第16話:夜更かし
寝不足だが、これからの事を考えて色々と調べた。
農作業小屋を建てるのに必要な手続きと費用を調べた。
農地法の手続きと、建築基準法に基づく建築確認申請の手続きが必要だった。
今の俺が手続きを怠ると大問題になるので、キッチリと調べた。
20坪の鉄骨式倉庫で、建築確認申請や建設費用込みで290万円とあったが、5年も前の記事だったので、資材や人件費が高騰しているので倍は必要だろう。
色々調べたが、軒高8メートルの柱無し倉庫で坪25万円とあった。
リョクリュウがもっと大きくなる可能性があったので、できるだけ軒高の高い倉庫の方が良いと思ったのだ。
一般的な農業用倉庫だと、幅5メートルで奥行きが10メートルもあれば十分なのだが、全長10メートルにもなったリョクリュウがくつろげる場所にしたい。
余裕をもって軒高8メートル、幅と奥行きが10メートルは欲しい。
実績のある建築会社の施工例を見ると、軒高8メートル、幅27メートル、奥行き48メートル、建築面積1384・03㎡の工場兼事務所があった。
事務所兼用にできる建物なら、俺が寝起きする場所も確保できそうだった。
坪25万円なら1億485万円で建てられる。
今の俺なら払える金額だが、ちょっと高すぎる。
幅と奥行きを20メートルにしても400㎡になる。
坪25万円だと、どうしても3000万円は必要になる。
支援してくださった皆さんのお陰で手に入れられたお金を、リョクリュウのためとはいえ、ネットサーフィンの為だけに使って良いのか悩んだ。
ネットで調べるだけでは、俺の知識と発想では思いつけない電化製品を見落としてしまうかもしれない。
タクシーを呼んで近くの家電量販店や携帯電話会社を巡ってみた。
だが、全長10メートルのグリーンドラゴンが使えるような、パソコンやタブレット、携帯電話はどこにもなかった。
リョクリュウが人間の言葉を話せたら、音声入力でネットサーフィンができる。
とても賢いリョクリュウだが、流石に『シャ』としか言えない。
俺はリョクリュウの言いたい事が分かるが、AIは分かってくれないだろう。
ただ、リョクリュウの事は別にしても、ネットも使える75型のスマートテレビは欲しかった。
老眼と近眼が悪くなっていたので、できるだけ大きな画面でアニメやバラエティーを観たかったし、小説を書くのも大きな画面の方が楽だった。
考えているうちに思いついたのだ、何も家の中から操作する必要はないと。
九州の借家は、道路から見られてしまう縁側も、山側の廊下もガラス引き戸だ。
4枚が並んでいるので結構広い。
深夜の山側だったらリョクリュウもやって来られる。
俺がずっとネットサーフィンに付き合う事はできないが、外から大画面に映っているアニメや動画は観る事だけはできる。
だからできるだけ大きな画面のテレビを買えばいいのだが、どうしても貧乏性な性格がでてしまって、100万円以上する100インチテレビは買えなかった。
ついつい15万円で買える75インチ4Kテレビを3台も買ってしまった。
貧乏性なのに心配性でもあって、テレビが壊れた時にアニメが観られずネットも使えなくなる状態が心配で、3台も買ってしまった。
それはデスクトップパソコンも同じで、3万円弱で売っていた2・5GHz 以上、メモリ容量8GB、SSD256GBを2台買ってしまった。
Wi-Fiでネットと接続できる周辺機器も買い込んで、急いで借家に戻って色々試行錯誤したが、結局有線でネットと接続する事にした。
その方が安定しているし、検索速度も速い気がしたのだ。
でも、安くて性能の良い物も欲しくなって、CPU周波数4・1GHz 以上、メモリ容量64GB、ストレージ256GB、HDD500GBで7万8000円の中古パソコンも2台ネット注文してしまった。
殺されかけて長期入院する前からの習慣で、23時には眠るようにしている。
東京の仕事では夜遅くまで会合に出席するのが普通のようだが、それは仲間に任せるようにして、俺は健康第一を続けている。
深夜に会う約束をしているリョクリュウとは、21時から23時に農作業小屋で話をする事になっていた。
山間の農村なので、店舗のない所は人が出歩かない。
借家の前に通っている道路には、それなりの数の車が通過するが、夜の山に入る物好きは滅多にいないから、俺狙いの連中にさえ気を付ければいい。
「シャ」
農作業小屋で待っていたリョクリュウが、先に挨拶をしてくれた。
俺に会うのを楽しみにして、先に来てくれていたと思うと胸が熱くなる。
ネットサーフィンがしたい気持ちもあると分かってはいるが、それでもうれしい。
「何が観たい、何が調べたい?」
「シャ」
リョクリュウの言う通りにタブレットを操作してやる。
1番画面の大きなタブレットを2台使って、リョクリュウの望む動画を流しながら、同時にリョクリュウの望む記事を検索し続ける。
「借家の山側に大きな窓が並んでいるだろう。
リョクリュウが不審な人間の気配を察知できるのなら、窓側にモニターを向けて動画を流し続けられるぞ。
リョクリュウがいてくれるなら、窓を開けておく事もできる。
AIが俺と同じくらいリョクリュウの言葉を分かってくれたら、好きに検索できるようになるのだが、流石にそれは難しいよな?」
「シャ」
「言葉を覚えるから音声入力を機器を購入してくれだって?」
驚きの余り思わず声に出してしまったが、グリーンイグアナが人間の言葉を話すとは思わなかった。
冗談半分で口にしたの、本当にできるという。
だが、そもそも、こんなに賢くて巨大なグリーンイグアナはいない。
異世界からやってきたドラゴンかドラゴニュートかもしれない。
いや、別の星からやってきたイグアナ星人の可能性が高い。
惑星間移動が可能なほど科学力が発達している星の住民なら、トカゲ星人語を日本語に音声変換する機械くらいもっているだろう。
「分かった、音声入力ができる機械を明日の夜までに買っておくよ」
夜明けの2時間くらい前、3時頃までリョクリュウの望む通りに検索し続けた。
23時に切り上げる心算だったが、リョクリュウが楽しそうなので長くなった。
リョクリュウは命の恩人なので、少々の手間は惜しまない。
毎日では困るが、明日は音声入力機器を買いに行く事になっている。
それさえ買えれば、明日からは早寝早起きに戻れる。
それと、俺には探し当てられなかったが、リョクリュウが自分でも使えるかもしれない巨大キーボードを見つけたので、ネットで注文したのだ。
通常のキーボードよりも200%も大きい、実測値で幅582mm×奥202mm×高さ64mm/ 約2375gの巨大キーボードをネットで買ったのだ。
これが使えれば、音声入力に失敗しても、俺が手伝う必要がなくなる。
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