が濃い、中型黒の雌雑種犬も保護されていた。


 この子も体格的に警察犬になれそうになかったが、出会ってしまった以上見て見ぬ振りはできなので、引き取る事にした。

 もし保護者が現れたら返す事を約束して、番犬にする事にした。


 おおいた動物愛護センターで、推定年齢6歳くらい、和犬の血が濃い、中型茶の雌雑種犬も保護されていた。


 この子は警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 同じ動物愛護センターで、推定年齢7歳くらい、和犬の血が濃い、中型白の雌雑種犬も保護されていた。


 この子は警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 西部保健所では、推定年齢6歳くらい、柴犬の血が濃い、中型茶白の雄雑種犬が保護されていた。


 この子は警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 同じ保健所で、推定年齢10歳くらい、和犬の血が濃い、中型白の雌雑種犬が保護されていた。


 年齢的に考えると、とても警察犬にはなれないのだが、見て見ぬ振りはできなので、保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 西部保健所では、推定年齢5歳くらい、柴犬の血が濃い、中型茶の雄雑種犬が保護されていた。


 この子は警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 同じ保健所で、推定年齢5歳くらい、マスティフ かボクサーの血が濃い、大型茶黒の雄雑種犬が保護されていた。


 この子はもしかしたら警察犬になれるかもしれないので、 もし保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 北部保健所豊後高田保健部には保護犬がいなかった。

 まだ時間があったので、福岡県の保護犬も見に行くことにした。


 他県の人間が行っても相手をしてもらえないかもしれないと思ったが、大分県選出の国会議員、県会議員、市会議員が事前に福岡県県選出の国会議員、県会議員、市会議員連絡してくれたようで、各地の保健所は親切に対応してくれた、申し訳ない。


 福岡市動物愛護管理センターでは、全ての犬が譲渡トライアル中だったので、よけいな事は言わずに福岡県動物愛護センターに移動した。


 福岡県動物愛護センターで話を聞くと、譲渡犬にはセンター、保護団体、個人の3パターンがあるという事だった。


 個人の都合で手放す人にまで係わる気はない。

 保護団体に引き取られた子は殺処分される心配がない。

 だから、まだセンターにいる子を引き取る事にした。


 推定年齢6歳から10歳、柴犬の血が濃い、小型茶の避妊済み雌雑種犬。

 年齢的に考えると、とても警察犬にはなれないのだが、保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 この子は3カ月近く保護されていたからか、情報が細やかだった。

 愛護センターでテテという仮名をもらっていた。

 少し怖がりな所があるが、慣れると犬の方から寄って来るという。


 しつこく触ったり、グイグイ触られたりするのは苦手だという。

 抱っこ、シャンプーなどのお手入れは苦手だそうだ。

 食欲が旺盛で、お腹が減ったら鼻鳴きしてご飯を要求する食いしん坊だそうだ。


 オカワリガできるというのができるというのは、食いしん坊だからか?

 散歩は引っ張る事無く人の歩調に合わせられるという。


 推定年齢6歳から10歳、テリアの血が濃い、中型黒茶の去勢済み雄雑種犬。

 年齢的に考えると、とても警察犬にはなれないのだが、保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 この子も4カ月近く保護されていたからか、情報が細やかだった。

 愛護センターでカルゴという仮名をもらっていた。

 少し怖がりな所があるが、慣れると甘えん坊で、触って欲しくて寄ってくる。


 余り吠える事はないが、要求があると鳴く事があり、飛びつき癖もある。

 室内でも大人しくできるが、毛がよく抜ける。

 オスワリ、フセ、オテ、オカワリができる。

 

 推定年齢2歳から4歳、コーギーの血が濃い、小型黒茶の避妊済み雌雑種犬。

 大きさを考えると、とても警察犬にはなれないのだが、保護者が現れたら返す事を約束して引き取った。


 この子も4カ月近く保護されていたからか、情報が細やかだった。

 愛護センターでモズという仮名をもらっていた。


 少し怖がりな所があるが、慣れると甘えん坊になるそうだ。

 食欲旺盛で散歩好き、飛びつき癖と要求吠えがあるそうだ。

 フィラリアが陽性なので、継続治療が必要だという。


 合計11頭の保護犬を引き取った。

 普通なら多頭引き取りは拒絶されるのだろうが、国会議員の信用があった。

 虐待する事も捨てる事もないと信用してもらえたのだろう。

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