第13話:ハッタリ

 支援してくれる人、応援してくれる人が急増した事で、大金が入ってきた。

 全動画がバズり、再生回数が桁違いに爆増し、月収2000万円となった。

 小説のインセンティブが、3社合わせて月300万円となった。


 もっとも大きかったのが、無料のサイトから有料電子書籍に転載した小説だった。

 電子書籍の印税は70%なのだが、定価500円の小説10作を、各10万分も支援購入してもらえたので、受け取る印税が3億5000万円になったのだ!


 国立国会図書館に納本できるPODも、10作全部が1000部以上売れた。

 この印税は大したことはなかったが、15部以上なら国立国会図書館に納本できるので、夢がかなった。


 支援してくれる人の中には、フリーの編集者や校閲者もいた。

 彼らが、無料で小説を読めるサイトに投稿した作品を校正校閲してくれる。

 俺は彼らの指摘を受けて、投稿した小説を加筆修正して、再投稿する。


 この繰り返しで、素人の小説が商業小説並みに仕上がってから、有料電子書籍として販売する流れができたので、商業デビューする必要がなくなった。


 支援して頂けたことで月収が3億8000万円になった事は、包み隠さずに公表して、支援してくださっている人達にお礼投稿した。


 マスゴミの金に頬を張られて裁判を諦めなくてすむと、お礼投稿した。

 税金を払うから実際に使えるお金は半分になるが、その全てを裁判費用に使うと公表する投稿を行った。


 これがマスゴミに徹底抗戦を決断させたのだろう。

 金で懐柔できないと判断したマスゴミは、俺を叩く報道を繰り返した。

 60年近く生きてきて、全く傷のない者などいない。


 過去の失敗を針小棒大に繰り返し報道され、イメージが悪くなるように誘導されたので、支援者が減ると思っていたのだが、逆だった。


 ネットでも、マスゴミの手先が誘導するような投稿を繰り返していたが、ネットの住民はマスゴミに踊らされるような馬鹿ではなかった。


 支援者の人達は、これまで以上にマスゴミを叩く投稿をしてくれたし、マスゴミのサーバーがパンクするくらい苦情電話や苦情メールを繰り返してくれた。


 マスゴミだけでなく、番組スポンサーになっている民間企業、広告を掲載している民間企業、政府や各政党にも苦情電話や苦情メールを繰り返してくれた。


 俺もマスゴミと戦うための資金を集めると同時に、力を手に入れる準備もした。

 長年に渡って、市議会議員選挙や府議会議員選挙の事務長をしていた親戚の兄貴に頼んで、裁判を手伝ってもらう人を選んでもらった。


 同時に、選挙に出馬して国会議員となり、マスゴミと戦う力を手に入れようとしているように見せかける、ハッタリをかました。


 俺の人気と勢いは凄まじく、総選挙が近い各政党から見れば、喉から手が出るほど欲しいモノだ。


 マスゴミによって政策を邪魔され、議員としての権力を潰されてきた政権与党から見れば、俺はマスゴミに正々堂々と圧力をかけられる武器になる。


 ただし、俺が与党に入ってしまったら、支援者が離れて力を失う。

 イデオロギー的に大嫌いな野党に入る気もない。

 そもそも、人付き合いがまともにできないのに、議員になれるわけがない。


 必要なのは、議員になってでもマスゴミと戦う意志があると思わせる事だ。

 そうすることで、ようやくマスゴミと対等に戦う事ができる。

 裁判所も日本弁護士連合会も、悪質な手段が使えなくなる。


 これまで親戚の兄貴が選挙を手伝って来た与党と野党の地方団体、議員や元議員に根回ししてもらって、無所属の国会議員を集めてもらった。

 国会である程度の力を振るうには、政党を作る必要があった。


 無所属議員の多くは過去に何か問題を起こした人が多い。

 個人的には大嫌いだが、政党交付金の交付の対象となる政党になり、放映権の入札制を国会で審議させるというハッタリには、所属国会議員が5人以上必要だった。


 この手法を使うと、俺の支援を辞める人もいるだろう。

 それは分かっていたが、裁判でマスゴミに勝つためには必要な手法だった。

 裁判で負ける事になっても、最低限の成果を手に入れる為には必要だった。


 だから、嘘偽りのない本心を投稿した。

 1点突破、テレビの放映権を入札制にするためだけの政党を作ると投稿した。


 それによって、これまで不当の安い値段でテレビの放映権を手に入れた連中を叩き、3兆円の放映権料収入を国にもたらすと投稿した。


「シャ」


 ただ、自分の事だけに集中していたわけではない。

 リョクリュウの事もちゃんとやっていた。

 九州某県への移住準備も着々と進めていた。


 俺はこのまま自宅に引き籠もる生活で十分なのだが、少々広い程度の家では、リョクリュウの本能は満たされないようだった。


 徐々に苛立つリョクリュウの気配に命の危険を感じて、大好きな小説はもちろん、資金源や権力源を後回しにして移住の準備を進めた。


 不動産会社の親切な担当に別料金を払って、移住して直ぐに電気ガス水道はもちろん、ネットや衛星放送が使えるように、事前の手続きをお願いしていた。


 何時でも移住できるようになったが、問題はマスゴミだった。

 流石に、全長4メートルを超えたイグアナを密かに飼っているとなると、鴉や鰐の騒動が発端だけに言い訳のしようがない。


 全ての元凶が俺とリョクリュウだったと、叩くに決まっている。

 その時は、流石に誰も応援してくれなくなると思った。

 なにせ、応援してくれそうな動物愛護団体を敵に回しているのだから。


 マスゴミの手先はもちろん、フリーのライターだけでなく、一般の人々にリョクリュウを撮影されても詰んでしまう。


 マスゴミは、法に反する取材、道義的に許されない取材をすると、ネットにさらされて更に評判が悪くなるので、遠距離から撮影している。


 支援者の中には、自宅の撮影ポイントになる場所を巡回して、マスゴミの手先を見つけては、盗撮だと警察に通報してくれる人もいた。


 通報された連中だが、その場の機材には法に触れる撮影物はなかったが、自宅を調べると法に触れる撮影物が数多く出てきて、逮捕される事になった。


 マスゴミが手先に使っている連中が児童ポルノで摘発されたのだ。

 この事件によって、マスゴミの立場は更に悪くなった。


 マスゴミの手先はもちろん、一般の動画投稿者も家の周囲から減ったのを確かめてから、中古自動車販売店から買った2トンロングのトラックを持って来てもらった。


 少しでもリョクリュウがゆったりと九州某県まで移動できるように、外から撮影されないように、準中型免許で運転できる最大の中古トラックを買ったのだ。


 問題は、玄関からトラックの箱まで撮影されないようにする事だった。

 上空に撮影用のドローンがいない事を確認した。

 玄関の左右、東西にも撮影する者がいないのを確認した。


 偽装の為に、リョクリュウには大きな段ボールに入ってもらった。

 全長2メートルの頃からギックリ腰になるくらい重かったので、リョクリュウの入った段ボールは台車を使ってトラックの箱に乗せた。


 余計な疑いを受けないように、引っ越しに見える段ボールも積んだ。

 実際は、移動中に動いてリョクリュウがケガしないように、空の段ボールだ。

 これでリョクリュウを自由にさせてやれると思っていたのに……

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